ひびレビ

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「八甲田山」を見て

2024-12-30 06:32:50 | テレビ・映画・ドラマ
  「冬の八甲田山を歩いてみたいとは思わんか」思うわけねーだろ!?……とは口が裂けても言えなかったんだろうなぁ……というわけで、名前は知っていたが見たことなかった1977年の映画「八甲田山」、今回が初視聴です。

 当初「雪の中の遠足」「温泉で一杯」などと盛り上がっている時は「これ絶対……」と嫌なフラグを感じ取りながら見ていましたが、神田大尉側の隊員の一人が突如絶叫しながら服を脱ぎ、のたうち回った挙句にぴたりと動かなくなったあたりから見るに耐えない惨状が続いていきました。
 次々と斜面を転がり落ちていく隊員たちに、既に周囲を気遣う余裕など無く、歩いている最中にも折り重なるように一人、また一人と倒れていき、小便すらもままならず、冷静な判断力はとうに消え……
 そして、吹雪の中で立ちすくみ「天は……天は我々を見放した」と神田大尉。この言葉だけは聞いたことがありましたが、これほどまでに絶望的な状況下で発せられていたとは……この時、傍目から見て明らかに生存していると分かる者が殆どおらず、村長が言っていた「白い地獄」とはこのことだと、まざまざと見せつけられました。また、音も無く事切れていく様からは、最早声をあげる気力すら奪われていることが伺え、絶叫と共に亡くなっていく以上の恐ろしさを感じました。仲間内からの信頼が厚い神田大尉が「死」を口にしたことで、心の支えが折れてしまった者もいたかもしれませんね……

 冬の八甲田山が有する恐ろしさに加えて、神田大尉側は210名という大所帯をはじめ、指揮権が複数人に分散することによる意見の不一致、案内人不在かつ天候悪化の中の進軍、そり隊が引く重い荷物の処遇、ちゃんとした休憩が取れない、「こちらに違いない」「明日になれば天候は回復する」といった希望的観測など、雪山に関する知識不足等も仇となっているようにも見受けられました。この状況下で生存者がいたことにも驚きです。
 しかし、このような命がけの行軍を生き延びた先で待っていたのが……というのも、虚しさを感じさせられますね……

 たった2キロの道があまりにも遠い。そんな時に発せられた「雪とは一体何なのだろう」という一言。
 雪山を登ったことこそありませんが、雪の怖さはそこそこ理解しているつもりです。平地ですら積もった雪に足を取られ、寒さで体は凍え、顔には容赦なく雪が吹き付けてくるというのだから、それが山ともなればどれほどの脅威か……しかも道が分からないという精神的不安もあっては、心身共に正常を保ち続けるのは至難の業でしょう。

 改めて雪と、雪山への知識や経験の大切さを見せつけられた「八甲田山」でした。
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