入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’20年「春」 (39)

2020年04月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 好天、山には人気がなく静かだ。山室川の桜も、少しずつ上流へと開花が進み、弘妙寺周辺は今が満開。芝平も分教場前の早咲きが今まさに盛りを迎えたばかりだと言っていいだろう。集落を過ぎさらに上に行けば開花はもう少し先になるが、第1堰堤は誰がやったのか赤松の枝打ちが行われ、花の時季に決まって邪魔をする無粋な緑の色が消えた。野鳥は目にするものの、素早く飛び去ってしまい、乏しい知識ではカケスぐらいしかまだ正体が分からない。



 外で作業をしているとあまり気温のことは気にならなくなる。遅い昼を食べに管理棟へ戻ってきてみたら、寒暖計は5度だった。そのくらいだから、雪中の電気牧柵のリボンワイヤーを掘り出そうとして雪の上に立っても、足が潜らなくて当然だったろう。雪が締まっていて、腐っていない。
 
 きょう中に第1牧区の電牧の立ち上げを終えようとして、苦戦しつつも作業を続けていた。その間に、頭に擦過する諸々は腹の立つことばかりだったが、さらに加えてまたしても予想外の展開に。この牧区内では一番高所になる、南端の丘から落ちてくる縦線に沿って下から登っていったところ、1本の落葉松らしきが倒れていた。参った、。写真では分かりずらいが、これは一抱えもありそう、太い。
 牧場にも倒木はあるし、通勤時にも必要になる時があるから、チェーンソーはこの時季いつも軽トラに積んである。しかしあれだけの太さになると、それでは無理だ。小屋にもう1台もう少し大きい型があるが、生憎これがあまり切れ味が良くないとくる。研磨するか、歯を換えるしかないのだが、どっちにしても時間がかかる上、きょうは用事があり早めに山を下らなければならない。結局、明日へ持ち越すことにした。

 連休を控え、テイ沢の現状については富士見にも知らせておいた方が良いだろうと電話しても、役場の担当者は電話に出られないようだ。伊那市には高遠支所の担当者に連絡しておいた。来週には、そこへも行く時間ができそうだが、まだ目途は立たない。沢へは入渓しないよう、注意書きを出そうと考えている。

 番長様、心強いです。その時はよろしく、多謝。

 きょうはこの辺で。

 
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     ’20年「春」 (38)

2020年04月23日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 開田を通り抜けて県道へ出ると、右手に出番を待っていたかのように中アの西駒、空木が浮かび上がように現れ、左手には南アの守護神然とした仙丈がさらに間近に見えてくる。それぞれの山には雪はまだしっかりと残っていて、特に中アの二峰はこの季節の朝の明るい光を受けて輝いて見えた。



 午前中はあれだけ天気が良かったというのに、昼を過ぎたら雪まで舞い出し、気温は5度までも上がらない。
 
 昨日の予報でも、里の今朝の最低気温が2度と予想されていたから、そうなると上はマイナス4度くらいにはなる。当然ながら水回りのことが気になって来てみたら、水道の蛇口から流し台まで氷柱(つらら)が垂れ下がっていた。かなり寒かったのだろう。管理棟と小屋は無事だったが、キャンプ場の下の炊事場の配管は、水を流していたにもかかわらずやられた。しばらくは放っておくことにする。
 
 きょうはずっと第1牧区の電気柵の立ち上げをやっていた。これが毎年やる最優先の作業で、鹿対策のために一時も早く通電しなければならない。もっともこの頃は、この電気柵もどれほどの効果があるか疑わしく、昨日などは御所平へ行ってみれば20頭ばかりの鹿の群れが、例の優美な曲線を描いて有刺鉄線とアルミ線の並行する二つの牧柵を越えて逃げていくのを目撃したばかりだ。
 それでもそんな作業を続けていると、山を歩いている時のように実に他愛のないことが勝手に頭に浮かんできて、一人で笑ったり、怒ったりをよく繰り返す。たまには忘れていたい気恥ずかしいことも思い出したりするが、そんなことでも、この単純な肉体作業が与えてくれるささやかな労いだと思っている。自分でも不思議だが、こういう山の中で一人になって、単調な時間の中に自分を預け、任せてしまっているのが結構性に合っているらしく、この仕事は明日も続くが嫌ではない。Nよ、これはもう止めてしまった山の代替と言うか、むしろ延長だと思った方が正しいだろうか。

 番長様並びに裏番長様、恐れ入ります。気にはしていましたが、承知しました。さすがかんとさん、痛み入ります。まだまだ、諦めは早いでござる。小屋良くなったでせう。

 本日はこの辺りで。


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     ’20年「春」 (37)

2020年04月22日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 入笠牧場や、遠くに見える美ヶ原には雪が残っていても、その間に位置する霧ヶ峰や車山には全く雪がない。入笠山が1千955Mで車山が1千925Mだから、それほどの標高差はないはずだ。美ヶ原は一番北方に位置し、標高も2千を超えるから納得できても、霧ヶ峰の場合はと考えてみると、平坦で、所謂"日当たり"の良さから来る違いだろうか。
 きょうは思い切って第1牧区へ軽トラで上がってみた。少々雪に手古摺る所もあったが、何とか上まで行くことができ、いつもの塩場から久しぶりに周囲の景色を眺めながら改めて感じた、これは実にどうでもいい独り言。





 今朝、東部支所関係で不要になった冷蔵庫1台、ストーブ2台、炬燵1式を運んできた。小屋は充実しても、残念ながら営業自粛のために当面訪れる人などはいない。それに、冷蔵庫を省いたら、他の物は時期を逸してしまった。まあそれでも、有効活用できる日が来ないわけではないと思って持ち上げたのだが、さて。
 それにしても、ここは山小屋というよりか何だろう、そう考えて思わず笑ってしまった。一昔前の貸席とでも言えばよいのか。多くの人の善意や厚意があってここまでの物が揃ったわけで、ついでながら、炬燵の奥と、テーブルの手前に、仕切ればまだ12畳が2区画できる。

 県によれば、登山も自粛の対象になっているとか。加えて、山岳団体を束ねる4つだかの集まり(協会や連盟?)からも、連休の登山は控えるようにとのおっ達しが出たそうだ。それでも行く人は行くだろうがこのご時世、遭難騒ぎなど起こした場合、大顰蹙を買うだろう。そんなことを言っておきながら、テイ沢の倒木処理中に怪我でもしたら、嘲い殺されるかも知れない。

 本日はこの辺で。
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     ’20年「春」 (36)

2020年04月21日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

   

 一体どれほどの量の雪が降ったというのだろうか。13日から14日にかけての季節外れの雪のことだが。山の中はそこかしこに倒木がやたら目に付く。これは風のせいというよりかも恐らく、水気を大量に含んだ雪の重みに木が耐えられなかったのだろう。その証拠に、常緑樹で葉の茂ったモミや赤松が目立ち、途中で折れている木も少なくない。落葉松の場合はモミと違って風のせいかも知れない。まだ芽吹き前ながら、この辺りの山は表土が薄いから、根元から倒れている。

  実質的には、きょうが牧開きの日ということになる。予定通り、まず小屋中の窓を開けて中の空気を一新させ、ゴミの焼却もやった。それから、毎年のことながら一番厄介な水回りの仕事に取り掛かる。きょうは期待していたほどの水圧がなかなか出なくて、また水道管の破裂、ということが頭をよぎる。過去にそういうこともあった。だから台所の蛇口から清冽な水が勢いよく出るまでの間は安心できない。何とか今年の初日は、水源までの2キロほどの山の中を、漏水個所を探しながら歩かずに済んだ。

 安堵も束の間、本業の牧場管理人になって各牧区内を点検しながら、今後の作業予定を立てることに。鹿が相変わらず多い。第3には2群で50頭以上、第1には30頭くらいか。今朝小屋に着いた時、大型の囲い罠の中に2頭入っていたが、仕掛けてはいないからそのうちに脱出したようだ。牧場内外4か所、倒木の処理もする。

 テイ沢の様子について問い合わせがあり、それだけでなく妙に気になったから急いで行ってきた。それがきょうの写真で、こんなテイ沢は初めて見た。丸太橋の流失は2回経験済みだが、倒木で沢そのものがここまで荒れたことはなかった。下から6番目の丸太橋で引き返したが、橋は無事だったものの倒木処理は思うだに気が滅入る。このご時世だから来る人はいないと思うが、しばらくは入渓しないでもらいたいし、入笠山感覚ではまず無理。海老名出丸さん、切ないですね。

  きょうも迂回路を来ると、途中で一人登山者がいた。声をかけたら、沢入りからだという。どうもそれしか、入笠へ来る方法はないようだ。伊那側の林道も、道路工事のため一般車輛は通行できない。  

 本日はこれまでといたします。    

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     ’20年「春」 (35)

2020年04月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 きょうが令和2年の、牧場仕事始め。初日だから主菜をウナギにして弁当を自作し、不安そうな顔を浮かべるHALに見送られて雨の中を7時に出発した。好天は昨夜のうちから諦めていたが問題は雪の状態で、恐らく車で上まで行くのは無理だろうと思っていた。ところが、オオダオ(芝平峠)に雪はなく、白い物が目に付き始めたのが池の平を過ぎて焼き合わせに近くになってからだった。楽観するなと言い聞かせても、次第に上まで車で行けそうな期待が膨らんできた。
 そんな思いでド日陰の大曲り手前まで来て、目に飛び込んできた光景に唖然とした。大きな山桜の倒木が、完全に行く手を塞いでいたのだ。ド日陰奴は例年のように雪ではなく、今年は倒木という新たな嫌がらせを繰り出してきた。そこから歩くことも考えたが、そんな悠長なことをしているよりか一時も早く倒木処理を済ますべきだと、その方に拘った。
 仕方なく焼き合わせまで引き返し、そこから迂回路となる入笠湿原、入笠登山口、そして牧場への経路を進み、覚悟していたことだが途中で車を捨て雪道を歩いた。とにかく、何を置いてもチェーンソーが必要だった。もちろん、林道の補修工事が始まればまた通行できなくなることは分かっていたが、牧場の始まったばかりの今しばらくだけでも、できたらあの迂回路は避け、いつものように北門から牧場への順路を行きたかった。
 そして再びド日陰の大曲り近くの現場まで戻り、桜の倒木の処理を終えた。安堵して、軽トラをいくらも走らせないうちに、また新たな倒木が目に入り、歩いて様子を見に行った。そして、再び唖然、言葉をなくした。何と、倒木箇所は4カ所にも及び、それがまるでド日陰の大曲りを車の侵入を防ぐように急な斜面から道に倒れ込んでいた。とても、その時手にしていたチェーンソーでは太刀打ちできないと諦めた。





 後で分かったことだが、こういう倒木の状況を行政も、工事関係者も先週のうちに知っていたという。それでいて、牧場管理人がきょうから上に行くことは分かっていても、何の沙汰もなかった。一事が万事、こんなもの。
 
 高遠城址の桜は大方散ってしまった。しかし、山室川の流域はこれから徐々に花が谷を飾る。かすかながらも、落葉松の樹林帯に薄緑の色が霞のように加わって見え、山全体はまだ色彩に乏しくも、冬の素っ気なさとはやはりどことなく違っていた。初日の辛酸も、きっとこれからの季節が、その自然が、忘れさせてくれるだろう。

本日もお粗末な独り言。
 





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