ヌマンタの書斎

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ファントム無頼 原作・史村翔 作画・新谷かおる

2018-12-18 11:55:00 | 

週末にネットでニュースを閲覧していたら、某まとめサイトの記事にウンザリした。

トランプ大統領が、最新のF35戦闘機を100機購入したと日本へ感謝を述べていたそうだ。

おいおい、である。

F35の追加発注自体は、5年以上前に防衛庁(当時)で既に検討済みの話である。当時、トランプは民間人であり、この話はオバマ大統領の了解のもと、アメリカ国防省とも納得済みの話である。もちろん一括で払う訳ではなく、たしか10年くらいに分割して支払う計画であったはずだ。

ただでさえ高額なF35戦闘機であるから、とんでもないと思う方も少なくないだろうと思う。私もたしかに高額な支出だとは思う。でも、必要な支出であることは認めている。

日本は海に囲まれた列島である。細く長い列島は、防衛には不向きな地形である。それゆえにその防衛は、水際以前、海上こそが生命線である以上、制空権の確保は絶対条件だと云える。

如何にロシアやシナ、コリアが日本侵略を考えようと、制空権さえ押さえておけば、日本列島に直接侵攻するのは難しい。だからこそ戦後、日本は戦闘機の配備には多額の予算を投じてきた。

現在の主力戦闘機であるF15は、1980年代に実戦配備されて既に40年が経過している。名戦闘機としての名声は確固たるものがあるが、如何せん現在では一世代前の機体である。

ところが日本の航空自衛隊は、未だにF4を配備している。通称ファントムと云われた歴史的な(!)機体である。あのヴェトナム戦争時に活躍したことで知られている。ちなみに1960年代に実戦配備されたご老体であり、アメリカではとっくに現役引退である。

このF4ファントムは、世界で唯一日本だけがライセンス生産していたため、メンテナンスが優良であり、今も空を飛べる。余談だが退役したアメリカの戦闘機乗りたちは、日本に観光で遊びに来る楽しみの一つが、未だに空を飛んでいるファントムを観ることであるそうだ。かくも米軍パイロットたちから愛された名機であった。

ただ、あまりに古すぎる機体であり、早急に引退させて新型機に変える必要がある。だからこそ、F35の採用が5年前に検討されていただけである。国産の戦闘機開発が脳裏に浮かぶ方もあろうと思うが、性能的にも予算的にもF35以上は望めないと思う。

ところで、このご老体であるファントムを描いた漫画といえば、表題の作品に尽きると思う。

私が始めてファントムを見たのは、多分横田基地にある奴だと思うけど、流麗さとは程遠い武骨な機体であることに驚いた。輸送機や攻撃機ならいざ知らず、戦闘機たるもの、そのフォルムは優美であるべきだと思っていただけに、ファントムの武骨さは意外であった。

でも、この武骨なファントムは、本当に頑丈で信頼性の高い名機であった。旧・ソ連のミグを除けば、ジェット戦闘機で5400機あまりも生産されたのは、このファントムだけだ。

頑丈なだけでなく、航続距離も3千キロを超えており、空中給油さえ受ければ、パイロットの体力次第でいくらでも飛べると噂されたタフガイである。電子機器も今よりはるかに稚拙ではあったが、二人乗りにすることで多機能な任務をこなせる器用さもあった。

現在の戦闘機は、コンピューターの塊でもある。実際、F35の開発が長引いた最大の原因は、コンピューター・ソフトのバグ取りであったと云われているほどだ。このコンピューターを駆使したF35の統合戦闘能力は、未だその真価は明白ではないが、理論的には世界最強を謳ってもおかしくないほど。

実戦経験がほぼないので、これ以上は語るべき情報を持ち合わせていないが、100機を超えるF35を揃えたら、当分の間、日本の制空権の確保は安心だと思う。まァ、新型機だけに故障はかなりあるとも思いますけどね。

コンピューターの塊であるF35に比して、F4ファントムは人間の技量に頼る部分が多い。それだけに、パイロットとナビゲーターに重きを置いたこの漫画は面白かった。

後数年で引退確定のご老体であるから、今のうちに飛行している場面を目に焼き付けたいものである。それが叶わぬならば、せめてこの作品を読んで楽しみたいものです。

コメント (2)
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