入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「秋」(10)

2023年08月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 
 長い静寂の後、思い出したように風が吹く。その度に静かに霧が下りてきて、林をかすめゆっくりと北の方へと流れていく。権兵衛山はずっと白い空白の向こうに閉ざされたままで、そういえば、今朝はあの森から聞こえてくる鳥の鳴き声もしない。それに、まだ雨は降り出すのをじっとこらええているようだ。
 一体どれほど、こういう同じようでそうではない景色を目にしてきたことか。森を真似て、自分も霧のような思いを吐き出しているような気になり和むこともあれば、時に得体の知れない焦慮にも駆られる。

 嵐の来る前に取り敢えず牛の様子を見ておこうと外に出たら、西の方には小さいながらも青空があり、それまで東の狭い曇り空ばかりを眺めていただけに、その印象の違いに驚いた。
 弁天様下の三叉路まで車で行ってから対岸を見ると、和牛もホルスも普段は鹿が好む斜面に大分広く散らばって見えていた。
 小屋に戻り、車だと面倒なゲートの開け閉めを嫌い、牛たちの頭数確認には歩いて行くことにした。少し肌寒かったので、黒衣を来た。
 白衣なら医療関係者でお馴染みながら、黒衣はその名の通り黒く、牧畜に携る者が身に付けるようだが、今はあまり目にしない。新品ながら東部農協時代(今はJA上伊那東部支所)のロゴが付いていて、誰かが仕舞い忘れた物だろう。

 ホルスは斜面の下の方に固まって、2頭を省き、耳に付けている番号札ですぐにそれぞれを確認することができた。問題は和牛の方で、例の中間検査の時に上がってきた4頭が群を乱し、さらに上部の方に他の牛も連れて逃げるように移動していく。
 冬の登路に使っている斜面を登り、第1牧区に続く広い放牧地に出たところで声を出した。調教のできている牛たちを落ち着かせるためだ。

 昨日も、午前と午後の2回、同じように第2牧区を登り下りしながら歩いて頭数確認をした。それでひとまずは最低限の役目を果たしたと安堵するものの、何年やっても習い性とでもいうのか、未確認の牛がいると咄嗟に事故を疑う癖が出てしまう。つまりこれは、きょう半日だけの安心でしかない。

 こんな天気なのに、歩いて登ってくる登山者がこちらに向かっていると下から連絡が入った。外人らしい。以前にも来たことがある人かも知れない。

 たろうさん通信拝受、多謝。その時はよろしくお願いします。
 本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’23年「秋」(9)

2023年08月11日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                           
                         Photo by かんと氏
 
 3連休は期待以上の好天が続いた。牧場のキャンプ場へ来てくれた人たちは、9泊10日の京都のKさん夫妻を始めとして、窮屈な思いをせず、ゆっくりと過ごせたと思う。
 夜も、頭上遥かに大きな天の川銀河が横たわり、ペルセウス座流星群の撮影にやってきたかんとさんTBIさんご両人とも、まずまずの結果を残せたのではないだろうか。


                         Photo by Ume氏
 
 盆休み、高速道路はまたお定まりの渋滞が始まった。リニア新幹線に莫大な金を投じるよりか、もう少し高速道路の渋滞解消のための方策、投資を考えるべきではないだろうか。
 東京(品川)-名古屋間をリニアモーターカーなら40分で走れ、さらに将来は大阪まで1時間少々で行くことができるというが、地方の鉄道がどんどんと廃線になる今、それが一般の人々にとってどれほどの利益となるのかよく分からない。

 台風7号接近の予兆であろう、夕方になってようやく風が出てきた。まだ雨は降っていない。誰もいなくなったキャンプ場のコナシや、国有林の落葉松の樹々が音を立てながら揺れている。
 台風の来襲を避けるためキャンプの予約を取り消した人もいれば、何も言って来ない人もいる。来るつもりでいるのだろうか。どうせなら、荒れた天気の日ではなく、もっと快適な山や草原の気を味わえる時に来てほしいものだ。

 中間検査時に入牧した和牛4頭は警戒心が強く、人を近付けさせない。ホルスも2群に割れた。嵐になれば、牛たちがどんな行動に出るか、かなり気になる。

 栗山さん、承知しました。
 本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。

 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’23年「秋」(8)

2023年08月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の中間検査の結果は、肉牛も乳牛も近年では最も生育状態が良いということで喜び、ひとまず安心した。今、牛たちは全頭が第2牧区にいる。前期のように、肉牛と乳牛を分けずに同一の放牧地に入れたのは、第2牧区の牧草を無駄にしたくなかったこと、囲い罠を鹿の捕獲に使いたかったことなどが理由で、これは暫定的な処置、いずれは再び第1牧区へも牛を出す。
 と、こんなことを呟いても、牧場の実態、様子を知らない人にはチンプンカンプンだろう。ともかく、後期の方が管理は難しくなる。脱柵などが起こるかも知れない。小入笠の頭には登らなくても、頭数確認のために歩く距離はさらに増えるだろう。

 京都から来て9泊したKさん夫妻が、きょうここを去る。恐らく滞在日数の新記録だと思うが、この後も東京まで足を延ばし、帰路はまた日本海経由を考えているようだ。70歳を過ぎているというのに、ご本人はあまり車の運転を苦にしていないように見受けられる。いつかそんな旅を真似てみたいものだが、体力気力をこの牧場で使い果たして思うだけで終わる、なんてことにならなければいいのだが。

 きょう10日から、「混雑させない」を謳い文句にしている当キャンプ場にも新たな予約客が来る。星の狩人かんとさん、TBIさんも来る。かんとさんからは天候に関係なく来ると連絡が入ったが、台風を連れて来るかも知れない。クク。
 電話の声だけで分かるTさん夫妻も確かきょうだ。そんなふうに毎夏来てくれる馴染みの人が多いが、もちろん初めての人たちもいる。
 誰もが、わずかな日数でも炎暑を逃れ、いい風に吹かれ、大きな空を眺め、存分に英気を養ってほしいと願っている。
 
 知る人は少ないが、高座岩からさらに南に進んで半対峠、そこから小黒川の川床を歩いて帰るコースは法華道などよりももっと古い900年代の古道「石堂越え」だと聞いている。2回か3回歩いたことがある。夏であればこその、きっといい体験になるだろう。
 入笠には、まだまだ人には知られていない奥座敷が幾つもある。クマなど恐れず、とは言えないが、恐れながら歩く価値は充分にある。

 本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’23年「秋」(7)

2023年08月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 本日、中間検査が予定通り行われる。昨日の中に、両牧区の牛を囲いと、追い上げ坂まで連れてくることができた。検査後には、第2牧区へ牛を出すことも考え、同牧区の牧柵の点検と補修を行う。この春、新たに架けた渓を跨ぐ牧柵には多量の木の枝がゴミとなってが絡まっていた。いつかの大雨の名残りだろうが、牧柵は無事だった。
 管理棟から第4牧区へ通ずる電牧用の一部被膜が剝離したケーブルは、コナシの木など4本ばかりを伐り倒し、幹や枝などにより問題のケーブルにかかっていた負荷を取り除く。その際には、昨日で滞在8日になる京都のKさんの助言と協力を得て、助かった。結果、後期高齢者としては昨日も1万歩を越える歩行数を記録、満足。

 小雨混じりの霧が深い。夏の薄いズボンでは心許ない。外の寒暖計を見たら、意外にも、午前7時半の気温はそれでも18度ある。しかし、見た目、肌感覚ではとてもそんなふうには思えず、半袖のシャツから長袖の厚手のシャツに替えたほどだ。
 
 今朝は鳥の声もしない。ここには一足どころかもっと早い秋が来たと、風の音が、霧雨が伝えている。放牧地の草の色にも変化が出始めた。穂の先が黄色く変わり、それが大勢を占めつつある。
 今はまだ樹々は美しい緑の葉に覆われているが、やがて水の吸い上げを止め、そうなれば黄ばんだ葉が秋色を深め、辺りの情景を変えていく。今年もここは短命な夏だったが、それでいい。逝く夏を惜しむ気は、とっくにない。

 トラックの音がする。下から牛が上がってきたのだろう。

 本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

     ’23年「秋」(6)

2023年08月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 
 久しぶりに里へ下った。11日ぶりか。やはり、標高差1000㍍の気温の違いは明らかで、理屈上では6度ほどだが、身体に感ずる暑さは思っていた以上だった。さらに4度とか5度も違う都会の炎熱を想像すると恐ろしく、すでに秋を宣言している入笠へ逃げ帰りたくなったとしても仕方がないだろう。
 下は晴れていたが、ここは霧雨が降ったり止んだりしている。午前7時半の気温は15度。

 明日は中間検査があり、きょう中には乳牛を囲いの中に入れ、和牛は追い上げ坂まで誘導しておかなければならないが、湿度が高い。果たして第4牧区のどこかにいる牛たちが夕方、いつものように水を飲みに囲いまで来るのか、あるいは和牛軍団が素直に誘導に従うのか、まだ分からない。
 それに、電気牧柵にまた不具合が発生し、それも何とかしなければならなくなった。管理棟から第4牧区まで電柱を利用して張ってあるケーブルが、その重さと、木の枝に引っ張られて一部外皮が剝けた箇所を発見。これはかなり厄介な仕事になりそうだ。

 里に帰って、郵便ポストに入っていた市報が目に付いた。それには市長が「焚火通信」というページを持っていて、今月は有難いことに、夏の野外活動の場として一番先に入笠を取り上げ、紹介してくれていた。
 普段は市報に入笠が取り上げられることはまずない。市民にも、距離のせいでか、近年は馴染みの薄い場所になってしまっている。「混雑させないキャンプ場」のことを知る人もそれほど多くはないだろう。
 車なら1時間そこそこ、盆休みの予約にはまだ少し余裕があるので、涼しい天空の草原や、星が煌く夜空を求め出掛けてみては如何かと、オススメします。

 京都から来ているKさん夫妻は諏訪の温泉へ行くと言って、早々に出発していった。こういう楽しみ方もできる。
 本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
 本日はこの辺で。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする