動物は可愛いだけでもないし、可哀そうなだけでもない。
それを教えてくれた漫画だった。
今では考えられないが、表題の漫画は週刊ジャンプ誌に連載されていた。私が小学生の時だったのだが、当時ジャンプはPTAから睨まれていた俗悪漫画誌扱いであったため、福祉会館には置いてなかった。
でも読みたい漫画は沢山あった。「トイレット博士」「ハレンチ学園」などPTAが目の敵にしていた漫画こそ、子供たちが読みたいものであった。親にねだっても、ジャンプは買ってもらえない。さあ、困った。
でも抜け道は必ずある。それが床屋さんであった。順番待ちをしている間に、ジャンプを読み漁るのが当時の子供たちのお作法であった。本当は髪を切るのは好きじゃないけど、ジャンプが読みたくて毎月、床屋に通ったものだ。
後発の漫画週刊誌であったジャンプは、マガジンやサンデー、チャンピオン、キングに負けない為、衝撃度の強い作品を掲載することで人気を得た。ジャンプといえば、勝利、友情、努力の三本柱が有名だが、裏の三本柱は、エッチ、お下品、喧嘩であった。だからこそ、子供たちから評価された。
そんなジャンプに連載される漫画のなかでも、表題の作品は完全に浮いていた。上野動物園の飼育員である西山登志雄氏の実話を元にした作品なのだが、そこで描かれる動物園の動物たちと、飼育員たちの姿は子供たちの魂をぶちぬいた。
綺麗ごとでもなく、お涙ちょうだいものだけでもない。生きている動物を世話することの厳しさ、喜び、哀しさが誌面から読み取れた。
だけど、この作品について、当時子供たちが互いに話題に上げることはなかったと思う。でも読んでいなかった訳ではない。むしろ熱意をもって読まれていた漫画であったと思う。
子供向けに描かれた作品ではあったが、それを受け止めることは出来ても、消化することが出来なかったのだと思う。糞尿に塗れながらも、檻のなかの動物たちを世話する飼育員たちの姿は、確実に子供たちに強い印象を与えた。
そして、その世話を受ける動物たちは、必ずしも人間の想いを受け止めてくれる訳ではない。そこには、ある種の残酷さがあったと思うが、子供にはそれをどう理解するべきなのか困惑するしかなかった。
犬や猫のような愛玩動物と違い、動物園の獣たちは人と馴れ合って生きていくことは、本来の姿ではない。その現実が、この漫画から感じ取れた時、子供たちが感じるある種の絶望感は、子供を大人への階段へと誘う。
今では忘れ去られた漫画だと思いますが、是非とも復刻して、子供たちに読ませて欲しい。私はそう願っています。