市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

高崎市箕郷町に投棄された鉛・ヒ素入りK砕の現地調査と学習会で分かった環境被害の実態と深淵(1)

2018-12-04 23:49:00 | スラグ不法投棄問題
■先日2018年11月24日(土)に高崎市箕郷町で開催された「有害スラグの撤去を求める会」の設立を目指した集会に招かれたので、その際の報告をいたします。この集会は地元出身の議員らを中心に、東邦亜鉛安中製錬所由来と思しき高濃度の鉛やヒ素を含んだ有毒スラグが箕郷町の公共用地や私有地に広く投棄されている実態を憂慮して、早期に撤去を行政や原因者らに求めるために協力し合っていこうという趣旨で開催されました。

集合場所の高崎市箕郷支所。

 集会は2部で構成され、第1部は「現地調査」のため、高崎市役所箕郷支所前に午後1時半に集合し、車に分乗して現地を見て回り、午後3時からは箕郷町公民館中会議室で「学習会」として、東京農工大の渡辺泉教授による「鉛やヒ素の害毒について」と題する講演があり、そのあと、「(仮称)有害スラグの撤去を求める会」の設立に向けた総会が開かれ、満場一致で承認されました。

 はじめに午後1時半から箕郷町におけるK砕投棄現場の現地調査が行われ、2つの公園と一か所の太陽光発電所などを見て回りました。子どもやお年寄りを含め、多くの市民や観光客が出入りする公園などに広く深く大量に捨てられている実態に驚きの声が上がりました。また、松之沢の太陽光発電所では、数万トンにおよぶとみられる膨大なK砕が参加者の度肝を抜きました。



初めに梅公園に向かう。









梅公園の脇の道路の反対側の空き地にもK砕がギッシリ。










続いて芝桜公園に向かう。






芝桜公園に隣接している岡田工務店の砕石プラント。










谷側に下ってゆく道の両側にもK砕の斜面が。







このあたりの擁壁は、上から崩れてくるK砕にうずもれている。

さらに谷側に下る。この辺の増勢高さは7~8mにも及ぶ。この太陽光発電所の造成工事でおよそ数万トンのK砕が投入されたに違いない。

白く見えるのは鉛の成分?背筋の凍る予感も。



第2部の会場に戻る途中出くわせた白色の車体のダンプトラック。佐藤建設工業か!?

第2部の会場の箕郷公民館。





 第1部の現地調査の後、午後3時から箕郷公民館で「有害スラグから子どもをまもろう」と題する講義が開かれ、東京農工大学の渡辺泉教授から重金属の毒性や環境汚染について幅広い切り口で分かりやすい解説を聞きました。詳しい内容は次の通りです。

*********
司会:これから学習会と有害スラグの撤去を求める会の結成総会の話し合いを始めます。私は進行係を務めます青木と言います。よろしくお願いします。(拍手)初めに伊藤県議のほうから経過報告と、併せて今日の学習会講師の渡辺教授の紹介をお願いします

県議:どうも皆さんこんにちは。(こんにちは)今日はなかなか皆さんの行いがよかったか、風もなく見学日和になりまして、すさまじいスラグ汚染の状況が見て取れたと思いますが、この間の経過について、議会でも取り上げて来た責任上、ご報告をさせていただきたいと思います。
この問題がまず、大きく明るみに出たのが、7月末に群馬県の県土整備部が、高崎渋川バイパスの中央分離帯の埋め土に・・・盛り土に、この汚染物質が検出されたというのを発表したのがきっかけでした。これは新聞にも大きく載りましたけれども、環境基準の25倍の鉛などが検出されています。
で、県は、これを施工した岡田工務店という会社に撤去しなさいという指示を、ほどなくして、します。しかし私たちは、この高渋バイパスは以前から、このスラグだけではない大同特殊鋼のスラグを扱って問題になっていた佐藤建設工業というところも、この高渋バイパスにたくさんのスラグを搬入しているのではないかという疑いもあって、その辺を探っていたのですが、こちらの岡田工務店のことについてはほとんど調査をしていませんでしたので、では、一回調査をしてみようというふうに思いました。で、オンブズマン群馬の小川さんのHPを見ると、その辺の経緯が見て取れたので、では、箕郷周辺だろうということで狙いをつけて、回ってみたんですね。そうしたら、それが大体8月の末ぐらいに回ったんですが、まあ、あるわあるわ。

これは県が路肩の建材から検出したというふうに言っているものですが、環境基準を上回る数値が出てきていると。とくに溶出量調査というのは、それほど大きな・・・溶出量というのは溶け出した、水などに溶け出す有害物質の量を溶出量調査と言いますけれども、それでは余り大きな値は出てきませんが、含有量調査、どれだけ含まれているかという調査ではたくさんの鉛が出ていると、いうことでした。

それを受けて私たちが調査してみると、まあ、本当に今日も見ていただいた、最初に見つけたところはこの箕郷芝桜公園駐車場なんですけれども、まあ、ありましたね。草が生えていないところはこういうふうになって、全部スラグだったと、いうことであります。

じゃあ、ここにもあるのではないかと思って、箕郷の上の駐車場のほう・・・芝桜公園の上の道路に出てみると、これなどがそうなのですが、もう、ここは、アスファルト、コンクリートとの部分です。ここは違うんです。同じようにパシッとしていますが、こっちらはスラグで、もう固くてハンマーで叩いても、ハンマーが入らないと、いうほどの場所ですね。これなど本当にスラグそのものです。
ここは、ちょっと写りが悪いんですけども、道路の端ではどのくらいの厚さで、このスラグが積まれているかというと、まあ30センチくらい積まれている、というのがここでは見て取れました。

で、ここ、これらのところもありましたし、これからこの、箕郷の蟹沢梅林の公園の駐車場も、ものすごい広い範囲にわたって、このスラグを見つけることができました。これも今日、皆さんに見ていただきました。それからこれは自衛隊の駐屯地の程違い、パラボラアンテナがたくさん立っているような工場がありますよね。あの斜向いあたりの箕郷と榛東村の境にある太陽光パネルの場所なんですが、ここにもこういうスラグがびっしり敷き詰められていたと。今日見たところは、これとは別の太陽光発電所でしたけれども、まあ、一番厚い所では、7、8mもあるスラグが、もう剥き出しで、野積みで、土留めもちゃんとできないほどに、ぐずぐず崩れながら、太陽光発電所の下に埋め土として使われていたと、いう状況でありました。

これは私たち共産党の県議団が政務活動費を使って、大阪の研究所に送って4カ所だけですけれども、測ったところ、やはり県の調査と同じで、溶出量調査では、環境基準のここでは9倍近い値が出ていますが、他のところでは出ていないところもありましたが、含有量調査では、どこも全部、鉛は環境基準を数十倍上回る、特に多かったのは、60倍を上回る、そういう高濃度の鉛の汚染が確認をされたと、いうことであります

で、このことは、毎日新聞にはスクープしてもらいまして、大きく載りました。だんだんこういうほんとにマスコミの皆さんに書いてもらうというのは非常に大切なことで、これからも、ぜひ情報提供をしていきたいと思うんですけども。

この、実をいうと岡田工務店の砕石場と言われているのが、松之沢を上がっていく途中にあるんです。左に、榛名郷の養護施設などが並んでいるところをまっすぐ行くと、ヘアピンカーブになります、ヘアピンカーブになってちょっと行くと、またヘアピンカーブがあるんですが、そのヘアピンカーブのところから林道を降りて行って、数百メートルのところに行くんですが、こういう、もう、砕石、いわゆる榛名のこれは、土石流か何かの堆積物の中から山砂利を掘るという砕石場と思うんですが、その砕石場に、ほとんど砕石が取り終わった、その場所にスラグが大量に、山積みに、野晒しで、捨ててあると。ここから、持って行ったりもしているのではないのかなと、いうふうに私たちは思っています。

で、そういう岡田工務店のHPですね。小川さんが監視をしていてくれて、2017年4月13日以前の岡田工務店のHPでは、こういう非鉄スラグという、「K砕」というスラグ。これを、化粧ブロック、タイルだとか、そういうやつを砕いたやつと混ぜて、それで、使うと、草も生えないし、ピシッとなって、すごいよい建材だよという、こういう宣伝文句が出ているんです。その宣伝の、どういうふうにやって運んできて、どうやって混ぜるのかというところまで、工場の中間処理施設の、この中間処理施設がちょうど今日見ていただいた、芝桜公園の隣りにあるんですよね、隣接して。そこでこういう工程をやっているらしいんですけれども、その、同じHPのところには、東邦亜鉛がこのK砕と呼ばれるスラグに、「これは無害ですよ」ということを示すために、くっつけたと思われる、そういう試験報告書が載っているんです。これには全部、「不検出」となっていますけれども、こんなの信じられるわけないですよね。例の大同特殊鋼のスラグの事件の時も、こういうのがありましたが、全部、基準値以下でしたが、実際はそうではない、たいへん上回るフッ素などが検出されているわけですから。実際に今回も、私たちがそういうスラグのところを検査すれば、県の検査でも大量の鉛が検出されるとい状況だったわけですから、ほんとに問題だと思います。これは、小川さんが東邦亜鉛にこの「K砕」について質問をしたら、すぐに消されてしまったそうです。やましいから消されるんでしょうね。

で、私たちは自分たちの調査結果をもとに、今日担当の県議団・市議団として、知事と市長に申し入れをしました。このスラグについて、県も市も、これがスラグだとなかなか認めないで、路盤材から見つかった毒物が見つかった、ガレキに毒物が含まれていたという言い方をするんですが、そうではないだろうと。もう、見た目ではっきりわかるような産業廃棄物のスラグではないかと。スラグとガレキでは、それを扱う法律的な中身も違って来るわけですから、それなので、直ちにスラグ、産業廃棄物の不法投棄事案として認定して、動きなさいよ、ということ。それから、敷砂利等の工事を行った業者と企業を、スラグを排出した企業を早急に調査して明らかにしなさいと。それから施工業者から施工箇所を聴き出すと共に、広く県民に情報提供を呼び掛けて、汚染の状況、広がりを把握しなさいと。そして、原因者の責任で汚染物質の撤去と原状の回復をさせなさいと。ここが肝心なんですよね。廃棄物・・廃掃法、廃棄物の清掃に関する法律というところには、こういう不法投棄などをやった人には、知事や市長が命令を出して、原状回復しなさいという措置命令というのを出せるんです。そうするとそういう人たちが自分の責任でやらなくてはいけないわけです。そうしないと、この物質を撤去するというのも税金でやりかねないような状況になってしまうわけですから、やはりそういう責任者を明らかにしなさいよ、と、こういうことを申し入れをしました。

しかし、なかなか、これ、高崎市もつい最近、調査しますと言って、調査をしたら、こういう、高濃度の57倍の、私たちが検査したのと同じような高濃度の鉛が検出された、ということを明らかにしています。で、私たちは県議会でも市議会でもこれを取り上げました。でも、どういうあれか、こちらの資料の裏側のほうに一応載せましたが、この、そもそも、現在行われている高渋バイパスの汚染物質の廃棄物の撤去工事というのは、廃棄物の撤去工事なのか、瑕疵担保責任、つまり契約とは違ったものを使ったから、それを契約通りではないではないかという、そういうので撤去させるのか、どっちなのかと訊いたら、瑕疵担保責任の工事ですと、こういうふうに答えたが、私は、建設資材にどうして汚染物資が入ったのか、どうして混入したのか、というふうに聞くと「施工担当しました業者に聞き取り等を行ったところ、材料をよく確認にしないで搬出してしまった」などというような、とぼけた答弁をするんですね。あのスラグね、一目で見てスラグでしょう。どう見ても建設資材ではないということぐらい、はっきりわかるものを、よく確認しないで出してしまった、ということをそのまま県は受け入れているわけですね。県とすれば、そういうものが使われた、それが瑕疵だというふうに認めたんだけれども、普通ガレキを汚染した有害物質は何なのか、という調査を特定してやるのが常識だと。どうして特定しないのか、容易に特定できるでしょうと。業者に聞けばわかるのではないか、と聞いても、「当該建設資材だけでなく、その・・・そうではなくて、何と言ったっけな・・・業者に確認しましたところ、それを確認するような資料が残っていないと、こういうふうに答えたんですね。

でも今日見た通り、あの、最後の太陽光パネルのところは、もう、あそこだけで数万トンのスラグがありますよね。あれがどこから来たのか、資料が残っていないとか、そんな言い訳が通用するはずがないと思うんですね。そういうので、県はかなり苦しい言い訳を続けています。これは、あとで読んでいただければと思いますが、でも、そういう県を、やはり議会の中だけではなかなか動かすことが難しいんですね、ほんとにもっと世論を盛り上げて、住民の声として、この有害スラグを直ちに原因者の責任で撤去させろと、こういう声を上げていくために、ぜひ今日の会の結成を成功させていただいて、と思っています。私からの報告は以上です、ありがとございます。(場内拍手)今日は、それで、東京農工大の重金属汚染の問題を中心に研究されている渡辺泉先生に来ていただいて、まず私たちが、鉛の害や重金属の害というのがどういうものなのか、環境の中では、どうやって汚染を広げていくのか、どうやってその汚染を解消すればよいのかというのを、やはり知らないと、周りの人たちに話せないと思いますので、まず、この鉛の害、重金属の汚染について、勉強させていただきたいというふうに思います、渡辺先生をご紹介します。(拍手)

講師:皆さんこんにちは。東京農工大学の渡辺と申します。実は、群馬にこういう形で来るのは3年ぶりになりまして、今から4年ぐらい前に大同特殊鋼のスラグ問題で、やはり酒井さんと伊藤さん、あとは渋川市の角田さんからも、その時にお呼びを受けまして、学習会等をさせていただきました。正直、驚きましたのは、日本の中でもこんなことはないぞ、というくらい酷いことが行われている、というのはもう事実でございます。
昨今、日本人全体がこうマヒしているところがありまして、例えば放射能の汚染などというのは、かなり深刻な話なのですが、もう今や福島に行くと、住民の被害の方々も忘れたい忘れたいで、こう、盛り下がっていますね。今日も何となく予想していましたが、ちょっと失礼ですが、ご年配の方が多いという。これはちょっとやはり今の日本の社会の一つを表しておりまして、国会議事堂、内閣総理大臣の前のデモなども、原発がらみのところに行ってみますと、やはり来られているのは年配の方なんですね。できたらもっと若いかたに来て欲しいということがありまして、この環境離れみたいな、この汚染に対してマヒしているというのは若い人たちの中でも随分広がっておりまして、今うちの学生に現場を見せたいと思い連れてきましたけれども、環境を売りにして実際に環境問題を戦っている数少ない学部・学科でありながら、今もう、どんどん高校生が集まらなくなった。環境問題にほんとうに関心がないという、そういう状態になっています。今回、これからお話させていただく中でも、重金属、ずっと私は重金属をやっていたんですが、非常にやっぱり、ほんとに非常に深刻な問題なので、出来ればせめて、若いお母さん、子どもを育てているお母さんたちとかがもっと意識をもって、これはもう明日、我が子が触れてこれを口に入れるかもしれないという危機感を持っていただけると違うのにな、と常々思うんですけども、なかなかこの実際に目に見えない、匂いも味もないという、この汚染が広がっていって、いつの間にか、蝕まれていっている。大事な健康が蝕まれていることに関する意識がものすごく低いというのが、これは群馬だけでなく、日本全国の、残念ながら現状であります。ですので、まあ、今回ここは非常に失礼な話ですが一つのケースとして、ぜひ世論という形で盛り上げていただいて、群馬はちゃんと自分たちの力で汚染をきれいにしたではないかという、そういうケースに、ぜひ、していただきたいなというふうに、ほんとうに心から思うわけでございます。
ということで、今日の学習会の内容ですが、まず重金属とは、というところから始めようかなと思いましたが、ここら辺は今日ちょっと現場を見た皆さんには、それ以上の衝撃があったかなと思いますので、ちょっと端折りながら、何が問題点なのかということとか、毒性に関して若干なのですが、特に鉛とヒ素について、こんな恐怖というか、危機がありますよ、ということを特に力を入れて紹介したいと考えております。

それで「重金属とは」ということですが、これは忘れてはならないのは過去に非常に悲惨な汚染を日本、我が国で起こしていると、いうことなんですね。今はもうこういう写真を使うのは環境倫理と言って、こう嫌がられるというか、避ける傾向があるが、残念ながらこういう衝撃的な映像はやはり見せて、明日こうなりますよと言うことをやはりイメージの中で持たないとなかなか、環境行政というのは恐怖が先に立たないと、一歩も先に進めないという残念な現実があります。

これは有名な水俣病の胎児性患者ということで、お腹の中でメチル水銀に暴露しまして、結局若くして亡くなるんですが、お母さんという言葉を一言も言えなかったという有名な上村智子さんの往年の写真です。こちらはすぐ隣りの富山県ですが、イタイイタイ病ですね、女性の方が、まあ骨が折れて37センチも背が縮んでしまうというおばあさんです。ただ単に肋骨が咳をしただけでも折れて、しばらく痛い。指先が折れただけでもめちゃめちゃ痛いんですよね。それがもう酷い人になると60何カ所折れて、もうこうなって足の形を留めていないような、こういう悲惨な重金属による汚染も、やはり我が国が経験しているんだということをちゃんと後世にも伝えて問題意識を高めていくというのは、とても大事なことではないかというふうに考えています。
さて、ここからは、軽くもう皆さん、なんだこれは、という記号が続くところなので、駆け足で行きたいと思いますが、重金属、重金属と言うと、どうしても我々日本人一般に、公害病の汚染物質だよというようなイメージがあるんですが、実はこの世の中、できている大体104個くらいあると言われている元素のうちの70%は重金属なんです。ですので、一口に重金属汚染と言っても、なかなか様々なタイプがあるということもあって、今回に関しましては、特に鉛ですね。ヒ素も非常にやっかいな問題ではあるのですが、鉛というのはどんなに厄介なものなのか、というのが最後に分かっていただければ学習会としては成功なのかな、というふうには考えています。
そうは言いながら、今のプラスチック、今、東京農工大もこのプラスチック汚染と激しく戦っている大学なのですが、もう我々の生活の中にもう密着している素材。まあ人類の文明のひとつを現すような大事な素材でもあるわけですね。

ここに使っています、これはちょっと古いですけども、携帯電話などというのも、ありとあらゆるところに重金属というのが使われている。で、それを作っているのが、例えば東邦亜鉛だったり、大同特殊鋼だったりして、そのある種、ゴミなわけです。ですので、群馬県はゴミ箱にされているんだというふうに、意識を持たれてよいのではないかというふうに思っております。そいことで、今、さまざまな材料として重金属が使われていますよ、ということですが、汚染物質として考えた時に、というなのですが、ざっくりいうと、有機系の汚染、無機系の汚染というふうに、分けるということが、これは化学分野でもよくあります。その中で、有機系というと、農薬とか、各種薬剤、PCBとか、ダイオキシンとか、聞いたことがあると思いますが、環境ホルモンだとか、今はもう完全に消されてしまいましたが、世界的にはまだ環境ホルモンというのは物凄く深刻な、それこそお母さんから子どもに伝わる汚染なんですが、もう一つの物質として重金属等というのがあります。

これは土壌汚染対策法ということで、汚染を対策しようという、これは先ほど弁護士の方とか、午前中はお話させていただいていたんですが、土対法ってすごい不思議な法律ですねとおっしゃっていました。ああなるほどなあと、改めて思ったんですが、水質汚濁防止法、水濁法といわれています。大気汚染防止法、大気汚染法と言いますが、「防止法」なんです。しかし土壌は「対策法」なんです。対策ですので、対策を取りましょうねということで、ここに、国が持っている土壌汚染をつついてほしくないという、非常に根深い構造が法律の中にも見て取れるわけですね。

この土対法は2003年に施行されまして、もうその中でもかなりザル、ザル法の中でも非常に酷い内容だということが言われましたが、その一つが含有量試験という、今回凄い濃度が出たものなんです。なかなか実は含有量が上回るように設定していないんです。ものすごい高い濃度を設定しておりまして、もうこれは地球が終わるのではないかというような濃度を超えて初めて含有量を超えるんですが、それが今回出ているということは、私も含めてかなり驚きを持っています。日本の中で含有量を超えるというのは、あるのか、というくらい、私は初めてケースとして見たかもしれないのですが、その中でも、こういうVOCと言われるような有機系のもの、後はPCBとか、ある種の農薬など、これに重金属類という形でまとめられています。それぐらい、歴史的にも現状としても重金属って何か凄そうだなと思うわけですが、日本の中ではもう既に終わった問題だという意識が物凄くありまして、環境ホルモン、プラスチックの問題とか、今すごく熱いなと思うかもしれませんが、重金属は、ああ昔水俣病があったやつね、というくらいのイメージだが、いえいえと言うところがこれからのお話しです。重金属汚染は終わっていないというふうに今書いていますがほんとによく言われます。
しかし我々専門家から言わせていただいても、忘れてはならない非常に重い教訓と、しかも現在進行形の汚染の問題があるというところなんですが、4大公害病と言われているイタイイタイ病、水俣病、第二水俣病、四日市。この中の3つまでが重金属によって引き起こされています。あと公害と言うと、2種公害、1種公害というふうに言われます。昔、公害公害で、私も九州のはずれの田舎の漁村みたいなところで生まれているんですが、非常にこう汚れてまして、尼崎の公害ですね、九州だと北九州にすごい公害がありましたね。関東圏でも川崎、千葉とか、あれ全部第1種公害ということで、大気汚染なんです。これは1988年ですから今からもう30年くらい前に全解除ということで、今日本の中で大気汚染で苦しんでいる地域、第1種はないです。ここもちょっと欺瞞が含まれていますが、どっちがその当時、4大公害病が起きた時に、激しいというふうに認識したかというと、このカドミウム、水銀等のこの公害病なわけですが、これを敢えて第2種というふうにこう貶めるようなことをして、目を逸らそうとしたが、気付いてみると88年に1種が全解除しているんですが、第2種はまだ残っている。で、この残っているところは富山県、熊本県、新潟県、宮崎県、島根県の一部というふうに表記されるんですが、これはもうイタイイタイ病、水俣病、第2水俣病、そして土呂久ヒ素公害、島根の笹谷ヒ素公害ということで全部重金属なんです。まあ、後から繰り返しこの話をしますが、重金属汚染の厄介さというのは一度汚染されると、もう除去できないというくらい、非常に残留性が高い問題ということで、過去の汚染も公害と言われるところも、まだ残っているのは全部重金属の問題だということになります。
では、現在の世界の状況を見てどうなのかというと、実は重金属はまだまだ世界的にも問題を持ったものでありまして、オバマ大統領って、今はもう違う大統領が大暴れして、オバマさんがやっていたことが陰に隠れているようなところがありますけれども、辞める直前、ほんとに辞める直前の2015年に非常事態宣言をアメリカの中で宣言をしているんです。何に対してか。これはオバマさんが激怒したと言われています。
これですね、まず、小浜大統領が非常事態宣言。鉛を、水道の鉛汚染が、初めて明らかになってみると、アメリカ中が鉛の、本当に毒を摂取しているのではないか、という状況になっている。とくに、これ特別レポート、NYですけども、NYの古いビルディングとかから、今すごい大量の鉛が検出されまして今年になっても何度も何度もニュースになり続けているということで、今アメリカは、トランプさんは環境問題から引き揚げたくてしょうがないんですけれども、世論はもう許していないという状態でして、特に鉛に関してはものすごく気にしている。なぜかと言うと、ここなんですよ。今回、伊藤さんたちが付けたタイトルでも流石だなと思いましたが、「子どもを守る」というのがものすごく大事なのですが、「子どもは決して小さな大人ではない」ということ。これは薬学、とくに毒性学のほうでの常識ですけども、では私の半分の大きさなので、薬を半分飲ませればよいかというと、それだと、物凄い重篤な副作用等を起こすことがあるわけですね。まだ全然発達していないところ、その中で一番ヤバイと言われている物質が実は鉛なんですね。とある隣国ですけれども、ある国が凄いです。「重金属」と打ちますと、これをグーグルですけども、全部漢字で出てくるんです。それくらい中国という国は、国を挙げて、「やはり重金属ヤバイぞ」ということで、習近平もかなり大きな政策を打とうとするんですけれども、14億人いるわけですよ。日本の10倍ですので、日本で100人に1人悪いひとがいたら、向こうは10人いるという、そういうクラスで、凄い法律を作って頑張っているんですが、なかなかそれが末端で守られていないという現状があって、それはどこかの県にも通じるところではないかというような感じがするわけです。(場内苦笑)
さて、日本も環境汚染のレべルが低くなっているというか、確かに、東京はとにかく暑いんですね。夏になると。もうギラギラして、ホームに立っているとクラクラするくらいなんですけれど、大気汚染の専門家のかたに言わせると、「いや渡辺さん、これは東京の汚染がなくなったから、こんなにきれいなんですよ」というくらい、もう本当に日本の子ども達は汚染というのがどこにあるのか分からないような感じにもなっているわけです。けれども、ニュースを丹念に拾いますと、1月から拾っていくと、あっという間に10件、拾っていけます。
ああ、なるほどと、江東区、これは豊洲ですけれども、ベンゼン、ヒ素が出ました。これはちょっと私も関係させていただきましたが、姫路でも同じように市場の移転先でベンゼンが出て来る。で、ゴミ焼却場の跡地で鉛、ヒ素、フッ素。どこかで見たことのあるラインアップですが、出てくる(場内苦笑)。隣の県、栃木県の清掃センターで、やっぱり鉛、フッ素。山口県では、給食の玄米からカドミウムが出て来る。で、ダーッと言って行くと、じゃあ、我々の時に一番最初に飛び込んできたのは、大阪の豊中というところの学校の予定地で、「鉛とヒ素が出ましたよ」というのがあったんですが、これが1か月後には日本中を揺るがす大きな、森友問題というふうになっていくんです。最初我々のところには、汚染が出たよ。学校の予定地からだ。あっ、それは子どものこと考えたら絶対だめだね」と言っていたら、それがあの大事件になったということで、このスライドが捨てられなくなりまして、こういうところ出させているものなんですけれども。では、最近どうなのかというと、特に重金属だけで絞っていっても、僅か9月から拾い始めるだけで、もう一気に10件行くんですね。11件目入れたのは9月29日に、これもニュースになったんですが、私がこの時佐倉に呼ばれたんですが、「再生土」といって、もう殆ど群馬と同じ構造で起きています。これはもう非常に汚れた、ハッキリ言ってゴミですね。それを逆有償ということで「これは建設資材なんですよ。有効な資材ですよ」ということで、実はあの、千葉の県知事さんも非常に悪名高い方ですが、千葉中でもう、新しく最近できた造成地は殆どゴミで作っているというようなことは、だんだん明らかになっていまして、市議会のレベルで随分こう取り上げながら私たちも、その市議会で出してくる、出す調査なんかに協力しながら、実際測ってみますとかなり様々な汚染物質が出てくるというようなことは起きています。これがまあ、今年の8月の終わりからざっと拾ってみたものです。この9月18日には高崎の公園駐車場で、これが伊藤さん達の今回の仕事ではないか、ということで、まあ、ここに呼ばれて来て、今いるということになります。で、重金属汚染がどんな感じなのかなということで、2003年の土対法施行前に環境省がずーっと調査するんですけれども、最初は有機系の汚染が多いんですね。ところが調べれば調べるほど、あるところから重金属汚染のほうが圧倒的な差をもって大きくなります。ということで、実は日本政府も、世界の国もそうなんですけれども、重金属汚染は厄介なので手を付けたくないんですね。ですので、後からお話ししますが、世界でも多分一番の問題は、鉛なんですけれども。水銀には何とか手を付けます。水俣条約というので、今、世界的にも大きく水銀に関しては動き始めようとしていますが、もっと大きな鉛は、大き過ぎて手が付けられないという、そういう状態になっている現状であります。
まあ、実際にこれは土対法の最後のほうの調査なのですが、有機系のものに比べて重金属が多い。そして見てみると、ヒ素、鉛、六価クロム。これが3トップとして、あるということで、まあ、全部群馬と関係しそうなものが出てくるわけですね。
で、世界のこれは汚染物質の量の問題なのですが、ブラック・スミス研究所といって結構良心的な、年度末に今の地球の現状はこんなことになっていますと、報告する機関なのですが、2010年11月には世界中で占められている汚染のNo.1は鉛です。そして2番目が水銀です。3番目がクロム。4番目がヒ素ということで、4番目まで全部重金属ということで、世界的にも重金属は結構苦しんでいるところが多いと思うんですね。
で、ここも凄いのですが、10年の11月に放射性物質が5位につけているんですけれども、これ多分、翌年の3月以降やると、ぐっと上がってしまっていて、多分1位、2位のところに食い込むくらいの被曝をもたらしているというのが、日本の現在の状況でもあるわけです。
次に質の問題なのですが、これちょっと字が細かいのでゆっくり読ませてもらいますけれども、自閉症や学習障害に寄与することが疑われている消費者製品中の化学物質ということで、世界の科学者、エンバイロメンタル・ヘルス・パースペクティブ(EHP)という我々の世界でもかなりクオリティの高い雑誌が発表しましたが、アメリカのNIIの研究結果をまとめているのですけれども、子どもの自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動症、ADHDですけれども、こういう神経行動障害を引き起こすだろうと思われるトップは、やはり鉛なんです。で、2位は水俣病の水銀、その後はちょっと有機系の農薬等が続きますが、そういう意味では、鉛が量も質も、世界で最も危険な、懸念されている物資でもあるわけであります。
ま、駆け足でちょっと早口で進んでいますけれども、日本の、伊藤さんから重金属の過去の事例等の、という話が有ったので、示したいんですが、今回ヒ素ですが、皮膚障害から皮膚がんになっていくということで有名なんですが、私、九州だったので、土呂久ヒ素公害というのはうっすらまだ覚えています。公害というと土呂久、水俣もありましたが、土呂久があるではないかということで育ってきたんですけど、大学に入ってみると周りを見ると誰も土呂久を知らないということで、結構ビックリするんですけれども、ここであえて取り上げたいのは足尾銅山鉱毒事件であります。

これは隣の県だということもありまして、あとは公害の原点ということで、本当に学ぶべきことが多いんですけど、まあ、それを話し始めると授業と同じになってしまいますので、もう、本当に端折りながら本質をお話ししていきたいんです。





まあ足尾銅山、ここで採掘しまして、渡良瀬川から利根川に入るという、この地域で起きた「鉱毒」と言われる明治時代の事件なんですけれども、三大鉱毒事件、ということで、日立、別子、これは愛媛県ですね。で、秋田の小坂を入れると4大煙害事件になりますが、こういう有名な、問題だったわけですが。なぜ足尾がこれだけ残ったかというと、たった一人の人の力なんですね。田中正造という偉人が出まして、命をかけて、最後はほとんど野垂れ死にをしているわけですけれども、きれいに財産を使い上げながらその人がひたすら文章を書いて残していることがあったので、足尾銅山が今も我々の原点となっているわけです。実際の被害は、日立でも、茨城ですね、別子、愛媛でも、秋田でも結構酷いことが日本中で起きていて、これらは田中正造が出なかったので、もう忘れさられているということもあるわけですが、その時に良く言われるのは、「あれは銅ではないか」と。銅というのは必須元素なんですよ。我々10円玉を飲んでも死なないじゃないですか。まあ、あれは実は青銅という、ちょっと銅とは少し違ったものなんですけども、実際に体の中にはかなりの銅を必要とします。ですので、イカやエビをちょっと食べないと老人のかたは、よくありませんよ、っていうのは、そこから重大な障害がありますのでしっかりと銅を採ってくださいということがあるわけですが、それを言い始めると、もう、鉱毒による被害はほんとにあったのかと。殆ど報告がないではないか、ということで、あれは全部魚類が死んだだけでしょう、魚がプカプカ浮いただけじゃないですか、農作物でしょう、だと言われてます。実際に稲に対して、銅の毒性というのは物凄くありまして、それで実入りが少なくなったおかげで周辺の百姓のかたがたが貧困に喘いで衛生状態が悪くなったのだということが、一応今の足尾銅山の人的被害だというふうに言われている。まあ、森林破壊や実際の鉱山の荒廃ということで、100年経っても草木、木も一本も生えてこないというのが、これがすぐ横の栃木県の山で起きている実態でありますけれども、今、若干回復しつつありますが、植えても植えても木が育たないんですね。これは残留しているわけですが、植物に対する被害というのがあります。
じゃあどうなんですかって、人的被害はほんとになかったのかということですが、まあ、寒村荒畑さんですが、無害の他国・・無害は他国が6に対して、栃木、下野は2もあって、鉱毒死はその逆だと、その実は毒に死す薄幸の人なり、とか、結構、格調の高い文章で、人の体も毒に染み入り、孕めるものは流産をし、なぐくむ乳に不足なし、3つくらいまでは育てますが、毒の障りにみな倒れてしまうと、まあ「非命の死者」というように田中正造なんかは言っていますけど、ちゃんと記録は残っているんですね。ところが熊本大学が、最近、20世紀近くになって調査してみましても、健康被害があったかどうか、よく分からないというような結果を出している。ここで、原田正純先生という、水銀でものすごく活躍されて、残念ながら3.11を見た後に亡くなってしまったが、原田先生が指摘しているのは、この随伴元素の存在なんですね。つまり、銅の、純粋な銅というのは必須元素で体の中に必要ですから、銅中毒なんかあるはずないではないかというふうに、すり替えられてしまったおかげで、複合汚染だっていう事実を無視している。ということで、ここからなんですが、スラグというのは、実は様々なものを含む可能性がある。ということで、今回カドミが出てこないのが「へえーっ」と思ったが、この足尾を我々も調査したが、ヒ素、鉛、ビスマス、クロムというのが、やはり渡良瀬川の流域、ちょっとコアをとってみて、柱状で掘りますと綺麗に出てきます。足尾銅山はその時に輸入して、そこであたかも自分達が作ったかのようにして製錬していた、その持ち込まれた鉱物の組成が見事にプロファイルとして残っていますので、これが今回、我々がもしご協力できればと思うところなんですが、スラグを分析することで、あっ、このスラグは非常に特殊なスラグですよという、ソースをある程度特定できることがあるのではないかということです。

まあ、このスラグですよね。普通のひとは、なんなのか、という、まあよくこう刀鍛冶なんかのイメージがありますが、パラパラとこう外れていくじゃないですか。あれを鍛えていってどんどんいい刀にするんだといっていますが、あのとき落ちていくのが、ざっくりスラグで、まあ、カスですね。

で、成分は鉄とかカルシウムなんかを主体とした金属成分なのですが、今回はたぶん、まあ、さまざまな過程で出来ていて、これは大同のときの資料を使っているんですが、高炉系スラグなどか、電気炉系スラグということで、用途に応じてスラグというのが出てまいります。で、今日見た感じ、まあ鉄鋼スラグ、鉄がずいぶん入っているなというふうなイメージがありましたが、亜鉛なり鉛なりを精製するときに出て来るゴミということで、かなりいろいろな過程から出てくるので、出てくるもので組成が違うということもありますのでえ、ちょっと気を付けないと騙されかねないところもあるのですけれども。なんとか、このスラグですよというのが、オリジナルのものが手に入るとだいぶ攻め方も違ってくるかなという感じがあります。ということで、スラグの成分ですが、さまざまな精製の仕方によってカルシウム、ケイ素、鉄、マグネシウム、アルミニウム、リン酸、マンガンとかの組成が変わってくる。しかしある種、これを手掛かりにしていけばこれとこれが一致するから東邦亜鉛のもので間違いないじゃないですかということが言える可能性も出てくるということで、随伴元素というのがものすごく大事になってきます。

重金属の問題は何が問題かと言うと、一般に有害な化学物質というのは毒性が高い、生物蓄積性が高い、残留性が高いという、とくに生物蓄積性と残留性というのが、今、国際的には最も問題になります。毒性がいくら低くても、ずっと暴露し続ける、ということのほうが大変で、しかも生物に取り込まれ易いものの方がヤバイですよ、というふうに考えられる。重金属汚染というのは人類が滅んでも残るというふうに、その残留性という中では他の物質を突出して、突き抜けているような性質があるわけですね。このまま放っておくと群馬県は1000年先にもこの汚染が残り続けるということが、起こりうるのが重金属汚染、決して分解されないという非常に厄介なものでもあります。

それで、金属の毒性の基本的な知見ですが、ぱっと走りながら行きたいなと思いますが、元素によって毒性が異なるので、重金属の毒性って、一般的なものはなかなか、こう、言いにくいところがある。いろいろダラダラと書いていますが、ひとつは必須元素があるために起こる場合が多い、という厄介なところがあります。つまり、我々の体は、鉄をだいたい釘一本くらい体の中に持っていると言われます。その鉄を採るために、先ほど言いました亜鉛とか銅とか、マンガンとかを取り込むために、どうしても、他の重金属も取り込んでしまう、同じメカニズムの経路を持ってしまっている。そこへ紛れ込んで、基本的には、本来なら必須元素が行うべき酵素活性などを阻害することによって、肝臓障害から死に至るという、そういう大きな道筋があるわけですね。つまり、必須元素にはどんなものがありますかというと、動物だけでざっと20種類くらいあると言われている。特に恐ろしいのは、カドミウムとかヒ素といものも、実は必須元素、大きな意味での必須元素という意味では、必須性が疑われるものでもあります。鉛も一応ですね、一部の生物には必須性があるのではないかといわれているところもありまして、ここもちょっと厄介なところでもあるわけですが、重金属の毒性の特徴は、これは一般的な毒性の毒物の特徴ですが、いろいろな形がありますが、たくさん投与されるとすごい反応がある。酒をたくさん飲むとひどく酔っ払うという、この非常にシンプルな関係がある。ほとんどの物質がこれなんですが、閾値を持つ「B」の用法、これはある所までは毒性を発生しない。で、ある所を超えると、ああ、と毒性をオーバーしましたねということで、だんだん問題になりまして、最後は死に至るというふうになるわけです。重金属はそれと違いまして、必須性があるので、むしろ無いと、もう困る。欠乏状態というのができてしまうということがあります。なので、保健の、国連の知人の事務官らと話をしていますと、実は世界的にみると、重金属の問題というのは欠乏症のほうが大きい問題なのだよという、そういう真逆の見解をされて、えっと思ったりもするんですが。

厄介なのはこういう、ある最適なところがあるが、勿論、濃度が増えると先ほどの、飲むと酔っ払うというところの式に当てはまり、どんどん毒性も上がっていきますが、欠乏症もできてしまうということで、このU字型のパターンをとるのが重金属のやっかいさで。動物に最適な範囲が、ある元素は非常に狭かったりとか、動物の種によってこれが向こうにずれたりこっちにずれたり、というようなことがあって、なかなか毒性一般の話をするのが難しい存在でもあるわけです。まあ、毒性、重金属によってさまざまなことがあります。
資料でお見せしたのでざっと見てほしいのですが、まあ、鉛、感覚異常、胃腸障害とか神経症、貧血とかありますが、昔からよく知られていることがここに書かれております。ヒ素ですと皮膚の障害とか胃腸障害だとか、あとでもう少し細かいお話をさせていただきます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項つづく】
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