囲いの中の草はほぼ食べ尽くされたと言っていい。外には充分な草があると言うのに、しかし牛たちはそこから出ようとしない。9日には中間検査があり、当然いい結果を出したい。
忙しい日が続き、気にはしていたが敢えてこちらからは手を出さず、牛たちの好きなようにさせていた。それでも給塩の際などに見る限り、問題と思えるような点はなかった。
一昨日、電気牧柵の点検をしていたら、囲いを出たところに牛の一歩踏み込んだ足跡があり、アルミ線が歪んでいた。どうやらそこで牛が感電し、以来囲いの外へ出るのを嫌うようになったということが考えられる。
しかしそれは1頭の牛の身に起きたことで、その牛に追随して他の牛までが草の乏しくなった囲いから出ようとしないのはどう理解したらよいのだろうか。偶々感電した牛が群れを主導する立場の牛だった、ということぐらいしか思い付かないが。
昨日は4人の女性職員が例の研修のため上がってきた。午前中は小入笠の頭まで電牧の点検に同行することが決まり、彼女らには思ってもいなかった登山となったが、雄大な景色をそこから初めて目にして皆喜んだ。
案内した牧場管理人の10分の1,いや100分の1でもいいから、彼女たちにも自分たちが所属するJA上伊那の経営する入笠牧場を知り、より好きになってもらいたかった。青い空、白い雲、広大な眺め、心地よい風、こちらの目論見、気持ちは伝わったと思う。
その女性らに半分冗談で、午後は囲いの中の牛を追ってみるかと尋ねたら、いいという返事が返ってきた。やはり、彼女らも牛を怖れるよりか、可愛いと思う女性たちであるらしかった。
万一のこともある。まったく危険がないわけではない。勝手に牛守だけの判断でそんなことをさせて事故でも起きたら彼女らの身体ばかりか、優しい気持ち、母性本能も傷付けてしまう。
しかし、牛たちは牛守の誘導に従い素直に囲いから出て、それを外から眺めていた彼女らには調教の成果を見せ、牛守としての面目を立てることができた。
ここを訪れる人たちは、周囲の森や林の緑の色が美しいと褒める。これまでは、今の季節のありふれたその色を退屈だとか、物憂いとか言ってあまり相手にしてこなかった。
ところが、ようやく人並みになったのか、このごろになって、新緑とは違うこの地味で主張を控えた色を好ましく、美しいと思うようになった。女性にもたまにそういう表情の人がいた、いる。
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本日はこの辺で。