思い込みから脱却すると、けっこう幸せなことが待ち受けている。
寒くなってくると、私はスープを作りたがる。台所に独自の暖房がないので、冬場は台所仕事がつらい。でも、スープを煮込んでいると、自然と台所は暖かくなる。しかも、美味しそうな匂いが漂う暖かさである。
主に野菜スープを作ることが多い。作り方は思いっ切りシンプルである。まずニンニクを軽く炒める。香りがたってきたあたりで、みじん切りした玉ねぎを投入する。そして、弱火でじっくりと炒める。
その間に、他の野菜を刻みだす。プライベートではひどくアバウトな私は、少し油断すると冷蔵庫にはしなびた野菜が寝込んでいる。これを引っ張り出して、とにかく刻む。人参、大根、ブロッコリーの茎、芽が生えかけたジャガイモなど、腐っていない限り、とことん刻む。
玉ねぎがあめ色になってきたころあいに、他の野菜を入れて、中火にして炒める。途中でバターを入れて風味を付けることもよくやる。そしてホーロー鍋に移して、コンソメと共に弱火で煮込む。途中で、味加減をみて塩、胡椒を加えるだけ。
こんな大雑把なスープが出来上がる頃には、台所は暖かくなっている。さて、メインの料理にとりかかろう。
ところで、なんでも食べる私だが、同じ献立が続くのだけはダメというか、嫌なのだ。だから、この野菜スープも他の料理に転用することもよくやる。だいたい、シチューかカレーとなる。市販のルーを加えるだけの手抜き料理でもある。
牛肉を加えたり、芽キャベツを加えたりして作るシチューは美味しい。同様にカレーも作るが、そこで一工夫する。摩り下ろしたリンゴを加えたり、蜂蜜を入れるのは定番だ。
なかでも、大久保や上野のアジア食材を扱っている店で入手したカレー用のスパイスを少し混ぜて、これでカレーがパワーアップしたぜと一人、悦に入っていた。
ところがだ、ある日西原理恵子と料理研究家の枝元女史の料理本を読んでみて、ある一文に括目した。枝元先生が「今の市販のカレーのルーは超優秀で、なにも加えないのが一番美味しい」と。
そこで試してみた。本当に何も加えずに、プレーンカレーを作ってみた。いやはや驚いた。その時はハウス食品の中辛カレーを使ったが、確かに美味しかった。やはりメーカーの企業努力は凄いのだなと改めて痛感したものです。
ただ、私は野菜がゴロゴロ入ったカレーも大好きなので、これはこれで別に作ります。でもプレーンカレーを作る時は、野菜サラダを思いっ切り豪華にして両建てとしています。私のような単なる素人の料理好きの場合、なにも余計なことをしないのが一番美味しい。
少し悔しい気持ちもあるのですが、なにより美味しい幸せが一番なので、これはこれで納得しております。