続きです、続き。
さて先妻と言いますか、999人の后が五衰殿の妊娠に嫉妬し999人の巨大な婆様を集め足が九本、顔が八つの鬼に変装させて五衰殿の宮殿に通い、太鼓を叩き気勢を上げ、宮殿に雪崩れ込んだと言う話も気になります。
この999人の巨大な婆様達は、999人の前妻達を意味していると思います。巨大な婆様ですから異様です。それだけ999人の后の心が異様なほど醜い事を表していると考えられます。女の嫉妬は醜いと言いたいのでしょうね。
この話ですが、日本にもあります。それも平安時代中頃から江戸時代まで続いていました。今でも派生した行事は残っている様です。
これは前妻を離縁して再婚した時、前妻とその家族が嫉妬や妬みから後妻や元旦那に嫌がらせしに家まで来て暴れまくると言う風俗・行事です。「後妻打ち(うわなりうち)」、「相当打ち」、「騒動打ち」と言います。この999人の婆様の騒ぎは、それを意味していると思います。
実はこの騒動も祓い清めになるみたいです。
結婚は罪です。罪状は「姦淫罪」となります。だから祓い清めなければなりません。それが神道での結婚式となるのですが、この「後妻打ち」も新たな姦淫罪の罰です。罰を受ける事は祓い清めと言う訳です。
五衰殿の話で巨大な婆様として表したのはもう一つ理由があると思います。鬼渡神に因縁を感じる私はどうしても手長足長をイメージします。婆様ですから手長ですね。手長足長が手名稚命・足名稚命であるなら、八岐大蛇に7人の娘を食われた老夫婦をイメージさせます。だから婆様と爺様です。
そして手長足長は手長を足長がおんぶをして貝を拾う。その姿は土蜘蛛を連想させますが、九本足で八つの顔の鬼に変装させた点は土蜘蛛のイメージです(八人の顔は奇稲田姫の八姉妹をイメージします)。両面スクナもそうです。
そして巨大な婆様と言うと三途の川の奪衣婆もそうですね。誰の絵だか知りませんが、稚児に蚤を取って貰っている奪衣婆の絵を見た事があります。奪衣婆は異様に巨大に書かれていました。奪衣婆もまた鬼です。巨大であってしかるべきです。
私は手長や奪衣婆は瀬織津姫だと考えています。瀬織津姫は神道の代表的な神です。そして仏教・密教から見れば神道の神は悪魔となります。だから妖怪・手長だったり、奪衣婆として描かれていると考えます。仏教・密教の優位性を示す為です。
瀬織津姫と同神とされる禍津日神が悪魔とされるのもその理由です。そんな考えから999人の巨大に婆さんは、悪魔の部分の瀬織津姫であると思えるのです。
続く。