多分、破綻させたほうが良かったはずだ。
債務危機に陥っていたギリシャとEUの間での合意が成立し、とりあえずギリシャの破綻は回避された。一番、強硬に反対していたドイツだが、他国及び金融機関からの批難が相次いだことから妥協したらしい。
これで金融市場の混乱は避けられ、欧米や日本でも株価は再び上昇機運に乗ったようだ。しかし、これで良かったと云えるのか私は大いに疑問だ。
ベルリンの壁が崩壊し、豊かな西側諸国に憧れたがゆえに、ギリシャはEUに加盟した。夢見たのは豊かな暮らしであり、それを叶えるためにとったのは公務員給与の引き上げや、年金支給額の引き上げであった。
だが、肝心要のギリシャ国内経済の活性化には失敗した。念願のアテネ五輪は、多額の負債を残し、海外からの投資は思ったよりも増えず、その投資さえも有効に活用したとは言い難い。
その癖、生活水準だけは西側諸国並みを求めたがゆえに消費過剰で、国内に資本が蓄積されないどころか、資本も人材も海外へ逃避してしまう。本来の観光資源を活かす努力にも欠けた。
ある意味、破綻は当然だし、破綻してからの再出発のほうが良かったのではないか。豊かな暮らしに馴れてしまうと、なかなかその生活水準を落すことは出来ない。実際、EUから呈示された緊縮案を受け入れたギリシャ政府に対して、既に国民は反発している。
政府が悪い、政府がなんとかしろ。
民衆が自らの責務を自覚せずに、その責任を政府に押し付けている国の未来は、決して明るくない。だから早めに破綻させて債務の処理の道筋をつけた方が、その再起は早いと思う。
その決断が出来ないのが、民主主義の辛いところ。いや、欠点といってもいい。誰だって苦しいのは嫌だ。だが苦しさを耐えねばならぬ時がある。それを主導するのが最高責任者の責務。しかし、選挙という人気投票に権力の基盤を持つ民主主義政権には、この決断が出来ない。
民主主義が最上の政治だなどと思い込んでいる方は、このギリシャの惨状をよくよく直視する必要があると思います。