銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件

2024-04-20 22:49:55 | 舞台
和製リーマントリロジーって感じかな?脚本の起こし方がね。

それにしても、谷原章介さんが大健闘やったね。

谷原さんの役が、本業ではないけども同じキャスターということで、ほぼ全編状況説明をする役割を担っていましたが、めちゃくちゃ台詞量が多かった!原稿や台本が眼の前にあるわけじゃないから、マジ大変だったと思う。

ということで、東京公演の初日?ゲネプロ?ダイジェスト映像を見た時に、不可解なタイトルのさわりが見えてきて俄然興味が沸いたので、久々の花ちゃんの舞台を観てきました。

ぶっちゃけ書くと不必要なくらい説明台詞が多かった。各シチュエーションに状況説明が入るので残念ながら感情移入が出来なかった。

だけども、

どなたがこの原作を舞台化したいと思ったのかは分からないけど、題材は決して悪くない。むしろ、素晴らしい!

G2さんの見せ方やアイデアも素晴らしい!伝えたいメッセージもビンビン伝わってきた。ただ説明台詞がね…。

作品のテーマは至ってシンプルで、命の向き合い方と、夫婦間や家族間、パートナーシップや個人も含めた思い遣りだと思うんよね。

タイトルからしてめちゃくちゃ斬新。物語の導入部分もファンタジー要素満載。だからこその気付きと学び、そして心の目だと思うんよね。


突然銀行強盗が、「今持っている物の中で 最も思い入れのある物を差し出せ!」と言って、その場にいた13人から思い入れのある所持品を奪う。それは魂の51%に相当する。

彼らに奇妙な出来事が起こり、その51%を取り戻さないと命がなくなる。取り戻すためには自分で考えるしかない。自ら気付きを得なくてはならないという設定。

13人にそれぞれ奇妙な出来事が起こり、花ちゃん演じる主婦のステイシーは1日単位で背が縮んでいく。数日経ったら消えていく運命。

さあ、ステイシーにとって気付きとは何だ?という物語。

その気付きとは、スバリ最初に書いたこと。

但し、ステイシーだけが気付きを得ても背は縮む一方というのが、この作品の素晴らしいとこ。

観客の誰もが、13人に課せられた試練は本人自身が乗り越えなくてはならないように見せかけておいて、実はそうじゃない。

そうじゃないから、雪だるまになったご主人は溶け始め…。男のお母さん(妻にとっては姑)が何十人にも細胞?分裂し、挙句の果ては風に吹き飛ばされ…。入れ墨のライオンが飛び出してきて追いかけられ…。汚れた衣服を纏った神様が現れ、洗濯機に入れてしまい、挙句の果ては…。ステイシーは縮む一方。

解決の糸口が見つからぬまま、悲劇が起こる(人によっては)。

この作品は、「ビッグ・フィッシュ」みたいにファンタジー要素で描かれているけども、本当は、「グリム童話」の別解釈と同じように深いメッセージが刻み込まれている。

人間の命には限りがある。自分だけではない、相手も。それこそ、銀行強盗に襲われてピストルで撃たれるかもしれない。明日絶対に生きているとも限らない。寿命を全う出来るかも分からない。地震と同じように、明日何が起こるかだれも予想できない。ありふれた日常、当たり前の日常が永遠に続くとは限らない。

その生活や人生の中で何が大切かを訴えた作品だと思うんよね。

ライオンの入れ墨を彫ったなら、ライオンに追いかけられたら、逃げるんじゃなくて、愛をもって抱きつきに行けよ!ってことだと思うんよね。好きでライオンを選んだんだから。

夫婦間もそう、家族間もそう、パートナーシップもそう。縁あって関係を築いたわけやん?嫌なら最初から関わり合うなよ!ってことやん。

それって、一方だけが頑張ったらいいという話ではない。いかなる時でも、双方が歩み寄ることが大事になってくる。

赤ちゃんができると、夫は浮気に走りやすい。それはなんでや?ってこと。もちろん、浮気した夫が悪いけど、夫だけが悪いんか?ってことになる。

じゃあ、妻が赤ちゃんにばかり気にかけるから妻に問題があるんか?って言い出したら、もう喧嘩しかない。それじゃ何も解決しない。そもそも双方に歩み寄る姿勢がないことが一番の問題。放ったらかしとかね。

ステイシーと夫との関係性もある意味冷めきってる。妻が縮んでいってるのに、夫は踏み潰される心配しかしてない。妻が消えていなくなったら、どうやって子供を育てていくんや?想像したことあるか?夫はまだ、ことの重大性に気付いていない。

妻がミクロの大きさになって夫がやっと気付きを得る。ギリギリセーフ。そこから妻がどうなるのかは、原作を読まないと分からないけど、思い遣りと歩み寄りの大切さを訴えていたのは間違いないと思う。

花ちゃん演じるステイシーがミクロまでどうやって見せていくのか、G2さんの手腕は素晴らしかったと思う。パペットを使うとは思っていたが、それだけに非ずでしたね。ワンパターンにならず様々な工夫が施されていました。等身大の花ちゃんが本当に小さく見えた!

花ちゃんのステイシーは、いつ消えていくか分からない不安と闘いながら、谷原さん演じる夫と赤ちゃんと切実に向き合う姿がリアルに表現されていました。

こんな言い方したら失礼を承知で書きますが、やっぱ花ちゃんは、実体験がなくてもリアルに演じられる天才!

初演のメルトゥイユ夫人なんて、実年齢何歳なん!?と聞きたくなるくらい花ちゃんのメルトゥイユ夫人は衝撃だった。そこからあの伝説のカルメン!凄かったもんな。

谷原章介さんは、本当に台詞量が半端なかった。感情を入れられる台詞もあったけど、ほとんど状況説明台詞。情報番組のキャスターをやってるだけあって、凄く説明が上手い!聞き取りやすい!でもってお芝居も上手い!←当たり前だけど…。

ステイシーに対して冷めてる感とか、仕事人間のイメージとか本当にリアルで上手かった!かつストーリーテラーの役割を担っていて本当に大変だったと思う。本当に素晴らしかった。

「カム・フロム・アウェイ」も人海戦術で場面転換を駆使していましたが、こちらもダンスやマイムを取り入れた演出がなされていて、ダンサーさんの柔軟性と身体能力の高さが生かされてましたね。

演出が良かっただけに、脚本が状況説明過多だったのが残念でしたね。「ガラスの仮面」や「スワンキング」のG2さんの脚本が素晴らしかっただけにね。

次回のG2さん脚本演出作品は、浦井氏のモディリアーニ。これはマジ楽しみ!