巨匠の筆、霧が、座頭沢や八株沢にまで及ぶようになって、森の印象はまた一段と秋色を深めた気がする。座頭沢は何本もの谷が深く切れ込み、どこが源頭になるのかわからないが、曲がりくねった山道を行けば、深い谷の中に今朝は霧が次から次と流れ込み、音のない幻想的な演出を見せてくれた。
八株沢は座頭と比べるとそれほど大きな谷ではなく、牧場の手前「樺の平(かばのたいら)」の南側から沢は落ちていく。その近くまで上ってくると、時々青空まで見えて、そういう時は落葉松の細い葉の先やサルオガセに付いた水滴が霜のように見えたり、時には光って見える。落葉松の森全体の色も秋の装いに変わりつつあり、長かったが、待っていた本格的な秋がようやくそこまで来た。
にわか覚えのリンドウの花に注意しているのだが、この辺りで見られる紫の花といえばあのトリカブトしかない。秋の野花には派手さはなく、清楚であり、控え目でおとなしいが、トリカブトはその毒で知られる花だ。ためにいまひとつ親しめない。誰かが言ってた「棘や毒は、いくら美しくても結構」、と。
今、花の色を紫と呟いたが、リンドウも紫だが大分色が違う気がした。念のため図鑑では花の色をどのように言っているか調べようとしたら、トリカブトでは索引に出てない。これほど悪名の高い花が掲載されてないはずがないとあれこれ調べた結果、「ヤマトリカブト」でようやく見付けることができた。色は青紫とあった。ついでにリンドウは、とページをめくったら、これも青紫。印刷では色の違いがのはっきりしないが、実際はかなり違うと思うのだが。
何だかおかしなことを独り言ちってしまった。花に詳しい人の嘲う声が聞こえる。
秋風が旅に出ろと言ってませんか。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
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