ヌマンタの書斎

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サラリーマンの節税 その一

2022-10-13 11:54:43 | 経済・金融・税制
先進国中、もっとも経済統計数値上貧しいのがイタリアだ。

しかし、実際にイタリアへ旅行したり、あるいは仕事で駐在したり、暮らしたりした経験のある人から聞くとかなりあまり貧しさは感じられない。裕福ではなくとも、恵まれた暮らしぶりに感心することが多いという。

種を明かせば、イタリアは統計数値に現れない豊かさがある。それが副業による稼ぎである。決して安いとはいえないイタリアの税制の目を掻い潜って稼ぐ庶民の知恵である。一応書いておくが、これは脱法行為なのだが、「赤信号みんなで渡れば怖くない」を実践しているだけだ。バレれば有罪である。

実のところ、これは先進国共通の現象となりつつある。既にアメリカなどは夫婦共稼ぎが当然で、その上で副業をするのが珍しくない。もっといえば、そのくらい稼がなければ人並みの暮らしが難しくなっている。その上、アメリカは脱税に厳しいので、しっかりと申告納税しているから、直さら厳しい。

余談だが、脱税の枠組み作りの世界的中心地はアメリカとなって久しい。それも富裕階級限定なので、アメリカでは中産階級はますます数を減らしている。

これを一言で言えば、中産階級の貧困化という。その根幹的原因は、超富裕階級による富の独占である。それは人件費の安い発展途上国へ先進国の仕事を移転させて、その利益を資本家階級が独占することでもある。

必然的にこれまで国家を支えてきた多数派であるはずの中産階級は貧困化する。その不満をそらすために多くの先進国では、副業が容認されるようになった。

日本ではバブル崩壊後、大企業のサラリーマン、OLであっても、夜のアルバイトをする人が続出した。当時は(今もだが)社内規則等で副業禁止を謳う企業が大半であったが、景気悪化を受けて黙認されていた。

日本政府でもサラリーマンの副業を認める方向であれこれ審議がされていたが、特に大企業からは反対意見が多く未だに良くて黙認、大半は禁止となっている。ただし例外もあって、本業に差し支えの無い範囲での副業を認めるケースが増えた。

特に新型コロナ禍のなかで自宅勤務形態が増えたことも相まって、副業をする給与所得者(サラリーマン、OL)が増えてきた。それに伴って怪しい広告も増えた。

冷静に考えれば分かると思うが、本業があっての副業であり、副業でそれほど稼げることはない。本業よりも稼ぎが多ければ、本業を止めるのが本筋だ。まァ、将来の安定度を考えて敢えて並立させるケースもあるが、基本的に副業で大きく稼げることは稀だ。

そこである業者が妙な仕組みを売り出した。副業で税金を安くしようと広告を打ってきた。妙な話である、本業に副業を足せば所得はアップするので税金は増えるはずである。

しかし、税制上認められた損益通算という仕組みを使えば合法的に節税が出来る。簡単に言えば、給与所得に加えてアパート経営などによる不動産所得を合算して総所得を算定し税金は計算される。

その不動産所得が赤字であった場合は、給与所得と通算することにより結果的に総所得を減算できる。必然として税金は安くなり確定申告により還付される。この節税プランの歴史は長い。その代表が不動産賃貸経営だった。とりわけマンション経営による不動産所得で、減価償却を定率法にすることにより赤字にする手法は王道であった。

過去形なのは、この定率法選定が平成10年以降建物に適用できなくなったからだ。もっとも損益通算という仕組み自体は存続している。そのせいか、軽量鉄骨造りのワンルームマンションによる不動産所得の計上による節税プランは今も販売されている。

実はこれには問題があった。それは賃貸収入から減価償却費を引くだけでは決して赤字にならないからだ。そこで販売業者は必要経費を過剰に計上することで、無理やり赤字を作る手法を奨めていた。

私も何件かこの手の確定申告の相談を受けたことがあるが、私が計算しなおすとほぼ100%黒字である。なぜなら必要経費のなかに家事費が多く紛れていたからだ。必要経費とは文字通り収入を得るために必要な経費である。固定資産税、そのマンションにかかる損害保険、修繕費などで、それ以外の経費はほとんどかからない。

ところが赤字にする目的で自宅の食糧費や遊行費などを必要経費に紛れ込ませている。これはダメである。私は資産形成の手段の一つとして、不動産経営は推奨されるべきものだと考えているが、それは少額でも長年儲かるからで、少なくとも銀行預金金利よりも利回りは良いからだ。

本質的に赤字にはなりにくい業種が不動産経営のはずだ。もちろん立地条件や景気の後退による地域の経済悪化など外的要因による赤字はあるが、場所と管理、投下資本の過剰などを慎重に考案すれば、むしろ副業として好ましいものだ。だから赤字になる不動産所得は根本的に問題があると思う。

上で述べたように減価償却の方法が建物について定額法に限定されて以降、かなり節税プランとして販売されることは減っている。それでも今もある程度残っているのは、売れ残りのワンルームマンションがかなりあるからだと推測している。

正直、自分の目でみて、周囲の状況、将来の見通し、資金計画などを慎重に考慮した結果出ない限り、業者の営業トークに乗せられることはお薦めしません。

この伝統的な節税プランが効力を失してきたせいか、新たな企画が営業されるようになりました。長くなるので次回、説明します。
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