ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

アウトブレイク ロビン・クック

2011-01-24 14:36:00 | 

たまにしか読みたくないのがロビン・クックだ。

私はミステリーが好きだし、ホラーだって好きだ。浮ュてドキドキしたり、意外な展開に驚いたりする楽しみを味わえる可能性が高いのが、ミステリーとホラーだからだ。

ところが、医療ミステリーの草分けとされるロビン・クックはいけない。一言で言えば、生々しすぎる。思わず怯えてしまうほどに、その作品は恐ろしい。

さりとて、その作品中にグロテスクな描写が溢れているわけでは決してない。恐ろしいのは、その題材のほとんどが、事実あるいは、それに近い現実に基づいているからだ。

実際、ロビン・クックが題材にとった違法な内臓移植や遺伝子改良、未承認薬品の無許可実験などは、現実社会で既に行われているが故に恐ろしい。

私自身が長期の入院生活を過ごし、難病治療の困難さを我が身で味わっているからこそ、最先端医療の裏側に微妙な部分が存在することを知っている。

如何に医者が真摯に努力しようと、その治療に100%はなく、常に試行錯誤と予期せぬ事態が待ち構えていることも分っている。

それが人間の限界だと思うし、人間は必ず間違える生き物であることも確かだ。実際、悪意からではなく、単なるケアミスで起きてしまう事故は後を絶たない。

ロビン・クックの作品では、医療を悪意で行ったケースや、ケアミスが組織防衛の論理で隠蔽され、気がついた時には手遅れの状態に陥る悲劇など、現実にありうる問題が題材として使われる。

不死身のエイリアンや、狡猾な異常犯罪者に対する恐怖は、日常生活からの飛躍を必要とする。しかし、ロビン・クックの描き出す恐怖は、日常のほんの僅か先に起きる可能性を有するが故に怖い。

だから、あまり読みたくない。でも、いつまでも目をそらしたままでいるには魅惑的すぎる。ミステリーとしては、格段に面白いからだ。

数ある作品のなかでも一番怖いのは、以前取り上げた「昏睡 コーマ」だが二番手が表題の作品。免疫力が若干低い私なんざ、あっという間にやられちまう。たしか映画にもなっていますが、邦題は「レベル4」でダスティン・ホフマンが主演した「アウトブレイク」とは別物です。興味がありましたら是非どうぞ。

コメント (3)
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