■前橋市は住民に対する行政サービスとともに、税滞納者への徹底した財産調査と差押えを最優先しており、2015年度の年間差押え件数は1万件を超えるなど全国的にトップレベルにありました。ところがそうして集めた血税を湯水のように浪費していることも、職員への時間外手当不正支給事件など当会の活動を通じて立証されたかたちになっております。そうしたなか、東京新聞に、前橋市が保健所を通じて2017年度に前橋市自殺対策推進協議会の委員を市民対象に一般公募した際に、選考過程で落選した職員OBを、独自に加点して合格させ、既に選んでいた意欲ある一般市民を排除したことが判明しました。さすがに殺人ストーカー職員を輩出した自治体だけのことはあります。
**********東京新聞2019年9月21日
【群馬】前橋市自殺対策協 17年度公募委員 落選の元職員を特別選出
↑市民公募で元職員を特別扱いしていた前橋市保健所=前橋市で↑
前橋市保健所が二〇一七年度に市自殺対策推進協議会の委員を市民対象に公募した際、選考過程で一度は落選した元職員を特別扱いして選出し、その代わりに既に選んでいた一般市民を委員から除外していたことが分かった。市保健予防課は「誤った判断で、特別扱いと言われてもやむを得ない。市民の期待を裏切り、申し訳なかった」と謝罪している。 (菅原洋)
協議会は一七年度に設置され、市の自殺対策推進計画の策定や評価をしている。同年度は七月から三回の審議が開かれた。委員の任期は二年で、有識者や関係団体の代表者ら計二十人で構成し、このうち二人を市民の公募枠とした。
公募は自殺を減らすため、市民から多様な意見を聞くのが狙い。一七年春に市内の二十歳以上を対象に市の広報誌やホームページで募り、四人の市民が所定の用紙に職業や動機・抱負の作文(四百字程度)などを書いて応募した。
審査は書類選考のみで健康部長、保健所長、保健予防課長が公平性を保つため職業や氏名などを伏せ、作文を「施策推進に対する考え方・視点」「行政との一体感」など四項目について五点満点で評価した。ところが応募した四人のうち一七年三月まで市の職員だった保健師が作文を四行しか書かず、採点は最下位となった。
このため、元職員の作文と分かっていた担当者たちが、元職員にのみ所定の用紙と異なったノートに約十五行の作文を特別に書いてもらい、元職員は最高点で最終的に選出された。担当者たちは作文を依頼した段階で、元職員を選出させるのが前提だったという。
これを受け、一度は選出されていた市民が落選。この市民の作文は自らの経験に基づいて委員になることを志した内容だった。市保健所は落選者二人への対応を検討している。
最終的に選出された元職員と市民の二人は任期満了で今年の六月末に退任し、公正に改選したという。
こうした選考は今年三月末にまとまった一八年度の包括外部監査結果報告書で「(元職員を)特別扱いしたと考えられる。公平性を保った選考がなされるべきだ」と厳しく指摘された。
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この自殺対策推進協議会(あるいは委員会、懇談会とも称する)は、近年、我が国において自殺による死亡者数が年間3万人以上と言う、高い水準で推移している状況にあることから、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにして、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図るための自殺対策基本法が2006年(平成18年)6月21日に公布、同年10月28日に施行されたことをきっかけに、各地の自治体に設置されているようです。
そのうち会議のメンバーを公募しているところは極めて少なく、その点では前橋市は二人も公募している点は評価できます。ところが前橋市は、元市職員の保健師を優遇して選んでしまいました。報酬は当然支払われると思われます。実際に調べたわけではありませんが、当会会員らによれば、前橋市の場合、1回につき8,880円程度とのことです。ちなみに群馬県の場合は1万2,000円程度のようです。
公募に応じた意欲のある一般市民を落として、職員仲間を採用するという典型的な役所根性の賜物のような一件ですが、前橋市の包括外部監査結果報告書の内容を調べて、こうして記事にした東京新聞の記者の着眼点の鋭さに、当会としても拍手を送りたいと思います。
また、この報告書を作成したのは、前橋市内にある山崎賢治氏です。同氏は、山崎賢治税理士事務所を主催しており、公認会計士・税理士1名と従業員6名という小規模な会計事務所です。
同氏が包括外部監査人として作成した報告書は前橋市のHPにも掲載されています。
※前橋市包括外部監査結果報告書(2018年度)
P001-081 ZIP ⇒
30houkatukekkahoukoku_p001081.zip
P082-131 ZIP ⇒
30houkatukekkahoukoku_p082151.zip
*****(抜粋)*****
●心の健康づくり事業
【自殺対策推進協議会公募委員の選考について(監査結果)】
(現状及び問題点)
自殺対策推進協議会の委員として 2 名の市民公募枠が設けられている。平成 29 年度の公募枠への申込者は、4 名(男性 1 名、女性 3 名)であり、応募書類として作文が各応募者より提出された。選考方法としては、公平性を担保するため、応募者の氏名、住所、職業は伏せられ、選考者(保健所長ほか 2 名、計 3 名。いずれも市職員)が個別審査(合議しない)する方式が採用された。
最終的に採用されたのは、女性 2 名であるが、このうち 1 名(以下「A」という)の選考過程に以下の疑念点が発見された。まず A の応募書類は、当初 4 行程度しか記載されておらず、選考者の採点も全 4 名中、最下位であった。しかしその後、A に対してのみ応募書類の追加を依頼しており、応募書類の書式の従わないノートに 15 行程度を記載した書類が追完された。追完書類について再度、選考、採点がなされ、結果 A が最高得点で選考された。
A は、平成 29 年 3 月まで前橋市の職員、保健師として勤務していた者で、上記のとおり、A に対してのみ選考過程で上記特別扱いをしているものと考えられ、選考の公平性が厳守されていたか疑問が残る。
(改善案)
要項に基づき公平性を保った選考がなされるべきである。
**********
同氏は報告書のなかで、他にも多くの指摘をしています。行政の不当な事務事業についてきちんとコメントすることは監査の基本ですので、役に立たない内部監査人らはもっと外部監査人の監査のやりかたを学ぶべきです。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「山崎賢治税理士事務所」
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事務所名 山崎賢治税理士事務所
所 長 名 山崎 賢治
所 在 地 群馬県前橋市下小出町1-30-4
電話番号 027-231-1223
FAX番号 027-231-1221
Eメール kenji.yamazaki@tkcnf.or.jp
業務内容 ・法人、所得、消費税の申告書、各種届出書の作成
・譲渡、贈与、相続の事前対策、申告書の作成
・税務調査の立会い
・その他税務に関する相談
・試算表、経営分析表の作成
・総勘定元帳の記帳代行
・決算書の作成
・会計処理に関するご相談
・経営計画、資金繰り計画の相談、指導
・各種書類の作成
所属会員 TKC全国会、関東信越税理士会
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※参考情報「このほかの監査結果及び主な意見(例)」
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●夜間急病診療所医療事業
【契約書に記載のない薬剤師の増員について(監査結果)】
(現状及び問題点)
市は、夜間及び季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等の流行する時期の休日昼間における急病疾患に対して応急医療に必要な診療を行うために、前橋市夜間急病診療所を開設しており、この運営業務を公益社団法人前橋市医師会に委託している。
契約書において、医師、薬剤師、看護師、事務員の報酬日額は、別表に決められており、また、委託金額は総額で、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの1年間で108,694,440円と定められている(上記記載の医師等の報酬を含む)。なお、委託金について剰余金が生じた場合には、市に戻入されるものとしている。
季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等の流行する特定月や年末年始や盆休みなど、受診者の増加が見込まれる日は、医師等の増員が可能な旨が契約書で予め決められている。ただし、事務員については受診者の増加等必要に応じて1名を増員するものとし、増員日については、医師会は市に事前に連絡するものとしている。
平成30年3月末までの1年間の実績を確認したところ、医師、看護師、事務員の人員は、契約書の別表に定められている通りであったが、薬剤師の人数は、契約書に定められた日数と異なっている部分があった。
そのうち1件は、平成29年12月4日付で、前橋市薬剤師会から「夜間急病診療所薬剤師増員のお願い」が提出されており、インフルエンザが流行する12月9日~3月初旬(ただし患者数の動向により変動の可能性あり)に薬剤師を2名体制にして欲しいとの要請があり、市では医師会運営会議にて協議した結果を踏まえ、増員に同意したものであるとの説明を受けた。
一方で、平成29年4月28日(金)の平日は、契約書では薬剤師1名となっているが、実際には2名で勤務しており、これについては通知等はなされていない。
(改善案)
12月~3月の増員については、前橋市薬剤師会から依頼文が提出されており、やむを得ない対応であったとも考えられるが、4月28日においては、事前の許可なく増員がなされており、これに対して市では増員分の報酬を支払っている。薬剤師等においても、季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等が流行する時期には、当然多忙になることが予想されるため、契約書において、増員する場合の方法を明記しておくべきである。
●健康教育・相談事業
【パンフレット・冊子等の在庫管理について(意見)】
(現状及び問題点)
単価の高い冊子等については、担当者ごとに配布状況チェック表を作成しており、制作部数のうち何部をいつどこに配布したかを管理している。しかしながら、単価の低い一枚物のパンフレット等は、種類も膨大にあることから、細かい枚数管理を行っていない。必要部数を把握して作成しており、基本的には在庫は発生しないとの説明を受けたが、市民に配布するため膨大に作成するケースもあり、多大な在庫が認識されず放置されるリスクがある。
(改善案)
定期的に多大な在庫がないか確認を行う等の管理を行うことが望ましい。
●がん検診事業
【がん検診に係る業務実績報告書の日付について(監査結果)】
(現状及び問題点)
がん検診の実施にあたっては、公益社団法人前橋市医師会からの業務実績報告により実施状況を把握し、実施状況を確認の上報酬の支払いが行われている。
しかし、公益社団法人前橋市医師会からの業務実績報告書作成日よりも先に検収日が来ており、確認状況が不明確となっている。
(改善案)
業務実績報告書を受け付けてから検収が行われるべきであり、業務実績報告書作成日よりも検収日付が先に来ることはないようにすべきである。
●心の健康づくり事業
【精神保健福祉相談における嘱託医師の報酬について(監査結果)】
(現状及び問題点)
精神保健福祉相談において、前橋市保健所では㋐医師会推薦による医師及び㋑嘱託精神科医師による相談を実施している。㋑嘱託精神科医師による相談の報酬については、嘱託医として任用している(地方公務員法第3条第3項第3号)ところ、本事業においては2名の医師に委嘱し、以下の金額を支払うものとしている。
金額 委嘱日
A医師 3万円/月額×12月=36万円 月1回(第1金曜13:30~16:30)
B医師 2万円/月額×12月=24万円 月1回(第3水曜10:00~12:00)
※単価の違いは、A医師は1回3時間、B医師は1回2時間と、相談時間の差による。
監査の過程で嘱託医の相談実績を閲覧したところ、諸事情により中止となった回や相談予約がなく出動していない回があったが、嘱託医に対する報酬は全て出勤したものとして支払いが行われていた。
<嘱託医による相談実績>
A医師 B医師
日 時間 相談件数 日 時間 相談件数
04月07日 13:30~16:30 1 19日 10:00~12:00 1
05月12日 13:30~16:30 1 17日 10:00~12:00 1
06月02日 13:30~16:30 1 21日 10:00~12:00 2
07月07日 13:30~16:30 2 19日 10:00~12:00 2
08月04日 13:30~16:30 2 なし
09月01日 13:30~16:30 2 20日 10:00~12:00 1
10月06日 13:30~15:30 会議 18日 10:00~12:00 2
11月10日 13:30~16:30 2 15日 10:00~12:00 1
12月01日 13:30~16:30 1 20日 10:00~12:00 1
01月05日 13:30~16:30 2 17日 10:00~12:00 1
02月02日 大雪のため中止 21日 10:00~12:00 2
03月02日 13:30~16:30 2 なし
計 16 14
(改善案)
出勤回数に基づいて嘱託医への報酬を決定しているのであれば、実績に応じた支払いをすべきであり、中止や相談予約がない回は,報酬を支給すべきではない。
●予防接種事業
【保健予防業務委託契約に係る見積書徴取について(意見)】
(現状及び問題点)
前橋市は公益社団法人前橋市医師会との保健予防業務委託契約を、競争入札に適さないものとして、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号を適用し、随意契約によって締結している。随意契約の締結にあたっては、前橋市契約規則第16条第1項で予定価格の作成が求められているが、予定価格を定めることが困難であるとして、同項ただし書を適用し予定価格を作成していない。また、前橋市契約規則第17条第1項で随意契約による場合は原則として2人以上の者から見積書を徴するものとされているが、見積書を徴することが困難又は不適当と認められるときに該当するものとして、同条第2項第6号を適用し、見積書を作成していない。
まず予定価格を作成していない点については、保健予防業務は専門知識を要し予定価格を定めることが困難であるとの説明を受けた。しかしながら、予防接種業務に必要なワクチンの卸値を調べ、医療診療報酬点数を基に算定した委託料を合算することで、合理的な価格算定は十分に可能とも考えられる。また見積書の徴取については、「見積書を徴することが困難又は不適当と認められる」状況について明確な説明がなかった。
予防接種を含む保健予防業務は、専門知識を要する業務であり、また市内全域の病院をカバーし前橋市民の公益に貢献するという目的から、特定の医療機関が行うことは適切ではなく、競争入札に適しない業務であると考えられる。また価格の決定にあたっては、実際には、担当者がワクチンの価格に医療診療報酬点数を基に計算した委託料を加算して委託単価を算定しており、その金額をもとに公益社団法人前橋市医師会と協議し決定している、との説明を受けた。
しかしながら、競争原理が働かない契約については、価格の決定にあたってはより慎重にあるべきであり、単に困難である等の理由により、予定価格の作成や見積書の徴取を行わず、結果として価格決定の過程が文書化されないことは好ましくない。
(改善案)
見積書の徴取を行い、価格決定のための算定過程が文書化されることが好ましい。
●心の健康づくり事業
【自殺対策推進計画策定における業務委託業者の選考について(意見)】
(現状及び問題点)
自殺対策推進計画策定業務に関し、業務委託先業者の選考が公募型プロポーザル方式を採用して行われた。選考者は、保健所長らをはじめとする市保健所職員で構成する審査委員会が行い、一次審査(書類審査)及び二次審査(プレゼンテーション、ヒアリング)によって委託業者を1社選定するものとしている。
応募は2社からあり、まず一次審査として書類選考がなされたが、総得点に大きな差がないとの理由で2社とも一次審査を通過した。なお一次審査の採点結果は、(最終的に選定された業者)A社は347点、B社は373点であった。
続いて行われた二次審査の結果、A社の採点結果は402点でありB社は376点であった。これらの結果を受けて、二次審査の最高得点であること、個々の採点項目において特出した欠点がないという理由により、最終的にA社が選定された。
上記選考過程において、一次及び二次審査の合計点をみると、A社749点(347点+402点)、B社749点(373点+376点)で同点となる。要項上では、一次審査・二次審査のそれぞれの位置づけが明確になっておらず、一次審査の結果を反映させなければならないものと明記されてはいないが、一方で二次審査の結果のみで最終選考を行うことも明記されていない。一次審査の結果も踏まえた総合的な選考がなされたのか疑問が残る。
(改善案)
業務委託先の選考手続については、より公平・公正性を担保し、選考過程に疑念を持たれないよう、選考方法をより明確に定義しておく必要があるものと考える。例えば一次審査の結果は二次審査に反映させるのか、総得点が同点となった場合はどのように選定するのか、さらに最終審査を行うのか等、をあらかじめ要項に記載しておくことが望まれる。
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**********東京新聞2019年9月21日
【群馬】前橋市自殺対策協 17年度公募委員 落選の元職員を特別選出
↑市民公募で元職員を特別扱いしていた前橋市保健所=前橋市で↑
前橋市保健所が二〇一七年度に市自殺対策推進協議会の委員を市民対象に公募した際、選考過程で一度は落選した元職員を特別扱いして選出し、その代わりに既に選んでいた一般市民を委員から除外していたことが分かった。市保健予防課は「誤った判断で、特別扱いと言われてもやむを得ない。市民の期待を裏切り、申し訳なかった」と謝罪している。 (菅原洋)
協議会は一七年度に設置され、市の自殺対策推進計画の策定や評価をしている。同年度は七月から三回の審議が開かれた。委員の任期は二年で、有識者や関係団体の代表者ら計二十人で構成し、このうち二人を市民の公募枠とした。
公募は自殺を減らすため、市民から多様な意見を聞くのが狙い。一七年春に市内の二十歳以上を対象に市の広報誌やホームページで募り、四人の市民が所定の用紙に職業や動機・抱負の作文(四百字程度)などを書いて応募した。
審査は書類選考のみで健康部長、保健所長、保健予防課長が公平性を保つため職業や氏名などを伏せ、作文を「施策推進に対する考え方・視点」「行政との一体感」など四項目について五点満点で評価した。ところが応募した四人のうち一七年三月まで市の職員だった保健師が作文を四行しか書かず、採点は最下位となった。
このため、元職員の作文と分かっていた担当者たちが、元職員にのみ所定の用紙と異なったノートに約十五行の作文を特別に書いてもらい、元職員は最高点で最終的に選出された。担当者たちは作文を依頼した段階で、元職員を選出させるのが前提だったという。
これを受け、一度は選出されていた市民が落選。この市民の作文は自らの経験に基づいて委員になることを志した内容だった。市保健所は落選者二人への対応を検討している。
最終的に選出された元職員と市民の二人は任期満了で今年の六月末に退任し、公正に改選したという。
こうした選考は今年三月末にまとまった一八年度の包括外部監査結果報告書で「(元職員を)特別扱いしたと考えられる。公平性を保った選考がなされるべきだ」と厳しく指摘された。
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この自殺対策推進協議会(あるいは委員会、懇談会とも称する)は、近年、我が国において自殺による死亡者数が年間3万人以上と言う、高い水準で推移している状況にあることから、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにして、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図るための自殺対策基本法が2006年(平成18年)6月21日に公布、同年10月28日に施行されたことをきっかけに、各地の自治体に設置されているようです。
そのうち会議のメンバーを公募しているところは極めて少なく、その点では前橋市は二人も公募している点は評価できます。ところが前橋市は、元市職員の保健師を優遇して選んでしまいました。報酬は当然支払われると思われます。実際に調べたわけではありませんが、当会会員らによれば、前橋市の場合、1回につき8,880円程度とのことです。ちなみに群馬県の場合は1万2,000円程度のようです。
公募に応じた意欲のある一般市民を落として、職員仲間を採用するという典型的な役所根性の賜物のような一件ですが、前橋市の包括外部監査結果報告書の内容を調べて、こうして記事にした東京新聞の記者の着眼点の鋭さに、当会としても拍手を送りたいと思います。
また、この報告書を作成したのは、前橋市内にある山崎賢治氏です。同氏は、山崎賢治税理士事務所を主催しており、公認会計士・税理士1名と従業員6名という小規模な会計事務所です。
同氏が包括外部監査人として作成した報告書は前橋市のHPにも掲載されています。
※前橋市包括外部監査結果報告書(2018年度)
P001-081 ZIP ⇒
30houkatukekkahoukoku_p001081.zip
P082-131 ZIP ⇒
30houkatukekkahoukoku_p082151.zip
*****(抜粋)*****
●心の健康づくり事業
【自殺対策推進協議会公募委員の選考について(監査結果)】
(現状及び問題点)
自殺対策推進協議会の委員として 2 名の市民公募枠が設けられている。平成 29 年度の公募枠への申込者は、4 名(男性 1 名、女性 3 名)であり、応募書類として作文が各応募者より提出された。選考方法としては、公平性を担保するため、応募者の氏名、住所、職業は伏せられ、選考者(保健所長ほか 2 名、計 3 名。いずれも市職員)が個別審査(合議しない)する方式が採用された。
最終的に採用されたのは、女性 2 名であるが、このうち 1 名(以下「A」という)の選考過程に以下の疑念点が発見された。まず A の応募書類は、当初 4 行程度しか記載されておらず、選考者の採点も全 4 名中、最下位であった。しかしその後、A に対してのみ応募書類の追加を依頼しており、応募書類の書式の従わないノートに 15 行程度を記載した書類が追完された。追完書類について再度、選考、採点がなされ、結果 A が最高得点で選考された。
A は、平成 29 年 3 月まで前橋市の職員、保健師として勤務していた者で、上記のとおり、A に対してのみ選考過程で上記特別扱いをしているものと考えられ、選考の公平性が厳守されていたか疑問が残る。
(改善案)
要項に基づき公平性を保った選考がなされるべきである。
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同氏は報告書のなかで、他にも多くの指摘をしています。行政の不当な事務事業についてきちんとコメントすることは監査の基本ですので、役に立たない内部監査人らはもっと外部監査人の監査のやりかたを学ぶべきです。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報「山崎賢治税理士事務所」
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事務所名 山崎賢治税理士事務所
所 長 名 山崎 賢治
所 在 地 群馬県前橋市下小出町1-30-4
電話番号 027-231-1223
FAX番号 027-231-1221
Eメール kenji.yamazaki@tkcnf.or.jp
業務内容 ・法人、所得、消費税の申告書、各種届出書の作成
・譲渡、贈与、相続の事前対策、申告書の作成
・税務調査の立会い
・その他税務に関する相談
・試算表、経営分析表の作成
・総勘定元帳の記帳代行
・決算書の作成
・会計処理に関するご相談
・経営計画、資金繰り計画の相談、指導
・各種書類の作成
所属会員 TKC全国会、関東信越税理士会
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※参考情報「このほかの監査結果及び主な意見(例)」
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●夜間急病診療所医療事業
【契約書に記載のない薬剤師の増員について(監査結果)】
(現状及び問題点)
市は、夜間及び季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等の流行する時期の休日昼間における急病疾患に対して応急医療に必要な診療を行うために、前橋市夜間急病診療所を開設しており、この運営業務を公益社団法人前橋市医師会に委託している。
契約書において、医師、薬剤師、看護師、事務員の報酬日額は、別表に決められており、また、委託金額は総額で、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの1年間で108,694,440円と定められている(上記記載の医師等の報酬を含む)。なお、委託金について剰余金が生じた場合には、市に戻入されるものとしている。
季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等の流行する特定月や年末年始や盆休みなど、受診者の増加が見込まれる日は、医師等の増員が可能な旨が契約書で予め決められている。ただし、事務員については受診者の増加等必要に応じて1名を増員するものとし、増員日については、医師会は市に事前に連絡するものとしている。
平成30年3月末までの1年間の実績を確認したところ、医師、看護師、事務員の人員は、契約書の別表に定められている通りであったが、薬剤師の人数は、契約書に定められた日数と異なっている部分があった。
そのうち1件は、平成29年12月4日付で、前橋市薬剤師会から「夜間急病診療所薬剤師増員のお願い」が提出されており、インフルエンザが流行する12月9日~3月初旬(ただし患者数の動向により変動の可能性あり)に薬剤師を2名体制にして欲しいとの要請があり、市では医師会運営会議にて協議した結果を踏まえ、増員に同意したものであるとの説明を受けた。
一方で、平成29年4月28日(金)の平日は、契約書では薬剤師1名となっているが、実際には2名で勤務しており、これについては通知等はなされていない。
(改善案)
12月~3月の増員については、前橋市薬剤師会から依頼文が提出されており、やむを得ない対応であったとも考えられるが、4月28日においては、事前の許可なく増員がなされており、これに対して市では増員分の報酬を支払っている。薬剤師等においても、季節性インフルエンザや感染性胃腸炎等が流行する時期には、当然多忙になることが予想されるため、契約書において、増員する場合の方法を明記しておくべきである。
●健康教育・相談事業
【パンフレット・冊子等の在庫管理について(意見)】
(現状及び問題点)
単価の高い冊子等については、担当者ごとに配布状況チェック表を作成しており、制作部数のうち何部をいつどこに配布したかを管理している。しかしながら、単価の低い一枚物のパンフレット等は、種類も膨大にあることから、細かい枚数管理を行っていない。必要部数を把握して作成しており、基本的には在庫は発生しないとの説明を受けたが、市民に配布するため膨大に作成するケースもあり、多大な在庫が認識されず放置されるリスクがある。
(改善案)
定期的に多大な在庫がないか確認を行う等の管理を行うことが望ましい。
●がん検診事業
【がん検診に係る業務実績報告書の日付について(監査結果)】
(現状及び問題点)
がん検診の実施にあたっては、公益社団法人前橋市医師会からの業務実績報告により実施状況を把握し、実施状況を確認の上報酬の支払いが行われている。
しかし、公益社団法人前橋市医師会からの業務実績報告書作成日よりも先に検収日が来ており、確認状況が不明確となっている。
(改善案)
業務実績報告書を受け付けてから検収が行われるべきであり、業務実績報告書作成日よりも検収日付が先に来ることはないようにすべきである。
●心の健康づくり事業
【精神保健福祉相談における嘱託医師の報酬について(監査結果)】
(現状及び問題点)
精神保健福祉相談において、前橋市保健所では㋐医師会推薦による医師及び㋑嘱託精神科医師による相談を実施している。㋑嘱託精神科医師による相談の報酬については、嘱託医として任用している(地方公務員法第3条第3項第3号)ところ、本事業においては2名の医師に委嘱し、以下の金額を支払うものとしている。
金額 委嘱日
A医師 3万円/月額×12月=36万円 月1回(第1金曜13:30~16:30)
B医師 2万円/月額×12月=24万円 月1回(第3水曜10:00~12:00)
※単価の違いは、A医師は1回3時間、B医師は1回2時間と、相談時間の差による。
監査の過程で嘱託医の相談実績を閲覧したところ、諸事情により中止となった回や相談予約がなく出動していない回があったが、嘱託医に対する報酬は全て出勤したものとして支払いが行われていた。
<嘱託医による相談実績>
A医師 B医師
日 時間 相談件数 日 時間 相談件数
04月07日 13:30~16:30 1 19日 10:00~12:00 1
05月12日 13:30~16:30 1 17日 10:00~12:00 1
06月02日 13:30~16:30 1 21日 10:00~12:00 2
07月07日 13:30~16:30 2 19日 10:00~12:00 2
08月04日 13:30~16:30 2 なし
09月01日 13:30~16:30 2 20日 10:00~12:00 1
10月06日 13:30~15:30 会議 18日 10:00~12:00 2
11月10日 13:30~16:30 2 15日 10:00~12:00 1
12月01日 13:30~16:30 1 20日 10:00~12:00 1
01月05日 13:30~16:30 2 17日 10:00~12:00 1
02月02日 大雪のため中止 21日 10:00~12:00 2
03月02日 13:30~16:30 2 なし
計 16 14
(改善案)
出勤回数に基づいて嘱託医への報酬を決定しているのであれば、実績に応じた支払いをすべきであり、中止や相談予約がない回は,報酬を支給すべきではない。
●予防接種事業
【保健予防業務委託契約に係る見積書徴取について(意見)】
(現状及び問題点)
前橋市は公益社団法人前橋市医師会との保健予防業務委託契約を、競争入札に適さないものとして、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号を適用し、随意契約によって締結している。随意契約の締結にあたっては、前橋市契約規則第16条第1項で予定価格の作成が求められているが、予定価格を定めることが困難であるとして、同項ただし書を適用し予定価格を作成していない。また、前橋市契約規則第17条第1項で随意契約による場合は原則として2人以上の者から見積書を徴するものとされているが、見積書を徴することが困難又は不適当と認められるときに該当するものとして、同条第2項第6号を適用し、見積書を作成していない。
まず予定価格を作成していない点については、保健予防業務は専門知識を要し予定価格を定めることが困難であるとの説明を受けた。しかしながら、予防接種業務に必要なワクチンの卸値を調べ、医療診療報酬点数を基に算定した委託料を合算することで、合理的な価格算定は十分に可能とも考えられる。また見積書の徴取については、「見積書を徴することが困難又は不適当と認められる」状況について明確な説明がなかった。
予防接種を含む保健予防業務は、専門知識を要する業務であり、また市内全域の病院をカバーし前橋市民の公益に貢献するという目的から、特定の医療機関が行うことは適切ではなく、競争入札に適しない業務であると考えられる。また価格の決定にあたっては、実際には、担当者がワクチンの価格に医療診療報酬点数を基に計算した委託料を加算して委託単価を算定しており、その金額をもとに公益社団法人前橋市医師会と協議し決定している、との説明を受けた。
しかしながら、競争原理が働かない契約については、価格の決定にあたってはより慎重にあるべきであり、単に困難である等の理由により、予定価格の作成や見積書の徴取を行わず、結果として価格決定の過程が文書化されないことは好ましくない。
(改善案)
見積書の徴取を行い、価格決定のための算定過程が文書化されることが好ましい。
●心の健康づくり事業
【自殺対策推進計画策定における業務委託業者の選考について(意見)】
(現状及び問題点)
自殺対策推進計画策定業務に関し、業務委託先業者の選考が公募型プロポーザル方式を採用して行われた。選考者は、保健所長らをはじめとする市保健所職員で構成する審査委員会が行い、一次審査(書類審査)及び二次審査(プレゼンテーション、ヒアリング)によって委託業者を1社選定するものとしている。
応募は2社からあり、まず一次審査として書類選考がなされたが、総得点に大きな差がないとの理由で2社とも一次審査を通過した。なお一次審査の採点結果は、(最終的に選定された業者)A社は347点、B社は373点であった。
続いて行われた二次審査の結果、A社の採点結果は402点でありB社は376点であった。これらの結果を受けて、二次審査の最高得点であること、個々の採点項目において特出した欠点がないという理由により、最終的にA社が選定された。
上記選考過程において、一次及び二次審査の合計点をみると、A社749点(347点+402点)、B社749点(373点+376点)で同点となる。要項上では、一次審査・二次審査のそれぞれの位置づけが明確になっておらず、一次審査の結果を反映させなければならないものと明記されてはいないが、一方で二次審査の結果のみで最終選考を行うことも明記されていない。一次審査の結果も踏まえた総合的な選考がなされたのか疑問が残る。
(改善案)
業務委託先の選考手続については、より公平・公正性を担保し、選考過程に疑念を持たれないよう、選考方法をより明確に定義しておく必要があるものと考える。例えば一次審査の結果は二次審査に反映させるのか、総得点が同点となった場合はどのように選定するのか、さらに最終審査を行うのか等、をあらかじめ要項に記載しておくことが望まれる。
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