ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

カムチャッカの悲劇

2021-05-11 11:42:00 | 社会・政治・一般

私は子供の頃から生き物好きであった。

だから「ムツゴロウのゆかいな仲間たち」とか「ダーウィンが来た」、「ワクワク動物ランド」は良く視ていた。近年だとTBSの「動物奇想天外」だったが、結局この番組を最後に地上波TVの動物番組は視なくなった。

その原因が同番組でも人気のコーナーをもっていた写真家星野道夫氏のクマによる惨殺事件である。

当初は、周囲が止めたにもかかわらず、テントでの一人撮影に拘った星野氏が結局クマに襲われての不幸な事故死であったとの報であった。番組内での事故であり、詳細な報告書でその裏付けがされたこともあり、星野氏を誹謗する声が上がったほどである。

私も当初は、写真家がより効果的な映像に拘り、その結果の無謀な事故死であったと思っていた。

しかし、徐々にどうやらTBSの事故報告書とは異なる事実があることが分かってきた。アラスカ在住20年の星野氏は、野生のクマに関してはスペシャリストであり、多くの写真やエッセーなどを残している。断じて功名心だけの写真家ではない。

亡くなったのはロシア領カムチャッカ半島ではあるが、アラスカのクマとは近縁であり、クマの生態に詳しい星野氏がなぜに襲われたのか。彼をよく知る人々からの疑問の声が上がったのが端緒であったと思う。

その結果、TBSの報告書に齟齬があることが判明した。まず野外でのテント撮影に拘った星野氏だが、状況が報告書とは異なることが分かった。実は同時期にアメリカ人の写真家も同地を撮影に訪れている。

この写真家の証言で、近くのロッジにはTBSスタッフが寝泊まりする部屋があり、そこは確かに安全だった。しかし、その部屋は高額な撮影機材で一杯で、もう寝泊りする人を増やすことが出来ないほどだったこと

実際、テント近くを徘徊するクマを浮黷スアメリカ人写真家が避難することも出来ず、彼はロッジの屋根に上って難を逃れている。このことは、報告書には記載されていない。彼の話によると、星野はスタッフに迷惑をかけないため、敢えてテントに泊まっていたらしいのだ。

更に重要な情報が漏れていた。星野氏が大丈夫だと判断した理由の一つは、クマは本来人間を浮黷驍烽フであり、むやみに近づいてこないという長年の経験に裏付けられた判断であった。

しかし、このカムチャッカのロッジ近辺のクマは、ロシアの放送局(TBSとの交渉窓口でもある)のオーナーが餌付けしていたクマであった。つまり、あまり人を浮黷ネいクマであることを、星野氏は知らなかった。

また星野氏が大丈夫だと判断したもう一つの根拠は、その撮影時期がサーモンの遡上時期であり、クマは満腹なはずだとの思い込みがあった。ところが、実際にはその年はサーモンの不漁の年であり、クマは満腹どころか飢えていた。この情報はロシア人ガイドは知っていたが、星野氏が知っていたかどうかは現時点でも不明であり、当然にTBSの報告書でも触れていない。

TBSの報告書では、まるで功名心に駆られた写真家の安直な判断が事故死を招いたと読めてしまう。しかし、このことに疑問を感じた星野氏の友人たちが調べた結果、報告書に記載されていない上記の事実が発覚した。

これって、避けられた事故だったのではないか。

そんな疑念を抱いた人が多いのも当然だと思う。しかし、星野氏の遺族側がこれ以上、騒ぎが大きくなるのを厭い、追求はここで終わっている。

いろいろと思うことはあるが、真実は闇の彼方である。私はこの件で、嫌になってしまって同番組を見ることを止めてしまった。遺族が追求しない以上、野次馬が偉そうに誹謗はしませんけど、組織の保身を優先した報告書になんの価値があるのか、私は疑問ですね。

GW中に図書館で、久々に星野氏のアラスカを撮影した写真集を見かけたので、ついつい思い出してしまった次第。

同時に言いたい。野性動物にエサをやるのを止めろとね。未だにいるんだよね、サルやクマに餌をやる馬鹿な観光客は。野性動物と人との間には、安全な距離を置くことこそが、両者が共存できる唯一の方法なのです。

コメント
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