ヌマンタの書斎

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ギリシャ危機に思うこと

2015-07-07 12:28:00 | 社会・政治・一般

何故に、これほど没落したのだろうか。

現在、債務不履行国となってしまったギリシャである。私は国際金融にそれほど詳しくないので、今後の動向に意見できるほどの見識を持ち合わせていない。

ただ、分かるのはEUROという仕組みは、かなり不完全であることだ。もともと超大国アメリカとアジアからの新興国に押されることに対する恐怖心ゆえに団結して作られた組織だけに、先進国ヨーロッパという面子が優先しがちであった。

それだけに、ドルに匹敵する規模を持つ国際通貨を作るという目的が先行し過ぎて、通貨の基盤である経済の基礎体力が異なる国々での共通通貨ユーロを無理やりに作ったことが大きな要因だと思う。

かつて古代オリエント社会にその名を響かせた栄光あるギリシャは、何故にこれほど没落したのか。同じ古代の覇者たちのなかでも、イタリア、ペルシャ、トルコなどは今も相応の地位を築いている。

それに対し、ギリシャの低迷ぶりは2000年近い。あるのは、古代ギリシャの遺跡だけであり、あれだけ哲学、文芸、数学などの面で優れた業績を残した痕跡すら見つけるのは至難の業だ。

その原因を探ると、やはりアレキサンダー大王に行き着いてしまう。ギリシャ北西の片田舎の扱いであったマケドニアの王により支配されたギリシャは、アレキサンダー大王に連れられてオリエント各地を巡る戦いの旅に随行することとなる。

征服地において、アレキサンダーは随行した兵士たちを現地の女性と婚姻させて、その支配を確固たるものとし、大量のギリシャ人、ペルシャ人らが各地で混血を繰り返し、アレキサンダーの死後も融合した新たな文化の担い手となり、世界史に名を残すヘレニズム文化が花開く。

人口の多いペルシャはともかく、決して人口大国ではなかったギリシャにとって、若い男性を大量に兵隊に取られ、その兵隊たちが帰国せずにオリエント各地で婚姻して現地に溶け込んでしまったことは、大変な問題となった。

高度な教育と、洗練された社会風習を持つ古代ギリシャにとって、次世代の社会の中核を担うはずであった人材を大量に失ったことで、国力は大きく減退した。その後も他民族の流入により、人口はかなり回復されたが、文化的水準が元に戻ることはなかった。

ユーロから求められた緊縮財政に対する受入を理解は出来ても、国民の前で表明できなかった愚かで卑怯なギリシャ政府は、国民投票という逃げを打った。過大な借財の返済よりも、目先の吾が身可愛さを優先するのが人の性。

決断すべき政治が、その決断から逃げての結果が、ギリシャ国民の儚い虚栄心を満足させるだけの緊縮財政拒否である。この先のギリシャがどのような苦難の道を歩むかは不明だが、真綿で首を絞められるような苦渋の未来が待っていることは確かだと思う。

幸か不幸か、ギリシャは軍事的には小国であるため、直接の戦乱の可能性は低い。しかし、資本主義社会に対する強烈な拒否反応が根付いてしまい、それが欧州全体に波及する可能性は高い。

すなわち、ヨーロッパで生まれ育った近代の象徴である市場経済と資本主義の終わりの始まりとなるかもしれない。これはギリシャだけの問題ではない。ベルリンの壁が崩壊し、遅れた東欧国家へとつぎ込まれた膨大な資金の多くが、焦げ付きの可能性を秘めている。

いくら投資しても、それが再生産に回されずに、過剰な消費すなわち浪費に使われてしまい、残ったのは莫大な対外債務だけ。いくらカネを注ぎ込んでも、決して近代化出来なかったアフリカ諸国と同様の失敗がみられる。

これがアジアだと、投資が社会資本の構築と経済の再生に使われて、新興経済国として躍進に貢献する場合もある。ギリシャとの違いは何かといえば、やはり人だと思う。

蓄積んされた人智の継承が根付いているアジアと、社会の中核となる人材を喪失したギリシャとの違いは、残酷なまでの結果を生み出してしまったと思うのです。

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