分かっていたって、試してみたい。
アインシュタインには分かっていた。核分裂の実現が、人類に膨大なエネルギーを提供するだけでなく、従来にはない凄まじい破壊兵器としても利用される。それを承知の上で、敢えて原子力爆弾の開発に加わった。
それが人類にとって危険なことも分かっていた。分かっていながらも、その開発に手を染めることを止めることは出来なかった。それは科学者の性というよりも、興味心に憑かれた人の性のような気がする。
分かっていても、動くことを止められないことは私にもある。勝てないと分かっていながら、相手に殴りかかったケンカ然り。届かないと分かっていたけど、それでも飛びつかずにはいられなかった垂直の岩壁でのフリークライミング。
多分私だけじゃないはず。分かっていても、やってみてしまったことは、誰の人生にもあることだと思う。
それをやっちまったのが、アイアンマンのトニー・スタークだ。未知の物質であるロキの槍から抽出した力を使って組み立ててしまった人口知能。人類を守るために役立つはずが、それとは逆の展開になる。
相変わらずの滅茶苦茶、ハチャメチャなお話だが、それでも二時間弱の時間、観客を飽きさせずに楽しませる手法は見事。大ヒットするのも当然の出来上がりなのだが、気になったのが控えめな3D映像だった。
アバター以降、爆発的に広まった3D映画だが、やり過ぎると気持ち悪くなる欠点があることが分かり、最近の3D映画はあまり特殊効果を強調しない。これが私にはありがたかった。
如何に優れた技術でも、それを使い、その効用を受ける人間のことを考えなければ、その技術は良いものとはならない。
ただね、この映画を観る限り、相変わらずトニーは反省していない。多分またやらかすぞ。そう思っていたら、既に続編の予告が最後に流れていた。まったく商売上手だね。