入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      ’24年「秋」(67)

2024年10月26日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 もう20年、いや21年も以前のことになるか、鮮やかな錦繍に埋もれる小黒川の谷をTDS君と上ってきた。信州に暮らすことを決めた最初の秋だったと思う。時季が良かったのだろう、谷全体に散りばめられた黄色や赤の豪勢な紅葉、狭くて深い谷を縫って流れる眼下の清流、そして見上げた秋の青く澄んだ空、山水の極みを見たような気がした。
 翌年も同じ時季にまた二人して訪れ、前年にも劣らない期待通りの秋を、紅葉を満喫した。そして、谷の終わる林道から牧場へ入るゲートまで来て、そこで手を広げて迎えてくれたような広大な牧の眺めに触れて、唐突にも人生の後半をそこで働くことができたらいいなと思った。運命的、と言ってもいいだろう。

 昨日の午後も、そんなことを思い出しながら仕事のついでに小黒谷へ行ってみると、谷の両岸の落葉松はすっかりと黄金色に変わり、日の当たる谷の中だけでなく、日陰の幾分暗い谷の中にも燃えるような真っ赤に色付いたカエデやモミジが、モミなどの常緑樹の色とも絶妙な調和を見せ、さらには澄んだ流れとも相まって谷を飾っていた。
 同行者が「こんな紅葉今までに見たことがない」と感極まって叫んだ。

 21年前、南沢の出会いを過ぎた岩の上にたった1本の真っ赤に燃えたモミジの木を見た。それに目に留まらなかったら、翌年も行こうとしなかったかも知れないほど、その葉の色付き方が強く印象に残った。
 昨日は時間がなかったから行けなかったが、たまにそこを通ると、牧場で働くきっかけを作ってくれた遠因だと思い、今ではすっかり精彩を欠いた古木だがつい目が行ってしまう。
 
 紅葉は姫君の秘められた恋だと誰かが言ってた。想いを成就できぬままその姫君も老いたということだろうか。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。




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