諸行無常なる日々。或いは鬼渡神と神々の源流。

呪われた家系を生きる私の人生観や日常。それに立ち向かう為の神道的な考え。そして因縁の鬼渡神、神々の源流について考えます。

「もらいゲロ」のトラウマ。その3

2020年10月09日 06時25分00秒 | 人生
忌まわしい過去を想い出しながら続きます。

あの男とはF沢君。背は小さくお目目ぱっちりで丸顔。髪はソフトな七三分け。

何時もブレーザーにタイツと半ズボンを履いている様なボンボンの子。ヤクザな新聞販売店の息子の私とは大違い。

特に目を引くのは肌の白さ。馬鹿殿並に白い。そしてそのルックスは森進一が子供になった感じ。

色白と言えば同じクラスにK木君がいる。何時も深緑色の地味なジャンバーをひるかえし着ているが彼はアルビノ。目立つ。肌は桃色がかった白。目の色は薄い茶。頭髪はほんのり茶がかった白。

そのアルビノのK木君に対抗出来るF沢君は、透き通った純白の白、鈴木その子ら美白おばさんが求めている白。ホワイト&ホワイト。究極の白さです。

私は彼を避けていました。趣味思考が全然違うから何を話して良いものか判らないし、彼と並ぶと目の細い私は「五木ひろし」に見られてしまう。それだけは嫌だった。

私は彼を気にしていました。車酔いで吐くのは何時も私と彼。前回の遠足では彼は吐かなかった。私だけが吐いた。この屈辱、晴らさで置くべきか。

だから意識して彼をチラチラ見ていたのです。

私と彼の車酔いに関する考え方は違います。私は絶対に吐く事を前提としているから、一番前の席に陣取っています。実はこの席、下はタイヤなので一番揺れる場所です。バスは前と後ろが一番酔い易い席なのです。

彼、F沢君はバスの中央の通路側に陣取った。一番揺れの少ない場所に座り、何としても車に酔わない、吐かない戦略といえます。

私もそうするべきが悩みましたが、大勢の中で吐く訳には行かない。ポリバケツを抱きしめている私は惨めなピエロとして笑われる。それだけは嫌だ。やはり一番前が私の特等席。ここで良いのだと自分に言い聞かせておりました。

学校に近付いて来た。今回の遠足ではF沢君も私も吐かなかった。そう思って通路を挟んでの斜め後ろのF沢君を見る。

彼は何時も物静かで無表情。何を考えているのか分からない顔をしているが、何か変。

何と形容していいのか分からないが、「犬が変なモノを喰って後悔している様な顔」と言うか、何時もの無表情とは何かが違う。

まさか酔っているのか。否、学校まで直ぐそこまで来ているのだ。酔っていたとしてももう少しだ。大丈夫だろう。

私は嬉しかった。ポリバケツ一つで車酔いは軽微となり、吐く事は無かった。バケツを貸してくれてたバスガイドさんが神々しい女神に見えた。

そう思った瞬間、「おお、おおおぅ」との声が。私は後ろを向く。F沢君がうごめいている。エチケット袋を手にして開こうとしている。

その刹那、F沢君は森進一が「♪おふくろさんよ、おふくろさん・・」と歌うような口を半開きにした表情になっていた。

私はマズイと思ったその瞬間、「♪空を見上げれゃゃゃゃゃゃゃ・・・・」と言う無音の口調で、その場でゲロゲロロロロロォーーーーとぶっ放した。

私はその瞬間をコマ送りのように見た。そして1ミリ秒でもよおした私は、素早く前を向きバケツに顔を突っ込んで「ゲロロロ、グエッっっっ、ビシャー、ビシャー、ビシャー、ビシャー」と腹の中のものを涙目になって全て吐き出した。

バスの中は誰もが悲鳴を上げ地獄絵図となっていた。F沢君はエチケット袋が間に合わなかった。バス内にゲロが撒き散らされた。

私はポリバケツの中に後悔を吐き続ける。「人の心配なんてする身分ではなかった。私が一番ヤバイ男なのに油断した」と思いながら・・・・。

「♪勝つと思うな、思えば負けよ」。美空ひばりの「柔」が脳裏に流れて来た。

そうだ。私は勝ちを確信した。それで油断した。人を憂いる余裕を見せた。そんな事をする余裕は私には無い。私が一番弱いのだから。

私の人生、こんなパターンが多いです。上手く行っていたのに、最後の最後でダメになる。一瞬たりとも油断が出来ない人生。

どんなに頑張っても、周りの者が私に禍を運んで来る。だから1人でしか生きられない人生。それがズッー続いていると感じ。それが私の人生だ。

その出来事がトラウマとなって、私は人の顔を見るのが苦手になりました。色白の人は特に。

そして森進一。彼の歌い出す口の動きを見ただけで、F沢君の吐く瞬間が脳裏に浮かぶ。吐き気が襲う。森進一の物真似芸人を見てもそうなる。だからチャンネルは直ぐに回す。

これが数十年続く私の人生のトラウマです。もう治らないでしょう。

悲しいかな、悲しいかな。


ではでは。


※追伸。ゲロを吐いてしまったポリバケツは、ちゃんと洗ってバスガイドさんにお返ししました。バスガイドさんには「あとチョッとだったのにね。残念だったね」と慰みのお言葉を頂きました。敗れ去った私に最後まで優しくしていただきました。感謝です。有難う御座いました。期待に応えられず、済みませんでした。








コメント (4)
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