片岡義男・鴻巣友季子「翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり」を読んだ。
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ほう、鴻巣友季子訳「嵐が丘」があるんだ。
“嵐が丘、文章で読んだことがないので”、この方の訳で読んでみようかな。
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とウロウロしていたら、「小公女」の新訳を発見。発売日 : 2014/11/01 。
できたてほやほや!?
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「嵐が丘」からあっさり乗り換えて、畔柳和代訳「小公女」読み始める。
さて ここから迷走が始まったのである。
物語初めの方の 校長ミス・ミンチンの心情が書かれているところで びびびっ!が発生し、
手持ちの本や手に入る本や とにかく手当たり次第に色々な翻訳版のその部分を読み比べた。
(とここに書き始めて改めて考えてみると そんなにたくさんの冊数ではなかったのだが、やりつけないことしていると大変なことしている気になっていったのである。)
なーに大騒ぎしていたのかと言うと
ミス・ミンチンの心情がこんな風に訳されていると
私の読んだ本でのセーラのひと言がとても腑に落ちる、
の ひとりお祭り状態に入り込んでしまったのだ。
びびびっ!が発生した、なんて言っているのは
「 ミス・ミンチンが内心とても腹立たしく思うことのひとつは、自分はフランス語を
話せないことで、このいらだたしい事実は隠しておきたかった。だからこの件につい
て話し合う気は毛頭なく、新入生の無邪気な問いかけに自分をさらす気などなかった。」
のところで、目についた他の翻訳と それこそ「行ったり来たり」読み比べてみたのだが
この畔柳訳には ずんと一歩踏込んだ印象が起こる。
生業に女子教育を選んだミス・ミンチンの気概(暴走しているが)が 突如輝きだしたのだ。
そして 「私の読んだ本でのセーラのひと言がとても腑に落ちる」、その一言とは
物語クライマックスもクライマックス、セーラが歌舞伎名ぜりふのようにミンチン先生に向かって放つ
"You know why I will not go home with you, Miss Minchin," she said; "you know quite well."
私が初めて読んだ「小公女」(村岡花子訳)では
「わたしが、どうして先生のところへもどりたくないのか、先生がいちばんよくごぞんじの
はずです。」
となっていた。
事の始まりポイント・ミンチンセリフを
「ミス・ミンチンが内心とても腹立たしく思うことのひとつは…」と
『腹立たしく』まで踏み出してもらうと、
最高潮ポイント・セーラセリフを
千葉雅也さんとこの
「…やるならばエレガントな攻撃性でやりたいものですなあ。エレガントな攻撃性というのは難しい。そのためには、相手の理解力・文脈力を性急に低く見積もってはいけない、と思うんですね。」風に聞くことができる。
セーラもミンチン先生も 俄然人間っぽくなっていったのであった。
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そして何よりビックリなのは 畔柳訳によって
校長ミス・ミンチンの心象風景が サブリミナルのように私の心にやってきたことだった。
えー!私、ミンチン先生の気持ちもわかるようになってきたわけ?時は流れるー(゜_゜)。