ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

バケモノの子

2015-07-27 12:46:00 | 映画

人は一人では成長できない。

私の子供時代、父親の背中を見ることはあまりなかった。幼少時から6歳くらいまでは、仕事に奔走し家庭を顧みないとの印象が強い。それでも忘れがたい記憶はある。

父に連れられて行ったサーキットでの凄まじい爆音と、焼けたオイルの匂い。八王子の広い料亭に連れられていった時、食べさせられたスズメの骨だらけの串焼き。無理やりプールに引き込まれて、泣きながら逃げ回った会社の保養施設。

正直、楽しかったという記憶はない。その後、中二の冬に再会した時も、懐かしさよりも戸惑いの方が多かった。父親とどう接したら良いのか分からなかったからだ。

分からないながらも、なんとなく分かっていたのは、父にとっては家庭よりも仕事のほうが大切であったということだ。実際はそうではなく、別の事情があったことが分かったのは、わりと最近のこと。

だから、子供時代の私は、家庭よりも価値があった仕事に対して関心が強かった。早く大人になって、仕事をする大人になりたかった。だから、大人の輪の中に入りたかったが、幼い子供は所詮子供に過ぎず、大人扱いされることはなかった。

同時に迷いもあった。大人、とりわけ男性の大人のなかに入って、何をしたらいいのか、何を話したらいいのかが、さっぱり分からなかった。

私の人生に不幸があったとすれば、身近なところに見本、あるいは手本となるような大人の男性がいなかったことだ。このことは、けっこう後々まで私の人格形成に影響を与えている。

難病で早期に退職したこと、また再就職というか再出発においても、ついに父に代わり得るような大人の男性とは出会えなかった。もしくは、私の眼力不足かコミュニケーション能力の不足で、そのような男性と良好な関係を築くことがなかった。

ただ、幸いだったのは、ワンダーフォーゲル部という先輩後輩のつながりの濃い部活に参加していたので、そこで自分を切磋琢磨できる仲間に出会えることが出来た。この経験がなかったら、私はひどく頭でっかちな、知識過剰、実行力不足のボンクラになっていたと思う。

表題の映画は、子供を持つ親にこそ観て欲しい作品だ。子供にとって、親の姿こそ、最良にして最大の教科書であり、見本でもある。子供は親の背中を観て育つ。

幸い私には働く母親の背中を観ることは出来た。しかし、働く父親の姿を観ることなく育った。それは未だに私の半生に影響を与えている。そのことを痛感させられた作品でした。

コメント
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