今月、第二週の週末に、みずほ銀行が3度目のシステム改修を行った。
その期間、ATMなどが利用できない訳だから、みずほ銀行に口座をお持ちの方は不便を強いられたと思う。この社内金融システムの統合改変は、過去にも行われているのだが、未だに完全ではない。
みずほ銀行はこの件に関して、凄まじく神経質に情報漏えいを禁じているので、本当のところは分からないのだが、おそらく今回もシステム上のバグを完全には消せなかったのではないかと私は疑っている。
これほど利用者に不便を強いる、みずほ銀行の失態なのだが、金融庁は表向き静観を決め込んでいる・・・らしい。でも内心は相当に葛藤しているだろうと、意地の悪い私は邪推している。
先に結論を書いてしまうと、このシステム統合の失態の大元は、旧・大蔵省にある。
大蔵省が過熱した不動産市場と株式市場を落ち着かせようと考えて発した「総量規制」は、日本の高度成長を支えてきた土地神話を破壊してしまった。土地の値段が下がるとう現実が、過熱した経済を一気に冷え込ませた。
本来はソフトランディングを目的としていた総量規制なのだが、土地の含み益により企業価値を過大に見積もる日本の金融市場の歪みを直視してこなかったせいで、結果的にハードランディングとなってしまった。
とりわけ困ったのが住専である。農協から多額の出資を受け入れている住専が破綻したら、与党自民党の票田である地方農家への打撃は避けられない。住専救済のため自民党が動いた。
しかし、当時の都市銀行はバブル崩壊にアップアップしており、とてもじゃないが住専救済に金を出す余裕がなかった。大事な天下り先である銀行を救済するため、霞が関もまた動いた。
それがメガバンクである。要するに体力の弱った銀行を統合させて、住専を救済させた。あの頃の銀行は、大蔵省に箸の上げ下げの作法さえお伺いを立てるほどであったから、逆らえる訳がない。
でも、本音ではメガバンク構想なんて嫌だった。渋る銀行に対し、最後の押しの一手がペイオフ(銀行口座閉鎖)であった。この恫喝に怖気づいた銀行は、嫌々ながらも統合に応じた。
かくして世界最大規模のメガバンクが誕生した。
でも、元々銀行自身の希望ではない。嫌々、渋々の統合であったので、統合後も元の銀行の体質が色濃く残った。その代表ともいえるのが行内の金融管理統合システムであった。
実を言えば、当時の銀行の頭取クラスの人間で、自分の銀行の金融システムを完全に理解している人はいなかった。部下任せであっただけではない。その部下たちでも複雑なコンピューターの仕組み、運用についてのスペシャリストは極めて少数であった。
敢えて暴言交じりで云わせてもらうと、金融システム部門はSE天国であった。
そして困ったことに、当時のSEには上司がコンピューターをよく理解していないことを分かっていた。そのせいで、銀行であって、銀行でないような雰囲気の漂う特殊な部署であった。
皆が皆、とは言わないが、SEには他人とのコミュニケーション能力にいささか問題のある人材が少なくなかった。だから、メガバンクとなり、いざシステムの統合という実務段階に入った時の混乱はひどかった。
銀行は民間企業ではあるが、その企業体質は官庁に近い。肩書と書類で組織が動く世界である。しかし、その中にあって異端の部門がSEであった。他の部署と異なり、人事異動が難しく(SEの仕事は特殊業務だ)、長年居座っているような人材がゴロゴロいる。
他の部署ならば、書類一枚で組織が変えられる。肩書さえあれば、部下の動きは自由自在である。しかし、コンピューター・システム部門だけは、そうではなかった。
私が小耳に挟んだ話では、金融庁でも事態を重く見て、何度となく指導に訪れている。しかし、事務仕事のエリートである金融庁の役人でも、このコンピューター・システムでは門外漢であり、煙に巻かれて渋々退散するしかなかった。
そして、役人によくあることだが、自らの失態は決して認めないがゆえに、根本的な問題は先送りされ続けた。
旧・富士、旧・第一勧銀 そして旧・興銀と三行を無理やりくっつけたみずほ銀行の金融システム統合は、かくして今日に至るまで迷走を続けている。
元々の大蔵省の銀行統合構想に、このような事態は想定されていなかった。これはコンピューターによる金融システム管理を理解していなかった霞が関のエリートの失態だと、私は考えています。
コンピューター導入以前ならば、いかなるメガバンクも役人の思うがままに作れたのでしょうけどね。そして、言うまでもありませんけど、霞が関のお偉方で、誰一人として、この政策の失態(部分的ではあるのでしょうけど)について、責任を問われたり、マスコミから批難されたものはおりません。
それにしても、みずほ銀行。もう大丈夫ですよねぇ・・・(あたしゃ、信じていますよ、必ずバグがある方に、ですけど)
昔SEとしてシステム構築の現場にいました~
システム改変の度に屍類々でした~
現場も酷いものでした~
今回のみずほ銀行のシステム改変ですが、まだやってるんかい!とツッコミました。
日本の場合、経営者、エリート官僚は圧涛Iに文系有利です。だからコンピューターのシステムを十分に理解していなかったことが、金融システムの統合失敗の最大の原因だと思います。
指示するだけで、責任取らない上司なんて最悪ですよ。まァ、責任回避が上手だからこそ出世できたのでしょうけどね。