令和7年2月21日
コメ農家の時給は「10円」
今年1月28日、経済アナリストの森永卓郎氏が死去されました。
原発不明がんと闘いながらも、亡くなる直前までメディアに出演し続け、世界経済の行方に多くの警鐘を鳴らしてきた。
「AIバブルは崩壊する…」「日経平均はこれから大暴落する…」
彼がこう語った背景には一体何があるのか。そして残された私たちは、この先行き不透明な社会をどう乗り越えていくべきなのか。
激動の時代を生き抜くための戦略と覚悟とは。
森永卓郎氏と、息子の康平氏がいまの日本のさまざまな病巣についてガチンコで語り合った
魂の一冊『この国でそれでも生きていく人たちへ』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』連載第12回
『現代人は「大都市依存症」に陥って悪循環にハマっている!…都会の喧騒で疲れた労働者に
森永卓郎が最期に伝えた「至極の金言」』より続く。
効率化を進めるほど赤字に
農業は大変だが、その分、やりがいも大きい。
頭を使うし、身体も動かす。誰かの命令に従う必要がないので、人間的な働き方でやれるところも魅力だ。
実は農業を始めるまで、私は野菜があまり好きではなかったのだが、自分で作った野菜の味は格別だ。
スーパーで売っている野菜はあまり味がしないが、自分で作った野菜は、「大地の味」がするというか、風味が強い。
日本はもっと手作りの野菜を増やしたほうがよいと思うが、政府は自給自足を中心に据えようとはまったく考えていない。
政府が興味を持っているのは「スマート農業」、要するにAIやドローンで、デジタル化した効率的な農業を普及させたいのだ。
効率化と機械化によって、農業の担い手不足を解決したいわけだ。
ただ、機械化の費用を出すのは農家だ。
自動制御のトラクターは1台1000万円以上もするので、農家の負担ははかり知れない。
新しい機械を入れるために、農家は借金を重ねることになる。
政府が「スマート農業」を推進すればするほど、農家の借金は増えていくわけだ。
コメ農家の時給は「10円」!?
政府が補助金で負担を軽減する、という議論もあるが、政府が負担の全額を補助することは考えられない。
補助金をつければつけるほど、かえって農家の借金が増えていく。
ちなみに、民主党政権時には農家の戸別所得補償制度を導入している。
欧米では当たり前の制度だが、その後の自民党政権は、「補助金漬けの農家はけしからん」と主張して全廃してしまった。
「農家は補助金漬け」というのはイメージの刷り込みであり、いまの農家は補助金なんてほとんどもらっていないので、全然儲かっていない。
とくに悲惨なのがコメ農家だ。農水省が公表する「営農類型別経営統計」によると、
コロナ禍の2021年、22年のコメ農家の平均年収はたった1万円だった。
時給に換算するとなんと「10円」だ。
農家はこれほど厳しい状況に追い詰められている。
それも結局、都会のことしかわからない政治家と官僚がすべてを決めていることが原因だ。
『有事の際に真っ先に飢え死にするのは「都会の人々」!?…故・森永卓郎さんが「農業の軽視は命の軽視」と政府を痛烈批判したワケ』へ続く。
現代ビジネス
農家の時給はなんと驚愕の「10円」!?…森永卓郎さんが問題視していた「日本の農家の貧困化」