「エッグ」

2015-04-08 23:16:58 | 舞台
野田さんの頭の中は、“野田秀樹の穴”があっても分からない…。

を前提に、いつものように感じたままを書きます。

はい、大阪千秋楽に行ってきました。結論としては、とっても良かった。私にはめちゃくちゃリアリティーがある作品に思えてならなかった。

1940年に開催される予定であった東京オリンピックを背景に、実際には競技種目でもない架空の競技“エッグ”を題材として、野田さんなりの過去予想図=未来予想図を描いた作品だと私は解釈しました。

そうなんだよな~、こういう作品を観ると、

純粋な気持ちで、2020年の東京オリンピック開催を喜んでいる人達や、このオリンピックに夢を抱いている若者達や選手達の気持ちをを考えると、政府にはこの純粋な気持ちを踏みにじる行為だけはして欲しくないと切に願うね。

科学の新発見も、学者達は純粋な気持ちで研究に打ち込んでいるだけなのに、政治に利用されたり、戦争に悪用されたりと、純粋な心をいとも簡単に踏みにじるんよね…。

この架空の競技“エッグ”も結果的には戦争利用されてるんよね。ブッキー演じるアベの気持ちを踏みにじみ、そしてアベに責任を負わせる。政治に関わらず、社会でもよくあること。

深っちゃん演じる苺イチエも、純粋に、仲村トオルさん演じるツブライを好きなのに、これは偶然の働きだとは思うけど、結果的には大人の事情&思惑で、好きでもないアベと結婚する羽目になる。

ツブライは、一見、純粋にオリンピックに夢を抱いた青年(?)のように見せかけておきながら、実は、戦争に悪用されたエッグの実験に加担し、敗戦後は事実を隠ぺいするために嘘の自殺をし、濡れ衣をアベに被せる。

そして、純粋なアベは、世間では芸能会社?のオーナーとして、もう一人は競技“エッグ”の監督として認知されている(実は)イチエの両親(秋山さん&橋爪さん演じる)にも悪用され、最悪な結末を迎える。

同じチームメイトで、ツブライに絶大な信頼を寄せている平川(大倉さん演じる)も、実験材料に使われる。

いくら架空の話でも、とてもリアリティーを感じました。本当に純粋な心を踏みにじんじゃアカンよ!と思った。

舞台となる街が満州国だけあって、当時は本当に夢や希望を抱いて満州に移民した日本人もいたわけだから余計、オリンピックに対してもそうだけど、純粋な気持ちを悪用することがあってはいけないと思う。お年寄りを騙すオレオレ詐欺と同じやもんな。

この「エッグ」の中には、「パンドラの鐘」の要素もあって、間違いなく「半神」の要素もあるし、「MIWA」の要素も感じたし、結果的には「障子の国~」の要素も感じたけど、ただ単に、お偉方達の思惑で子供のような純粋な気持ちを穢してはならないという訴えだけでなく、人を愛する気持ちの大切さも描いていたと思う。

ぶっちゃけ書くと、理由は分析出来てないんですが、ラストはウルッときました。なんか、深っちゃんのイチエの魂の叫び声が琴線に触れたのかもしれないけど、満州に留まると決めたイチエや死んだアベの姿に、きっと「悪人」を思い出したのかな…と思ってます。アベの台詞にもあの映画のワンシーンを思い出す言葉がありましたもんね。

決してイチエはアベを愛してないはずなのに、満州に留まろうと決意したあのラストは、たとえ偽りであっても、卑怯な大人どもと一緒に日本に帰りたくないイチエの本音に感じました。

今回は戯曲本を買ってないので、はっきりしたことは分からず感じたままを意味不明に書いて申し訳ないですが、改めて野田さんは凄い脚本演出家だなと思いました。

もし、寺山修司が未完成の遺作を残していたら…?を前提に書かれた脚本。ラストまでは本当に寺山氏の遺作を野田さんが改編しているんだと思ってた。それくらいリアリティーがあった。まさしく、ウディの「ギター弾きの恋」みたいなもんやもんね。まんまと騙された(笑)

本当に本当に、戦争が原因でオリンピック開催中止といった歴史の繰り返しとか、政治利用とか、純粋に夢を持った若者達の夢を壊さないように今の政治家や未来の政治家に切望します!

ということで、まさかの再演の本作。しかも初演と同じメンバーで。初演の時はまだ東京でオリンピックが決まってなかったんか…。偶然でも、まだ2020年を迎えていない今やる意味は大きいと思います。

悪い歴史は繰り返しちゃイカンのだよ。歴史事実は隠ぺいしたり、遠い過去にしちゃイカンのだよ。野田さんは嫌いな言葉かもしれないけど、“ありのまま”を伝えて記憶に留めておくことは大切だと思う。人間、私もそうだけど、自分に都合に合わせて覚えていたり忘れたりするから、質が悪い…。

生&お初のブッキーの純粋な心を持ったアベの演技は素晴らしかった。お調子者なんだけど、心が穢れてない様をちゃんと表現されていてとても良かった。テレビで野田さんがブッキーを褒めていた理由が分かる。ブッキーが語ってたのか忘れたけど…。ブッキーは、個人的に私の映画人生によく関わってくるので(作品に登場するという意味)、映画「タイタニック」の下手なアフレコ時代m(__)mから注目してしまいますが、本当にイイ役者になったね。っていうか、作品に恵まれてるよね。

小悪魔的な深っちゃんのイチエも良かった。「春琴」の時よりめちゃくちゃお腹から声が出ていて素晴らしかった。録音もあったけど、深っちゃんの透明感のある歌声も素敵でした。純粋に人を好きになる。自分に素直で正直なイチエ。可愛い部分と毒っ気な部分の表現の仕方が上手かった。ラストのイチエの心を踏みにじった両親に反発する姿?アベに寄り添わんとする姿がとても印象的でした。最初のパンクロッカーな身なりには驚いたけどね。

最近は舞台にもよく出られている仲村さんは、ブッキーに続きお初ですが、発声が素晴らしかった。良い奴なのか悪い奴なのか分からない役どころではありましたが、結局は卑怯な奴ではあるけど、ある意味人間らしいというか、男らしいというか、信念があるのかないのか分からない役どころを格好良く演じられてました。

オーナー役の秋山さんの男前っぷりはまるで宝塚の男役みたいでした!本当に宝塚にいそうだった。自分の娘をも商品みたいに扱うエゴの塊の役どころで、この役は「パンドラの鐘」のピンカーネル財団(?)のオカン役に似てたね。

監督役の橋爪さんもお初だったんですが、私が想像してた以上に活発な動きをされていてm(__)mその元気さに感動しました。今日は紙が客席に落ちるハプニングがあり、アドリブで野田さんに突っ込んでましたが、私が想像してた以上に舞台役者さんでm(__)m、なにぶんテレビの橋爪さんしか拝見したことなかったので…、その演技センスにビックリしましたm(__)m監督の男らしさも持ちつつ、嫁や姑に尻を敷かれているようないかにも婿養子的な役どころが良かったです。

この、ツブライ、オーナー、監督の三人の善悪が分からない、一番の悪玉はオーナー&姑だけど、この三人が本当に最低ですね。でもこれが現状なんですよ。お金・成功が善と判断する人が、それが悪の源って思わないのは普通。だから人間らしいと思ってる。純粋な人間は、数が少ないから人間らしくないんだよ。残念ながら今の民主主義では、多数決で多い者の考え方が常識になっちゃうんだよね…。

結局、唯一最終回まで見てしまった「怪奇恋愛作戦」(「学校のカイダン」は途中放棄してしまった…)に仲村さんコンビを組んでいた大倉さんの意味不明な存在感ぶりが面白かった。結局はこの平川役も一癖はあるけど最初から最後まで純粋な人間で、最後は人体実験に使われてしまうんよね…。あの毒ガスの演出はリアルだった。

イチエのマネージャー兼振付け師(?)のお床山役の藤井隆さんは、まだ東京に進出する前の吉本新喜劇で活躍していた頃の藤井さんのまんまの役どころだったので超懐かしかった!オネエ系のあんな馬鹿なことやってたよな~とついつい感傷的に見てしまいました(笑)この役も中間管理職的で上に倣え的な役どころで、どこにでもいる社会のthe模範!って感じやね。私もその一人だけど、上に従って波風立たせないのが一番!ってついつい思ってしまう…。

最後に、男女兼用の野田さんは、今回は出番が少なかったですが、この役どころはなんだ…?全体のシナリオライターでもあり、案内係でもありって感じ???案内係はそのまんま、日本から満州へ就職移住する女学生たちを案内する役どころで。シナリオライターの時は…。よく分からない。

“エッグ”の機密文書のカギを握っていたのは、ツブライであったり、イチエであったり、監督、オーナー、女スパイであったから、野田さんの役は…、結局何がしたかったん???m(__)m

1940年に開催される予定であった東京オリンピック…。戦争が始まったから開催されるはずはないんだけど、完全に架空の物語なのに何故かリアリティーのある裏事情は本当にお見事でした。野田さんのリサーチ&想像力は凄い!

今日のまとめ:「MIWA」の時は美輪さんと三島由紀夫氏、今回は寺山修司氏がモチーフになっていたので、いつか唐さんをモチーフにした作品が観たい!カオスとカオスのぶつかり合いだから普通の作品になるかも(笑)m(__)m

では、では、今から旅に出ます。すぐ帰ってきますが…(笑)