懐かしい、食べてみて記憶をくすぐられた。
初めての海外旅行はハワイであった。そこのホテルの朝食バイキングで見つけたのが、カリカリに焼き上げたベーコンであった。コックさんがプレートの上で焼いたベーコンを皿に頂く。
席に戻って、さっそく食べた時の印象が懐かしいであったことに驚いた。ただ、どこで食べた味なのかが思い出せない。はっきり分るのは、日本のスーパーなどで売られているベーコンとは違うことであった。
ベーコンとは、本来は豚の肉を燻製したものであるが、日本のものは加工したうえに加熱処理がしてある。一方、アメリカのベーコンは非加熱状態で売られているので、脂身の量が違う。この違いがカリカリに焼いた時に現れる。
日本のベーコンだと、どうしてもこのようなカリカリにはならない。私はあれこれ工夫して、水から蒸し焼きにするような形で焼けば、カリカリに出来ることが分かったが、これはかなり面倒な調理となる。とても忙しい朝食時には出来ない。
アメリカのベーコンは一時期、コストコに売っていたと思うが、現在は入手できない。私の自宅近辺には売っていないのだ。多分、福生か横須賀あたりを探せばありそうな気がする。
ところで私は何時、このカリカリのベーコンを食べたのであろうか。少なくても母が作っていた覚えはない。だとすると、おそらく父だろう。アメリカにかぶれていた父は、わざわざ米軍払い下げ住宅を借りるほどであり、一緒に暮らしていた頃には、いろいろと珍しいものを買ってきた。
記憶はうろ覚えだが、立川米軍基地内で行われていた草レースの際に、あのカリカリ・ベーコンを食べたのではないかと思う。あの頃の米軍基地内では、休養のためヴェトナムからやってきた米兵たち相手のイベントがよく行われていた。
その一つに市販車を使った周回レースがあり、タイヤの供給で仕事をとった父が、私たちを連れて米軍基地内へ連れて行ってくれた時だと思う。私はそこでソフトクリームや、巨大なサンドイッチ、バケツ並のケースに入ったポテト、そしてコーラやファンタを飲み食いした。
私が覚えている数少ない父の家族サービスであった。
私は、母がカリカリベーコンを作らないのは、父への反発かと思っていたが、単にアメリカのベーコンが売っていなかっただけなのだろう。私はけっこう好きで、食べたくて母にリクエストしたけど、いつも誤魔化された。
ちなみにヨーロッパへ旅行した時も、ホテルの朝食でカリカリベーコンを食べたことがあるから、多分日本のベーコンのほうが特殊みたいだ。どんな規制があるのか知らないが、日本でもアメリカ製のベーコンを気軽に買えるようになって欲しいですね。