ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

幻の水素社会 藤井耕一郎

2010-07-20 17:09:00 | 
上手い話には裏がある。

化石燃料であるガソリンの枯渇が心配されるようになって久しい。また、その化石燃料から排出される二酸化炭素による温暖化への危惧も、今や常識と化している。

だからこそ、新たなエネルギー資源が求められている。そこで本命視されているのが水素だ。燃焼させても水が排出されるだけであり、また最も軽い元素であり、いたるところにある資源でもある。

この水素を燃料電池として活用して、脱ガソリンを図り、また地球温暖化防止にも役立てる。なんて、素晴らしいアイディア!!

だが、ちょっと待って欲しい。いったい何時からCO2が地球温暖化の原因だと断定されたのだ。ガソリンの枯渇にしたところで、第三者的に納得できる科学的データーはほとんどないぞ。

表題の作品の著者は、この水素エネルギーこそ未来の理想像だとのトレンドは、ある種の政治的な策謀の結果だと喝破する。私が期待したような技術的な話は少なかったが、ローマ・クラブから派生したと思われるリプキンの掲げる水素社会なんて、幻想だとの主張にはそれなりに説得力はあると思う。

またその背後にあるのは、石油という極めて重要な戦略物資を寡占するイスラム諸国への対抗意識だとの推論は、いささか乱暴に思う。しかし、欧米に潜む反イスラム感情の根強さが垣間見えて興味深いと思う。

私自身、原油という化石燃料が次第に減りつつあることは間違いないと思う。その一方、石炭や天然ガスは完全に石油の代替エネルギーとはなりえないことも分っている。さりとて水力発電や太陽光発電や風力、潮力発電も地域性が強すぎて、石油ほどの利便性は持ち得ない。

そして水素だが、これも技術的、あるいは経済的な問題が山積しているのは誰もが否定しがたい事実だ。技術のブレイクスルーなんて、簡単には起らない。

嫌な予想だが、この先水素エネルギーの実用化という看板を掲げた詐欺が、それもかなり大規模な詐欺が起る可能性は高いと思う。いつの時代だって、詐欺は事実を元に仕組まれる。人々の不安と欲望を生める形で、詐欺師は入り込んでくる。

そんなものに引っかからないためにも、情報には気を配りたいものだ。
コメント
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