諸行無常なる日々。或いは鬼渡神と神々の源流。

呪われた家系を生きる私の人生観や日常。それに立ち向かう為の神道的な考え。そして因縁の鬼渡神、神々の源流について考えます。

熊野の本地、五衰殿。 その4

2015年05月18日 11時50分20秒 | 神道

続きです。

とうとう鬼谷山の鬼持ヶ谷に到着です。武士達は言いました。「お命頂戴致します。ご遺言が御座いましたら、何なりと」と。

五衰殿は「私は妊娠五ヶ月目です。この子の誕生を見ないで死ぬのは未練です。それに子供を宿したまま死ねば、あの世で妖怪「うぶめ鳥」になってしまうと言います。その苦しみ・悲しみは500回生まれ変わっても続くとされます。この世でも子を取られて悲しみ、あの世でも苦しむのは辛いです」と答えます。

そして五衰殿は髪を結い直し、「南無大慈大悲の観音様」と声を上げお祈りを開始。「可哀想な王子よ、もっと早く宮中で産まれていればどんなに良かったでしょう。喜びの王子から悲しみの王子になるなんて。真の大王の御子なら、今すぐ産まれて来ておくれ」と叫びます。

武士達は「時は来た。とやかく言っても無駄だ。首をいただく」と言い立ち上がります。

その時、禁斎と言う武士が「五衰殿様があの様に言っている。もう少し待とうではないか」と発言。

もっとも獰猛とされる武士・土佐府は「否、待てぬ。今すぐ首を切ろう」との語り、五衰殿の背後に回り剣を振り下ろします。しかし、どうしても剣が振り下ろせない。

五衰殿は「お願いです。今しばらくお待ちを」と語り、涙を流しながら千手教の一巻を読み上げ、四方の神々を拝みます。

すると急に産気付き、玉の様に美しい王子を出産しました。妊娠五ヶ月の子でありながら、五体満足な子です。

五衰殿は「産湯も与えられず死に逝く我の何と罪深い事か」と嘆き、王子を懐に抱き泣き崩れます。

それを見て獰猛な土佐府も情に絆され、谷間で降り水を汲み五衰殿に渡します。

五衰殿はその水を口に含んで温め、産湯として王子を清めます。この光景を見た武士達も心では五衰殿に同情し、涙を流していました。

五衰殿は「僅かな一時でしたね」と産まれたばかりの王子に声をかけ、王子の口に乳房を含ませます。

そして五衰殿は西の方角に手を合わせ、「もう何も思い残す事はありません。さあどうぞお切りください」と。

土佐府はその言葉を聞き、五衰殿の背後に立ち、一寸抜けば1000人、三寸抜けば3000人の首を切らねば収まらぬと言う「とうはつの玉剣」を抜き、五衰殿の首をめがけ振り下ろします。

五衰殿の首はバサッと前に落ち、その後、五衰殿の体は首から血を噴出しながら王子をしっかりと抱え横に倒れました。

ここてチョット話は変わるのですが、「うぶめ鳥」に付いて語っておきます。正式には姑獲鳥と書きます。懐妊しながら死んだ女性、難産で死んだ女性がなるとされる鳥の妖怪です。姿は鳥なのですが、人間の女性の乳房が付いています。

幼児に似た泣き声で鳴きながら飛び、幼児に危害を加えたり、血みどろの姿で産まれたばかりの赤ちゃんを「抱いてくれ」と言ったりするそうです。

実は私、この「うぶめ鳥」は瀬織津姫がモデルではないかと勘ぐっています。その訳は何れまた機会があればお話したいと思っています。

 

続く。

 

 

 

コメント (3)
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