「恵比寿様は何故に真鯛を抱えているのか」。こんな事に疑問を持つ暇人は私位なのではないでしょうか。
私、釣師でしたので子供の頃から考えていたのです。何で真鯛でなければならないのかを。
「鰯や鯵は駄目ですか。牡鹿半島ではアイナメやタケノコメバルが釣れますよ。七ヶ浜のボッケ(かじか)も見た目は悪いけど美味しいよ」と思ったりもしましたが、脇に抱えるほどの大きさではないから無理なのか。
鯖信仰なら恵比寿様に繫がるのにと思ったりもしましたが(何れ語ります)、何故、真鯛なのか。
真鯛って案外沖にいるんです。しかも深いところに。沿岸にはいないのです。鯛で沿岸にいるのは黒鯛です。昔は沿岸でしか魚は取れなかったと思うので、恵比寿様が真鯛を持っているのは変なのです。
黒鯛は結構大きくなります。50センチ以上の大物もいます。抱えるには丁度良い大きさです。何で黒鯛では駄目なのか。そこに鍵が隠されているのではないかと考えました。
結果、気がつきました。何故、真鯛なのかを。
現在、真鯛は養殖されています。養殖と言う事は海岸沿いに生簀がある訳です。だから真鯛の背が太陽の光で焼けて黒ずんでいます。天然の真鯛とは一目瞭然に違います。黒鯛と真鯛のハーフみたいな色合ですので。
真鯛は赤い海老や蟹を食べているから赤いのだと都市伝説的に言われていますが、養殖の真鯛は海老を餌にしているとは思えません(オキアミは食べさせていると思うが・・・・)。この可能性はゼロではないでしょうけど薄いと思いますね。黒鯛だって赤いオキアミを餌にして釣りますし。
実は意外でしょうけど真鯛の赤い色は保護色なのです。真鯛は海底150メートルに生息する魚です。この水深に棲む魚はキンメ鯛等々赤い魚が多い。その訳は海底だと赤い色が太陽光の関係で黒く見える。つまり海底での赤は敵に見つかりにくい色と言えます。
そして海底は異界です。人間が住める場所ではない。つまり霊界。乙姫が住まう竜宮城も霊界。恵比寿様も国譲りを迫られ、手の甲で拍手を打って入水自殺した。異界・霊界の神。真鯛と同じ場所にいる。
人や鯨等々の水死体を恵比寿様と呼んで丁重に埋葬すれば吉を呼ぶと言われていますが、それは恵比寿様が霊界に去って行った神だから。恨んで去って行った神だからです。それで同じ異界の魚である真鯛を抱えているのではないでしょうか。
古来、日本の風景で赤は血の色以外存在しなかったと思います。イチゴだってスイカだって無かったでしょうし、リンゴはのもう一つの名は唐梨です。唐は中国ですから、元々は日本には無かった筈です。
強いて赤に近い色と言えるのは桜だと思います。桜の木の下には人の遺体が埋まっていると言われますが、それは桜が霊界との境界線に咲く花と考えれば、やはり赤は異界の色と言えると思います。
これ、私としては案外的を得ていると自惚れているのですが、どうでしょうか。こんな事考えるのは私ぐらいなものですから、肯定出来る伝承は無いと思いますけど。
ただ、もう一つまさかと思っている考えがあるのです。恵比寿様は「蝦夷」とも書きます。蝦夷の「蝦」は海老を意味します。つまり恵比寿様は海老。
「海老で鯛を釣る」と言いますが、その海老を食す真鯛を抱えていると言うことは、恵比寿様を調伏・封印する為に真鯛を抱えさせられているのではないかと。
うーん、これは流石に考え過ぎでしょうね。そんな訳無い。やっぱり恵比寿様も真鯛も異界の存在であるから、真鯛を抱えている。そう思うことにしときます。
もっとも赤い色はお目出度い色だからと言われれば、グウの音も出ないですけど。
ではでは。