法華道の御所平付近を行く
下界ではいまだ30度越えをしたとかいう話を聞いたりする。夏のしつこい名残は、幾歳になっても表舞台から退場できないあの人たちのように続いているのかと呆れるが、しかし、山はもうすっかり秋の季節に入っている。
座頭沢の落葉松は水揚げを止め、焼き合わせのツタウルシは林を赤く燃やし、初の沢の大曲りにあるマユミの木は赤い実が一段と目立つようになってきた。
今朝、車の前を横切っていった雄鹿奴は子づくりに励み過ぎたのか、虚ろな目をしていたし、最近よく見かける理想の高いあのキツネは、きょうも1匹だけで曇り空の下、御所平の森の中を彷徨っていた。
今朝も見たが、まだ森の中にキノコ狩りをする人の姿があった。道路脇に停めてある車はすべてと言っていいくらい「諏訪」であり、伊那の人はここまでいわゆる「雑キノコ」を採りに来ようとはしないようだ。まだ採れるのかと訊いたら頷いていた。
確かに昨日、法華道を整備していてヌメリカラマツタケを見付けた。「持っていけ」と言わんばかりに道を挟んで2か所、クマササの下にあった。写真は撮ったが、キノコは持ち帰らなかった。
そのままでもいいと思って残してきた。良い味噌汁の具にはなったかも知れないが、そんな使い方ではもったいない気がしたのだ。
御所平といえば、宗良親王と並び北条高時の遺児時行がここに逼塞したと伝えられるが、その時行を主人公にした漫画の人気が高いらしい。「逃げ上手の若君」という題名だと聞くが、彼の生涯から考えるとあまり似つかわしいとは思えない。
以前にアウトドア関連の雑誌「Fielder」に時行のことを書くため、フリーライターの宗像充氏がここへ来たとは呟いた。後に記事が掲載された雑誌(vol.74)を送ってくれて、そっちの方は大いに参考になり、大変有難かった。
この記事では触れていなかったと思うが、時行が熱田神宮の神官の娘に生ませた子の子孫こそが、幕末の偉人横井小楠(号)に当たるという話を、苦難の生涯を送った時行のために信じたい。
深まる秋を求めてお出かけください。
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本日はこの辺で。明日は沈黙します。