令和4年6月28日
自公相互推薦のひずみ
1人区優先、焦る複数区陣営―兵庫
2016年、19年に続き今回の参院選でも、自民、公明両党は互いの候補を推薦する「相互推薦」を実施した。
32ある1人区で公明党が自民党候補を推薦。代わりに複数区で、「競合する公明党候補」に自民党が推薦を出した。
この結果、兵庫選挙区(改選数3)では、自民党候補が党本部の全面支援を得られず、公明党陣営の切り崩しにも遭うなど困難な戦いを強いられている。
「私がこの場に立っているのは、伊藤孝江さんにどうしても当選してほしいからだ」。
公示前日の21日夜に神戸市内で開かれた公明党現職、伊藤の激励会。出席者に支援を呼び掛けたのは、元首相の安倍晋三だった。
安倍は26日に自民党現職で4選を狙う文部科学相の末松信介の応援に入ったが、
安倍派メンバーでもある末松より公明党支援を優先した形だ。
伊藤の激励会には自民党組織運動本部長の小渕優子も出席。
「われわれも総力を結集する」とあいさつした。
前首相の菅義偉も既に伊藤支援のため兵庫入りしている。
昨年の衆院選比例代表で公明党が得た県内の票は約29万。
参院兵庫の当選ライン約50万票に遠く及ばない。
このため、自民党の組織票をはがし、当選圏に押し上げるのが伊藤陣営の戦略だ。
公明党副代表で国土交通相の斉藤鉄夫も頻繁に現地入りし、業界団体への働き掛けを強める。
さらに、伊藤の主張や推薦決定を大きく紹介する自民党機関誌の号外を、公明党支持者らが手分けして県内全域に配布するなど活動は徹底している。
自民党衆院議員の一部も伊藤支援に傾斜。
菅グループの大串正樹は公明党の講演会で「『伊藤に入れて』と言って一緒に企業を回っている」と明言した。
昨年の衆院選で日本維新の会に敗れ、辛くも比例復活当選した大串の地盤は、維新の本拠地である大阪と隣接する。
伊藤陣営は「自民党の衆院議員には選挙で助けた分、参院選で協力してもらわないと困るとプレッシャーをかけている」と明かした。
末松陣営のいら立ちは募る一方だ。
3年前も自民党候補は公明党の切り崩しに遭い、次点の立憲民主党とは約3万票差の薄氷の勝利だった。
今回の相互推薦をめぐり、自民党県連は一時抵抗したが、全体の戦略を描く党本部に事実上押し切られた。
末松陣営は県議らを地元に密着させ、組織固めに必死だ。県連幹部は「現職大臣を落とせない」と語気を強める。
ベテラン県議は「これまでは公明党に票を一部分けたが、今回は余裕はない」と言い切った。
末松は18日の街頭演説で「何が何でも3議席の一つに入る。
必死になって戦っていく」と声をからした。
◇「何もしていない」
「本当の意味で対峙(たいじ)する野党は立民以外にない」。
立民代表代行の逢坂誠二は23日、新人相崎佐和子の応援で入った明石市の街頭で拳を振り上げた。
立民の源流である旧民主党系が兵庫選挙区で最後に当選したのは12年前。
ただ、前回は接戦に持ち込み、陣営は「前回以上を取る」と意気込む。
20日には相崎を推薦した連合が決起集会を開催。
国民民主党の県連代表や同党を支持する連合傘下の産業別労働組合(産別)代表がそろった。
だが、結束する姿はあくまで表向きだ。
立民と距離を置く産別は相崎に推薦を出さず、国民の比例票確保に集中する。「何もしていない」。
国民県連幹部はあっさりと語った。立民幹部も「運動が弱い。良い雰囲気も作れず厳しい」と嘆く。
関西での影響力をさらに強めたい維新はトップ当選を目指す。
代表の松井一郎は26日、JR尼崎駅前で「永田町の非常識を変えさせてほしい」と訴えた。
共産党やNHK党も支持拡大をうかがう。
◇立候補者名簿
【兵 庫】
西村しのぶ 59 参政党員 諸新
片山 大介 55 文科委員 維現①
木原功仁哉 38 弁護士 無新
稲垣 秀哉 53 くにもり党員 諸新
速水 肇 37 自営業 N新
伊藤 孝江 54 党団体局次長 公現① 推(自)
里村 英一 61 幸福実現役員 諸新
黒田 秀高 75 新風副代表 諸新
末松 信介 66 文科相 自現③
山崎 藍子 37 薬剤師 N新
相崎佐和子 49 元県議 立新 推(社)
中曽千鶴子 60 元川西市議 N新
小村 潤 46 元尼崎市議 共新
(注)敬称略。
年齢は投票日現在。
党派名は自=自民、立=立憲民主、公=公明、維=日本維新の会、共=共産、社=社民、N=NHK党、諸=諸派。丸数字は当選回数。
丸かっこは推薦政党。