さすが、スピリチュアル大国イギリス作品だけあるなー!
まさか、幽霊?魂?にも気付きと学びを得る描写をするとはね!
大林宣彦監督の「異人たちとの夏」も良かったけど、アンドリュー・ヘイ監督版も良かった。
ぶっちゃけ、途中までは、主人公をゲイ設定にしたことで無茶振りというか、強引設定というか、
主人公がおネエキャラならいざ知らず、どう見ても第一印象ではノンケ(ゲイじゃない)にしか見えない主人公に、いくら少しは面識はあったとはいえ、ゲイバーで見かけたとかじゃないのに、いきなり家にやって来て主人公がゲイであること前提で話しかけるのはどうなん?と思ってしまった。
これってお国柄と文化の違いか???
お母さんに自分がゲイであることを打ち明けて拒絶されるって…、
いやいやいやいやいやいや、私なら2度とこんな家に帰りたくないわ!
大林監督版は、確かにゲイ設定ではなかったけど、大きくなった息子と再会した時の、息子の全てを受け入れているお父さんとお母さんの描写がぴか一だっただけに、アンドリュー版はあまりにも両親の描写が現実的過ぎて、正直ガッカリしていた。っていうか、イラッとした、
前半はね!
主人公が、母親に拒絶されながらも再び両親に会いに行ってからがもうぴか一!素晴らしかった。ちょっとウルッときた。
まさか、幽霊か魂のどちらか分からない母親が気付きと学びを得るなんて、「異人たちとの夏」を観たあとだけにさすがに思わんやん!?
お父さんも、自分が生きている時には気付けなかった息子の悩みを理解しようと努めるわけやん。
マジ、素晴らしい!としか言いようがない。
まんまと騙された!って感じ。
ラストに関しては、大林監督版はホラーだったけど、アンドリュー版はスピリチュアル。気付きと学びが描かれている。
主人公は、今まで他人に心を開けずに生きてきて、ましてや愛することも知らなかったが、同じマンションの住人(彼)との出会いによって、最初は彼を拒絶していたけども、体の関係を持つようになってから次第に愛することを学び始める。
最初は拒絶していた母親からも彼と恋愛を応援されるようになる。
そして、ラストは、ひょっとしたら主人公も死んでいたのかもしれないけど、既に死んでいた彼と魂で結ばれワンネスとなって星になる。
いやいやいやいやいやいやいやいや、
めちゃくちゃ、ええやんかいさ!!
最初はゲイ設定に無理があるんとちゃうん??と思っていたけども、
ゲイ設定だからこその親子の確執が、それぞれが学びと気付きを得ることでお互いを理解し合い、そして、生きていた時よりも親子の絆を深めていく。
大林監督版にはなかった描写がマジぴか一!
ということで、大林監督版の「異人たちとの夏」のイギリスリメイク版を観てきました。
あまりにも大林監督版が素晴らしかったから、アンドリュー版も期待したら、最初は、えっ!?と思ってしまったけども、後半は反動でめちゃくちゃ感動した。
大林監督版は、ファンタジックホラーだったけど、アンドリュー版はファンタジー&スピリチュアルでしたね。
どちらも甲乙つけがたいくらい素晴らしかった。
大林監督版は、監督独特の照明、セピア風な照明の色がめちゃくちゃ幻想的でノスタルジックな雰囲気を醸し出していて、まさに古き良き昭和の東京の下町の雰囲気を見事に再現されていた。
大林監督カラーが、風間杜夫さん演じる主人公と、片岡鶴太郎さん演じるお父さん、秋吉久美子さん演じるお母さんの親子関係の描写がより一層郷愁に溢れる効果を担っていた。
風間さんも鶴太郎さんも秋吉さんも実年齢は変わらないのに、不思議なことに親子にしか見えない。風間さんが本当に鶴太郎さんと秋吉さんの息子にしか見えない。
風間さんが本当に少年時代にタイムスリップしたかのように、お父さんとお母さんに甘える様がめちゃくちゃ良い!
鶴太郎さんも、下町のお父さんの雰囲気がよく出ていて温かみがある。
秋吉さんも、映画のポスターを見た時は、エロい役なのかと思っていたのに、実際は、エロ担当はまさかの名取裕子さんで、秋吉さんは、良い意味で見た目のエロさに反して息子に対してめちゃくちゃ愛に溢れている下町のお母ちゃんを好演していました。
まさか名取さんが出てるなんて知らなかったので、エロ担当と書いたら失礼ですが、美しい名取さんが、エロ担当だけでなくまさかのホラー担当でもあったのでそのギャップにしてやられましたね。
秋吉さんも名取さんもイメージ的には逆の役だったので、そのギャップとキャスティングが絶妙だった!
タイトルに夏が付いているように、熱い夏、お盆の先祖帰りの時期といった日本ならではの風習?が背景にあるのが凄く活きている。
まさかのホラーテイストだったことも驚きましたが、YouTubeで秋吉さんのトークショーを観させてもらい、大林監督は元々ホラー作品を作りたかったとのこと。このホラーテイストが、賛否両論あったそうですが、私は大林監督の「HOUSEハウス」を思い起こさせる演出だったので結構好き。
加えて、郷愁漂う大林監督カラーが最高に好き!
「時をかける少女」や「さびしんぼう」「転校生」、私が大林監督作品で一番好きな「姉妹坂」も、大林監督カラーが活きているのであの色作りは唯一無二!
って書くと、「異人たちとの夏」は昔から好きなんだと思われるかも知れませんが、実は観たのはつい最近です。松竹のYouTubeで期間限定配信で観させもらいました。
30年以上前に封切られていたことは当時は知っていましたが、なんせポスターで、秋吉久美子さんが出ているからエロ作品だと思っていたのでm(__)m観てませんでした。当時の評判の良さは知ってましたが、まさか大林監督作品だとは知らなかった…。
たまたまYouTubeで観たら、名取裕子さんは出てるわ、秋吉さんは素晴らしいわ、世界観はまさに大林監督ワールド炸裂で、めちゃくちゃ素晴らしかった。
私も主人公同様に両親がいませんが、「異人たちとの夏」を観たら、せめて夢の中だけでも両親が出てきたら素直になりたいな~と思ったほど。
そう、私の夢に両親が出てくる時は、毎回亡くなっていることを忘れて生前同様に喧嘩してる。目が覚めて両親がいないことに気付く。いつもこのパターン。
で、「異人たち」を観たら、こんな親なら二度と会いたくないと思ってしまったけども(前半はね!←ここ強調)、後半からは、
原作を読みたくなるくらい、「異人たちとの夏」とは異なるシチュエーションとラストだったので、全くホラーテイストなし…、山田太一さんが描きたかった世界観を知りたくなった。
感想は最初に書いた通りですが、ゲイ設定に無理くり感は否めないけど、結果的にはスピリチュアル要素満載だったのでコチラも負けじと良かった!
コチラは、お父さん役のジェイミー・ベルもお母さん役のクレア・フォイも主人公のアンドリュー・スコットより若い役者さんなのに、ちゃんとお父さんとお母さんに見えた。
2人とも交通事故で亡くなっていることを分かっているのに、両親として、人間として、まだまだ成長しようとしている描写が本当に良かった。
アンドリューは、風間さんと違って、表現面で息子感というか少年感はなかったけど、自然体で息子を演じていた印象。見た目はオッサンやけど心は少年みたいな感じ。決して少年ぽく演じてはいない。
恋人役のポール・メスカルは、名取さんと違って主人公を呪う役ではなく、結果的には主人公を愛し愛されたいと思ってる役。寂しさを埋めてほしいと思ってる。至って人間。
名取さんの時は、ラストの匂わせを最初から伏線として描いていたけど、コチラは匂わせ一切なし。ラストで真相が明かされる。真相が明かされるだけでなく、主人公と魂で結ばれる。
名取さんの時は、完全に低級霊で除霊?されてしまう。私にとっては、この設定もリアルではあるんだけどね。弱った心に低級霊は憑きやすい。
それはさておき、
「異人たちとの夏」を観ていたからこそ楽しめた「異人たち」だったと間違いなく言える。
イギリスにはお盆がないから、夏は強調されていない英語タイトルも納得。
日本ではあり得ないが、欧米では幽霊が出る物件は高値がつくという文化なので(ひと昔はね。今は知らないけど…)、幽霊に対して恐怖心がないのも欧米文化だなと納得してしまった。
本当に本当に山田太一さんの原作が読みたくなった。