
山の夕暮れはいい。心安らぐ。いつも眺めている権兵衛山の上の方は薄い霧がからみ、余ったその一部がさらに周囲の山々へもゆっくりと流れ、色のない柔らかで、穏やかな抱擁を繰り返していく・・・、今日の終幕にふさわしい。落ち着く。
「権兵衛山」というのは、入笠山よりも標高が5メートルほど高い東隣の無名の山のことで、だから「名無しの権兵衛」をもじって密かに、かつ勝手にそう呼んでいる。権兵衛山は、この辺りにはまだ幾つかある。
考えてみれば、こんな夕暮れ時は当然だが、牧場で働くようになって、夏の暑さを殆ど気にすることがなくなった。11年前、東京を去ると決めたとき、もう冷房の世話にならずに眠れるということが、どれほど気持ちを弛め、安堵させてくれたことだろうか。ここでは炎暑を遠くして、ささいなことを喜び、満足していれば、それでゆっくりと日が過ぎていく。だから今日、草刈の途中でなくした古いハンマーのことは、逆に結構気になる失策であったのだ。
昼間チョコレートを食べたせいで、ビールがススマナイ。ウイスキーに替えたら、ようやくいつもの調子が出てきた。ゴクンとひと口飲み込み、またゴクンと飲む。そのたびに重力が弱まり、薄れ、実にいい気分だ。今日もいろいろやったが、もう思い出せない。快い今の疲労の中に吸い込まれて、墜ちていく。至福。
牛も程なく眠りにつくだろう。
実は、これは昨日の書置き。今日の暮れはドシャ降りの雨。ただし、午前中は雨の降ってくる前にと夢中で、小入笠まで電牧の下草刈りをした。ハンマーをなくしたのはそのときのことで、これは書き足した。
ぼつぼつ夏の予約が来るようになった。
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