ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

会社法2 資本金

2006-06-07 12:31:05 | 経済・金融・税制
今回の会社法改正で、一番変わったと考えられるのが資本金。資本に対する考え方が、凄まじく変わりました。

資本金とは、従来事業を開始する際の元手を意味していました。商売に元手がかかるのは当然です。その初期投下資金を示していたのが資本金でした。この金額が多ければ多いほど、信用度は高いと判断されていました。

この考え方の背景にあるのは、債権者保護です。元手(資本)が十分にあれば、当然その事業者(法人)の財政的安定性は高いと考えて、債権者が不利益を被る可能性は低いと予測できるからです。しかし、本当にそうでしょうか?この疑問が、今回の会社法改正に取り込まれました。

会社の財政状態は、総資産から負債を控除した純資産(正味資本)の金額で判断できます。この純資産の金額が大きければ、債権者(負債の相手先)が不払い等の被害を受ける可能性は低いはずです。つまり、現実問題として資本金の多寡ではなく、資本の部で表示される「純資産の金額」こそが、企業の信用力を示しているわけです。

ちなみに、従来「資産」と「負債」「資本の部」で表示されていた貸借対照表は、今後「資本の部」と呼ばず、「純資産の部」と呼ぶようになります。

この資本の部(今後は純資産の部)は、株主からの拠出である「資本金」「資本準備金」と、利益の累積である「利益準備金」「当期未処分利益」等として区分されて表示してきました。ですが、これからは、両者の区分は曖昧となり、極端な話資本金を取り崩しての配当が出来るようになります。ただし、税法の考え方は未だ変わっていませんから、税制の縛りであまりに勝手なことは出来ないと思います。

既に時限立法で、資本金1円の会社設立が認められてきましたが、これも資本金の最低限度額の縛りが無くなったため、なんと資本の部がマイナス、つまり資本金が一円以下でも会社は成立することになりました。・・・なんかヘンですね。政府の説明では、新規開業を促進するために、このような改正をしたとのことですが、率直に言ってあまり感心できるものではない。10年前の最低資本金の増額は、いったい何だったのだ?

資本金があまりに少ないと、債権者保護が十分に出来ないことへの配慮から、純資産の額が300万円以上ないと配当は出来ないと規制をかけています。これは従来の有限会社の最低資本金からひっぱて来た数字でしょうが、これで本当にいいのか?

もう少し深く考えてみたいと思います(次回に続きます)


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会社法1 概要と既存の有限会社

2006-06-06 09:28:16 | 経済・金融・税制
今年、5月より新・会社法が施行されました。法案自体は昨年6月に国会で成立していましたが、詳しい内容を定めた法務省令の公表が大きく遅れていて、私らも困っているところです。

まだ勉強中ですが、これまで印象を一言で言うと、アメリカの影響が非常に強まった、です。

明治維新により、近代国家への道を踏み出した日本が選択したものの一つに、ヨーロッパ型の法治国家の建設がありました。民法はナポレオン法典(フランス)に、商法はプロシア商法典にと、本来日本の社会習慣、制度を立法化するべきにも関わらず、法律そのものを末オて導入し、長い歳月をかけて法と社会をすり合わせていくという、前代未聞の国家建設を育んできたのが日本です。

しかし、20世紀に入りアメリカの影響を強く受けるようになり、従来のヨーロッパ型(大陸型とも言います)から、アメリカ型の法体系へと少しづつ変化してきました。なかでも、今回の商法改正、会社法新設は、きわめてアメリカ寄りのものとなっています。

極めて大きな変化ですので、先月くらいから会社法への否定的な意見が新聞紙面を、ときおり賑わせているようです。正直、従来との整合性はあまり重視されていない会社法ですから、拒否反応が起こるのも無理ないところがあります。

そうは言っても法は法。既に実施されているのです。私の事務所でも、既に新会社法のもとでの、新会社設立の仕事も行っています。正直手探り状態なのですが、メリット、デメリット双方あり、一概に否定もしませんが、やはり困惑は避けられない。

ここ暫く、何回かに分けて新・会社法について、私なりの見解を述べていきたいと思います。

まず、従来の商法は、どちらかといえば大会社向けのものでした。しかし、新・会社法は中小企業をメインとした部分が非常に多い。日本の会社の9割は、中小企業ですから、ある意味実情に即したものを目指していると思います。もっといえば、旧・商法の有限会社法編のかなりの部分を、今回の新・会社法にもってきたと言ってもいいかもしれません。

なお、既にある有限会社は「特例有限会社」として半永久的に存在することになります。法律上は、株式会社としての扱いになりますが、有限会社のメリットも残されています。実は非常にオイシイ。
もし、現在休眠中の有限会社をお持ちの方がいるようでしたら、是非大事にしてほしいと思います。
使い方によっては、非常に便利で、新会社法下での株式会社よりも、使い勝手は良いのではないかと考えています。旧・有限会社のメリット、デメリットは以下のとおりです。

 メリット ① 役員の任期規制がない。つまり株式会社なら2年に一回ある改選登記費用がかからない。
      ② 決算公告義務がない。
 デメリット① 株式よりも格が下と見られる
      ② M&Aには向かない

既に長年有限会社としてやってきた実績がある会社には、デメリット①は関係ないし、そもそもM&Aを考えていない経営者が大半なので、つまるところデメリットはなく、従来の有限会社のままで良いが結論です。
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「わくわくワーキング」 おおはしるい

2006-06-05 17:31:23 | 
私は怠けるのが大好き。ゴロゴロと無為の時間を過ごすのも好きだし、目的もなくスタスタと散歩するのも好き。長編小説の世界にどっぷり浸かるのも好きだが、ちょっと手が空いた時間に四コマ漫画で時間を過ごすのも好き。

最近の四コマ漫画のお気に入りが、表題の漫画です。仕事一筋のキャリアウーマンが、癒し系の新人男性社員にメロメロになり、ドタバタ騒ぎを起こす。ただそれだけなのですが、なんとなく微笑ましく、ついつい読んでしまいます。

この作者、他にも「会計チーフはユウウツ」「夫婦な生活」などを発表してますが、実体験に基づくと思えるエピソード満載で、なんとなく身近にありそうな話題を上手にまとめています。サラリーマンやOLを登場人物にした四コマ漫画は、案外毒の強いものや、度が過ぎたものが多いのですが、この作者は、そのあたりのバランスがとてもよく、安心して楽しめます。

いや・・・月末になると仕事が立て込んで来て、けっこうストレス溜まるのですが、このようなホノボノした漫画は気分転換には最適です。気が張り詰めた状態から抜け出すのって、私はけっこう苦手なので、気が緩むような効果がある四コマ漫画を上手に利用しています。

ただ、この作者は現在お子さんをお持ちの主婦なので、なかなか続編が出ない。それがちょっと疎ましい。どうなるんだろう、この三角関係・・・。まあ、修羅場にはなりそうもないけどね。
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社会保険庁の不正

2006-06-03 16:19:11 | 社会・政治・一般
社会保険庁の不正問題ですが、気になったのが民主党の対応。

民間の保険会社から社会保険庁のトップとなった村瀬長官の責任を追及していたようです。馬鹿ですね、民主党は。事の是非を判断する脳みそが欠如している。似非ジャーナリストの偽メールに騙されるのも当然の愚かさです。

これまで散々、国民から預かった社会保険料を無駄に浪費していた社会保険庁のグウタラぶりを刷新する目的で、わざわざ民間から受け入れた人事であったはず。民間並みに厳しく仕事をさせようとした村瀬長官を、今回の不祥事に乗じて排除しようとする、小役人の企みに気が付かないおバカな民主党。

こんなアホどもが政権与党となったら、官僚の操り人形化するのが目に見えています。健全な野党の存在が、政治を浄化するという論理は極めて魅力的ですが、民主党がこの様では先が思いやられる。

ついでだから書きますが、今回の不正の原因は国民年金の不払いの増加です。なぜ払う人が減ったのかといえば、それは年金不信でしょう。既に国民から預かった年金保険料の運用だけでは、将来はおろか現在でも支払い財源が不足していることを、国民から見透かされているのです。

現在は税金による不足分の補てんで誤魔化していますが、これって要は保険制度の破綻を意味しているはず。もう既に国民年金制度は破綻しているのです。民間の保険会社なら、とっくに破産処理の対象でしょう。

いつまで、利権にしがみ付く厚生官僚及びその族議員を生かして置くつもりなのでしょうね。国民年金制度の維持なら、たとえ増税しても維持すべきと思いますが、社会保険庁及び厚生労働省を蔓延らす気は、私にはありません。

民主党に期待したいのですが、これじゃあ投票する気になれん。馬鹿なパフォーマンスばかりしてないで、国民が信頼できる姿勢を示して欲しいものです。
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「コナンと髑髏の都」 ロバート・E・ハワード

2006-06-02 09:50:28 | 
1920年代の頃から安価なパルプ紙を使って製本された雑誌が、アメリカで大量に売られていました。カーボーイものや、SF小説、そして剣と魔法の物語などが中心の若者向けの雑誌でした。通称「パルプ・マガジン」、そのなかで人気を博したのが表題の野蛮人コナンの冒険譚でした。

筋肉ムキムキのアーノルド・シュワルツネッガーが主演の映画のほうが、現在では有名かもしれません。悪くないですよ、シュワツルネッガーのコナン役も、でも原作の雰囲気からすると、もう少し暗い野蛮さと、狡猾さが欲しかった。やっぱり、私は小説のほうが好き。

なかでも気に入っているのが、小説のなかでコナンが信仰している「クロムの神」様。この神様は、人間が祈ろうと、寄付をしようと、生贄を差し出そうと意に留めない。あくまで、その人間の行いを看ているだけ。人間が死んだ後で、その行いを計り、審判を下すだけ。

だからコナンは、苦しい時も、危ない時も神に祈ったりしない。自分を助けるは、あくまで自分のみの徹底したリアリスト。そんな不遜な野蛮人であるから、敵役の神官やら魔術師やらが駆使する魔人だろうと、神の眷属であろうと戦う時は、ためらうことなく戦い抜く。そして勝ち目がなければ、さっさと逃げ出す。

私は神が、あるいは神を騙る宗教組織の人間が、人間の世界に干渉することが嫌。神は神の世界で君臨していれば良し。いちいち人間のすることに口出すな。人間も安易に神にすがるな。人として生き、人として死んでいけばいい。矛盾だらけの世の中で、限りある命のあるままに、己が正しいと信じた人生を歩めばいい。そして、死という避けられぬ到達点に達したならば、後は神に己を委ねればいい。そう思っている。

真摯に宗教活動に勤しむ人からすれば、傲慢不遜と言われても仕方のない私の考えの原点は、実のところコナンの生き方に影響されてます。良いか悪いか分かりませんが、いずれ死ねば分かること。それで十分です。

なお、コナンの日本語版は早川書房と創元推理文庫と題名、組合せ等バラバラで刊行されてます。訳者も違うため微妙に表現が異なります。またイラストも違うため、ことなる雰囲気が楽しめます・・・まあ、好いのだけれど、版権どうなってるんだ? 例によって早川版は古本屋でしか手に入りません。創元版も似たようなものですが、最近ダイジェスト版を刊行したようです。
コメント (20)
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