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この牛たちが山を下りるのは、10月2日と確定した。犬のように後を追う牛たちである、別れはすでに今から、それなりに感ずるものがある。
毎朝、8時前後には山室の谷に入るのだが、その時間にはすでに野良仕事をしている人を見かける。今朝も、最初に山室川を渡る手前でそういう一人の老人を目にした。20坪ばかりの菜園の中で鎌を研いでいた。普段だと、奥さんらしき人も見かけるのだが、きょうはいなかった。ああやって野良で、長いのか短いのか分からない一日を、きょうは一人で過ごすのだろう。
芝平の5キロほど手前になる荊口の集落は、集団離村を免れ、元の住人が今も住んでいる。大半はかなりの高齢者と思えるが、見掛ける人の数は限られ、ここも過疎化が進むばかりだ。
そう思ってずっと10年以上を、この狭い谷の中にある集落を行き来してきたが、昨年の秋ごろから、若い夫婦を見かけるようになった。農業を専門にしているようで、一度話をしてみたいと思っているがまだその機会は訪れてくれない。
40年近く東京に暮らし、今頃になってこんなことを言うのはいささか気が引けるが、この辺りの落ち着いた山間の村で、農業を営みながら生きるということはまんざらでもないと思う。特に人に仕えたり、組織が苦手な人には、農業はやりがいのある仕事になるのではないだろうか。自然の中で誰にも指図されず、自分の考えと行動だけが頼りで生きる。多分、経済的にはあまり豊かではないはずだし、それで不幸を背負った人たちの話も聞く。子供の教育などは将来の大きな課題となるに違いない。
それでも山室(やまむろ)の集落には馬を飼って、昔ながらの馬耕で農業にいそしむY君夫婦のような若者もいる。最近一人子供が増え、彼も2児の父になった。
秋風が旅に出ろと言ってませんか。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。