入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’18年「秋」 (16)

2018年09月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 巨匠の筆がまた一段と進んだ。権兵衛山の落葉松の色が単調な深緑一色の頃に比べ、渋い茶の色が薄く幾度も塗り重ねられた結果、一本いっぽの木に陰影が生まれ、そこに巨匠の筆、霧を残して見事な一幅の日本画ができつつある。今朝ここに着いた時の気温は15度、雨は降ったりやんだりを繰り返した。

 車から降りようとしたら、変な声がした。二度目に聞いてそれが囲い罠の中の牛の声だと分かった。塩鉢のある水桶の傍に4頭の牛がやってきて、吠えていたのはそのうちのホルスのようだった。3頭の和牛も一緒にいた。塩が欲しいのだろう。
 この牛たちがここにいられるのもすでに1ヶ月を切った。こうしてみれば4か月など呆気ないもので、何度も呟いてきたが家畜の一生などは不憫なものだ。ここにいる和牛は子牛を産む繁殖牛だから、30か月そこそこで肉にされてしまう育成牛よりも長いが、それでも7,8年と、寿命の半分も生きることができないらしい。
 意外に思うだろうが、あの巨体と言ってもいい和牛の成長は、わずか20ヶ月もすれば止まる。それを、サシを増やし肉の品質向上させるため、すなわち高値で売れるようにするため、さらに10か月くらい飼育されるのだ。全て人間さまの勝手、都合。
 牧場に放牧されている時は、牛たちのことを家畜だというようにはあまり意識してない。調教に応じるようになれば可愛さも増すし、広大な風景の中に置いて眺めていれば癒されもする。おとなしい野生の動物ののようなつもりで見て、扱っている。大声では言えないが、蓄主の側でよりか、牛の側に立って考えたり、思う方が強いだろう。
 しかしそういうことを言いながらも、和牛の肉を食べたことがないわけではないし、豚でも、馬でも、鶏でも食べないわけではない。なるべく魚を食べようとしているが、それも自己満足でしかない。その一方で、畜産業が衰退してはほしくないと思うのだから、「オイシー」などと黄色い声を上げながら、大口を開けて焼肉に食らいついている女優たちのことなど嘲えない。

 昼を過ぎて雨脚は強まるばかりだ。これを呟き終え、第1牧区の牛たちを見たら帰ろう。雨は甚だしく営業妨害だ。

「今はもう秋」です。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする