ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「少女ホリーの埋もれた怒り」 ジョナサン・ケラーマン

2006-06-15 09:35:33 | 

臨床小児心理医、アレックス・デラウエアの素人探偵ものです。

若くして悲惨な子供たちの診療に多く関わってきたが故に、心が燃え尽きてしまい第一線から退いてしまった主人公。のんびり余生(まだ若いのですがね)を過ごしたかった主人公ですが、持ち前の正義感から、心の闇を解きほぐして犯罪を暴きだす。

心理学者を主人公にした推理小説はいくつかありますが、心理科の医者を主人公にもってくるところが、実にアメリカ的です。

この作品では、アメリカの市民社会の裏面、とりわけ家庭内の悲劇、虐待が取り上げられることが多く、読んでいて辛くなるほどです。裕福な家庭に潜む歪んだ愛情や、貧しさゆえに壊れていく愛情。歪んだ愛情が引き起こす、暗く陰惨な悲劇の数々。その暗さを救っているのは、主人公の前向きな姿勢です。それと相方である、ホモでマッチョな刑事(二人の関係はノーマル)と、自立した女性であるが故になかなか素直になれないGFなど多彩な友人たちが、作品に明るさ、落ち着きを与えています。

本題から外れますが(毎度ですが・・・)、このシリーズを読んでいて驚いたのが「SUSHI」、つまりお寿司。主人公はお腹が空いたからと、ダウンタウンに気軽に寿司を食べにいく場面があります。もはやアメリカ人には、寿司はタコスや中華と同様日常生活に入っているのだと感心しました。

ここ数年では、一番気に入っているアメリカの推理小説ですが、最近は続編があまり出ないのが残念です。作者ケラーマンの奥様も、フェイ・ケラーマンとして小説を書いているので、今度はそちらを読んでみようと思っています。

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