みんな、ノってるかい~
コンサート会場やライブハウスで時折聞かされる科白だ。バッカじゃないのかと思っている。観客がのっているか、どうか、それくらい分らないのか。いや、一々訊かねばならぬほど不安なのか。
第一、のりって奴は強要されるものではなかろう。プロならば、自らの実力で聴衆をわかしてみろと言いたい。本当に素晴らしい歌唱、演奏ならば、観客は自然に身体を動かし、あふれる感動を動作で表現するものだ。
だからノリを強要されるような科白を聞かされると、(そんなヘタな演奏でノレるか、アホたれが)と心のうちで毒づいていた。
なんで口に出さないのかといえば、そんなヘタな演奏でも楽しんでいる奴らの気分を害するのも悪いと思っていたからだ。ノレない演奏だからこそ、無理にでもノリを演じることで自ら楽しむ人がいることも分っている。私に彼らの楽しみを邪魔する権利はない。第一、本当に嫌なら会場を出ればいいだけだ。
要するに私はノリが悪い。いつの頃からかは分らない。少なくても子供の頃は、盆踊りでも神輿担ぎでも、簡単にノッていたはずだから、思春期以降だと思う。
一つ、心当たりがある。それが高橋真梨子のライブだった。
多分、昭和40年代後半から50年代頃だと思う。人気グループであったペドロ&カプリシャスのリードボーカルだった高橋真梨子が脱退してソロになった。
事情は知らないが、そのため高橋真梨子はメジャーな場所から姿を消して、小さなライブハウスや大学の学園祭などに多く出演していた。
当時私は、世田谷の三軒茶屋という街に住んでいたが、そこは大学がいくつもある学生街でもあり、学園祭のシーズンになるとャXターが電柱に張られ、実に華やかな雰囲気だった。
私もその雰囲気にまかれて、近所の大学の学園祭に入り込んでいた。教会のシスターにもらったチケットで高橋真梨子のライブを聴くためだった。もっとも、その時は高橋真梨子が誰なのか分っていなかった。
大学の講堂でそのライブは行われた。聴いてみてすぐに、あのペドロ&カプリシャスの女性ボーカルだと分った。そのライブの最中のことだった。突然、アンプが壊れてスピーカーが沈黙した。
大学生とみられるスタッフが慌てふためいているが、なかなか直らない。すると、高橋真梨子はマイクを床に置いて、バンドのメンバーに声をかけると、音響装置なしで唄いだした。
この時の歌が「五番街のマリーへ」だった。私も知っているヒット曲であり、ざわめいていた観客たちを瞬時に沈黙に追いやった。
その声量の凄さもさることながら、100人以上を収容できる講堂に響き渡る彼女の声の響きに聞き惚れた。音響装置で拡大されないにもかかわらず、末席の私にも聞こえる歌に酔いしれた。これが本物の歌手の実力なのか。
唄い終わると、観客は呪いが解けたかのように拍手を送った。熱狂を感じさせる興奮であり、とても座ってなんて居られなかった。本物の感動は心も身体も動かすものだと知った。
以来、コンサートやライブで「みんな、ノってるかい~」なんて科白を聞かされると、瞬時に醒めてしまう。ノリを強要するな、自らの実力で観客を自然にノラしてみろ。それがプロだろうと、私は思うね。
コンサート会場やライブハウスで時折聞かされる科白だ。バッカじゃないのかと思っている。観客がのっているか、どうか、それくらい分らないのか。いや、一々訊かねばならぬほど不安なのか。
第一、のりって奴は強要されるものではなかろう。プロならば、自らの実力で聴衆をわかしてみろと言いたい。本当に素晴らしい歌唱、演奏ならば、観客は自然に身体を動かし、あふれる感動を動作で表現するものだ。
だからノリを強要されるような科白を聞かされると、(そんなヘタな演奏でノレるか、アホたれが)と心のうちで毒づいていた。
なんで口に出さないのかといえば、そんなヘタな演奏でも楽しんでいる奴らの気分を害するのも悪いと思っていたからだ。ノレない演奏だからこそ、無理にでもノリを演じることで自ら楽しむ人がいることも分っている。私に彼らの楽しみを邪魔する権利はない。第一、本当に嫌なら会場を出ればいいだけだ。
要するに私はノリが悪い。いつの頃からかは分らない。少なくても子供の頃は、盆踊りでも神輿担ぎでも、簡単にノッていたはずだから、思春期以降だと思う。
一つ、心当たりがある。それが高橋真梨子のライブだった。
多分、昭和40年代後半から50年代頃だと思う。人気グループであったペドロ&カプリシャスのリードボーカルだった高橋真梨子が脱退してソロになった。
事情は知らないが、そのため高橋真梨子はメジャーな場所から姿を消して、小さなライブハウスや大学の学園祭などに多く出演していた。
当時私は、世田谷の三軒茶屋という街に住んでいたが、そこは大学がいくつもある学生街でもあり、学園祭のシーズンになるとャXターが電柱に張られ、実に華やかな雰囲気だった。
私もその雰囲気にまかれて、近所の大学の学園祭に入り込んでいた。教会のシスターにもらったチケットで高橋真梨子のライブを聴くためだった。もっとも、その時は高橋真梨子が誰なのか分っていなかった。
大学の講堂でそのライブは行われた。聴いてみてすぐに、あのペドロ&カプリシャスの女性ボーカルだと分った。そのライブの最中のことだった。突然、アンプが壊れてスピーカーが沈黙した。
大学生とみられるスタッフが慌てふためいているが、なかなか直らない。すると、高橋真梨子はマイクを床に置いて、バンドのメンバーに声をかけると、音響装置なしで唄いだした。
この時の歌が「五番街のマリーへ」だった。私も知っているヒット曲であり、ざわめいていた観客たちを瞬時に沈黙に追いやった。
その声量の凄さもさることながら、100人以上を収容できる講堂に響き渡る彼女の声の響きに聞き惚れた。音響装置で拡大されないにもかかわらず、末席の私にも聞こえる歌に酔いしれた。これが本物の歌手の実力なのか。
唄い終わると、観客は呪いが解けたかのように拍手を送った。熱狂を感じさせる興奮であり、とても座ってなんて居られなかった。本物の感動は心も身体も動かすものだと知った。
以来、コンサートやライブで「みんな、ノってるかい~」なんて科白を聞かされると、瞬時に醒めてしまう。ノリを強要するな、自らの実力で観客を自然にノラしてみろ。それがプロだろうと、私は思うね。