ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

東京卍リベンジャーズ 和久井健

2022-11-24 12:24:29 | 
私が十代の頃は、暴走族と云われる若者たちの全盛期であった。

美化するつもりはないが、少し前までは学生運動に血気盛んであったはずの若者たちの熱気は、この暴走行為に転嫁したのではないかと思うほど、暴走族に加わる若者たちは多かった。

私は際どかったと思っている。喧嘩は弱いけどオートバイは好きだった。元々チャリンコ暴走族と呼ばれるような乱暴な自転車乗りであったから、その先にオートバイが見えていた。

中学の頃のクラスメイトや小学校の幼馴染たちがこぞって暴走族に入り始めたのを横目に、私は246号線を避けて裏道を自転車で走った。私は裏切り者であった。中卒で働くはずが、いつのまにやら高校進学、しかも普通科を目指すことになった。

まさかそのことが裏切りになるなんて思ってもいなかった。だがもう引くことは出来なかった。掃除など下働きで小銭を稼がせてもらった鉄火場を仕切る代貸しのおじさんには「もう、戻ってくるなよ」と釘を刺されていた。

裏切り者へのイジメを周囲の助けもあって切り抜けたことも逆に負い目となって、もう悪い子には戻れなくなっていた。だから集合マフラーを付けて爆音を轟かせるバイクに心惹かれながらも、私は目を背けていた。

私がバイトをしていた三宿交差点の吉野家の二階には、かつての悪ガキ仲間たちが集う喫茶店兼スナックがあり、賑やかに騒いでいたのは知っていた。休憩時、野球部のKやサッカー部のIから誘われることはあった。彼らは裏切りの件とは無関係なので、誘いを断るのは辛かった。でも初心貫徹と思い断腸の思いで断わった。

いつしか山登りに傾倒するようになり、バイクへの関心は薄れた。それでも世間からは白い目で見られがちな暴走族の連中には、ある種の共感めいた気持ちは持っていた。

だからだと思うが、表題の漫画もコンビニでの立ち読みながら、けっこう読んでいた。途中仕事の多忙さや度重なる入院で途切れているが、いずれ漫画喫茶でまとめ読みするつもりだ。

読んでいる最中から、私はずっと祈り続けた。どうかハッピーエンドで終えて欲しい、と。武ミッチもマイキーも笑顔でエンディングを迎えて欲しいと願っていた。

なぜなら現実はそうでもないことを知っていたからだ。シンナーや飲酒で事故って死んだ奴もいた。ヤクザな世界に身を置いて消息不明になった奴もいる。バブル期に一時華やかに意気っていたが、バブルの崩壊と共に闇に消えた奴もいる。だから心配だった。

幸い堅気に戻れた奴もいる。家族を作り貧しいながらも幸せな暮らしをしている奴もいる。ただ、どちらかといえば堅気と裏社会の境界線で生きている奴も少なくない。特に芸能関係とか、興行、飲食と一見まともそうで実は危うい業界に身を置く奴もいる。

でもみんな元気ならば、それでいいさ。本当にそう願っている。

人気漫画として一世を風靡したこの作品もようやくエンディングを迎えた。未回収の伏線や矛盾点などはけっこうあるが、私はあの笑顔溢れるエンディングに満足している。そうでない現実を知っているからこそ、そうあって欲しいからだ。
コメント (2)
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