日本の歴史遺産の一つ、高松塚古墳の壁画破損事件はとても残念なものでした。
呆れて仕方がないのが、破損の事実を公表せず内々に処理しようとしたことでしょう。人事査定が減点主義の役人らしい対処だと思いますが、要は身内を庇っただけ。職業倫理というか国家公務員としての職務を忘れた、実に情けないものです。
目的をもって作られた組織が、その目的の遂行よりも、組織の維持・拡大に捕らわれてしまっているが故の愚行だと思います。別に官僚組織に限らず、民間の組織(会社や労働組合、宗教法人など)にもしばしば見られることです。
もう一つ呆れたのが、カビに対する防護措置の欠如です。とても専門家のやることではない。これも事情は推測できます。つまり前例がなかったがゆえに、予算が組まれてなかったのでしょう。役所というのは、前例がないと判断が出来ない傾向が極めて強い。おまけに専門職よりも総合職を優遇する組織になっていますから、専門知識のないものが高度な判断を下す。旧・文部省にはこの傾向が極めて強かったから、現場の人間の意見が上に通ってなかったのでしょう。
おそらくは、このような事態が再発しないよう、組織を挙げて改善策を練っていることでしょう。もっともその内容は、このような不祥事が表ざたにならないようにすること。そして、今回の事件が予算の削減にならないよう根回しする事や、民間からの監視の排除といった不健全な対応になる可能性は極めて高いと思います。
私のひねくれた推測が当たらなければ良いと、祈らずにいられません。役人は替えがいくらでも見つかりますが、破損した歴史遺産に替えはありませんからね。