令和4年10月17日
政府
未取得者対応など論点整理へ=保険証の24年秋廃止
政府が2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を決めたことを受け、
厚生労働省や総務省など関係省庁は準備を本格化させる。
カードを持ちたくない人への対応や紛失時の救済策といった論点を整理した上で、必要な制度改正やシステム改修に着手する。
◇紛失時救済、医療機関支援も
マイナ保険証は21年10月に本格運用を開始。
医療機関や薬局に設置された機器にカードをかざし、顔認証などで本人確認する。
転職や引っ越しをしても保険証として使い続けられるメリットがあるが、カードの交付が進んでいないこともあり、
登録が済んだのは全人口の約2割にとどまる。
保険証廃止に向けた大きな課題の一つが、廃止後もカードを取得しない人への対応だ。
政府は24年秋までの新規発行停止を検討するが、「取得の義務化ができない以上、持たない人が出るのは避けられない」(デジタル庁幹部)のが現状だ。
さらに、高齢者や新生児を含め取得が難しい層もいるため、医療機関の受診に当たり、
被保険者であることを示す何らかの証明書を交付する案を協議する見通しだ。
また、現在マイナカードを紛失した場合、再発行に数週間かかる。保険証を持っていない状態が続き、患者の受診に影響が生じる。
このため、再発行の迅速化や紛失期間中の受診の仕組みを検討する方針だ。
医療機関や薬局の対応も急務となる。
政府は来年4月に、マイナ保険証に対応した機器の導入を義務化する方針。
導入補助金を上乗せするなどして支援している。
さらに、保険証が使われている訪問看護や接骨院といった場でもマイナ保険証への対応を後押しする必要がある。
厚労省は現在、高齢の医師が勤める医療機関を義務化の対象外としているが、
そうした機関向けに簡易な確認システムの開発を計画している。
システムの利用対象を拡大することで、保険証が必要なあらゆる施設でのマイナ保険証対応を進める。
◇取得をさらに促進
関係省庁は対応策を協議し、一定のめどが付いた段階で政府のデジタル化計画などに反映させる。
また、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)で、医療団体や保険者団体、
学識経験者の意見を聞きながら制度の詳細を詰め、必要に応じて法改正や政令改正を行う。
今回の見直しを主導した河野太郎デジタル相は「医療の質が向上し、
利便性も高まる」とメリットを強調するが、マイナカードの新たな導入促進策も課題となる。
政府内では「カード交付が進まない限り廃止はできない」(関係者)との声は根強く、
「ほぼ全国民に行き渡らせる」とした政府の目標達成は重要課題だ。
政府はこれまで、カード取得者にポイントを還元する「マイナポイント事業」を展開。
普通交付税や交付金の配分に普及状況を反映させることも検討しているが、交付促進にどれだけ貢献するかは見通せない。
また、政府内では「40、50代のサラリーマンといった交付が遅れている層への集中的な対策が必要」(先のデジタル庁幹部)
との指摘が出ており、より取得しやすい環境づくりが課題だ。
保険証廃止に対する国民の不安や批判が強まっており、臨時国会の審議でも野党による追及が予想される。
情報漏えいに対する不安を払拭(ふっしょく)し、マイナカードの利便性に対する理解が進むかどうかがカギとなりそうだ。
マイナカード保険証 運用6.7% - 安東伸昭ブログ (goo.ne.jp)