さすがに驚かされたのが、日産のカルロス・ゴーン会長の逮捕でした。
先に書いておくと、有価証券報告書の虚実記載という明白な金融取引法違反に係る裁判は長引くでしょう。つまり今の段階では容疑者であって、確定ではないことは覚えておくべきでしょう。
それはさておき、どうも日産側に同情的な報道が多いので、少し釘を刺しておきたい私は、間違いなく天邪鬼。
ゴーン以前の日産は、技術力は高いが、売れる車を作るのが苦手な会社でした。当時の日産の車を、私は63点の車だと馬鹿にしていました。基本的な技術力の高さは分かるのですが、それを商品としてまとめるのが下手くそ。
なんというか、多数決で10人中6人が賛成したから作っちゃいました。そんな車が多かった。会社が大きくなったせいか、役員の数ばかり増えて、派閥争いに傾唐オて、本来の自動車作りがお座なりになっている。
そんな印象が拭いきれないダメ会社でした。そして、それに輪をかけてダメだったのが、労働組合天国であったことです。日産の労働組合の委員長といえば、陰で王様呼ばわりされるほどの権力者でした。
今にして思うとヘンな話ですが、会社で業務に頑張るよりも、労働組合に専従して活動したほうが出世が早いと云われる始末。だから、組織が大きくなり、無駄な部門が増えても、それを整理できない。その結果、赤字が増え続けるダメ会社、それが日産だったのです。
その状況下で、日産建て直しの為に登場したのが、プロの経営者であるカルロス・ゴーンだったのです。
ゴーンによる強引なリストラは、これまで不可能とされたことを可能にしました。東京の村山工場を閉鎖し、かつてはドル箱の売れっ子サニーを廃車させ、数多くの工場で人員削減を実現。
労働組合との長年の因習を立ち切り、多過ぎる役員をカットできたのも、日本的な慣習に囚われないゴーン氏の果敢な決断あってこそです。間違いなくゴーン氏は日産の救世主であったのです。
私は歴史好きであり、多くの書物を読んできました。歴史上、多くの名君が輩出されましたが、最後まで名君であった人は、案外と少ないです。若い頃は新進気鋭の名政治家も、年老いて晩節を汚したことは珍しくありません。
権力は必ず腐敗する。
この警句は、現代にあっても通用することが、今回の事件で立証されてしまったのでしょう。名経営者であったゴーン氏も、その例外ではなく、むしろ権力に驕り、慢心によりその座から転落してしまったのです。
最後に一言。独裁者ゴーンを排除するため警察に売り、背中を刺すかたちで会社から追いやった現・日産の経営陣ですけど、いずれ強烈なしっぺ返しを喰らうと予測しています。
まだまだ騒動は続くと思いますよ。