■当会は、これまで公選法や政治資金規正法の厳格な運用による政治とカネの問題の撲滅に向けて活動してきております。最近取りざたされている「ドリル優子」こと小渕優子代議士が、明治座に毎年、地元の後援会会員らを大型バスを多数仕立てて観劇させていた事件では、東京地検に告発し、当時話題になったこともあります。今回、群馬県自民党県連の重鎮である狩野浩志県議が、2年前の令和3年2月7日執行の前橋市議会議員選挙で多数の候補者らに5万円から10万円の現金を入れた封筒をばらまいた事件に関連し、狩野県議やその会計責任者らを公選法と政治資金規正法違反容疑で前橋地検に告発したところ、不起訴処分とされたため、前橋検察審査会に審査申立てをしていたところ、先週、当会事務局あてに検察審査会から議決通知が郵送されてきました。
政治資金規正法違反不起訴処分の審査申立に対する検察審査会からの議決通知は以下のとおりです。
*****9/22議決通知書(政治資金規正法違反不起訴)*****
令和5年9月22日
審査申立人 鈴 木 庸 殿
前橋検察審査会
議 決 通 知 書
当検察審査会は、あなたが申し立てた審査事件(令和5年(申立)第4号)について議決しましたから、別添のとおり、その要旨を通知します。
=====9/20議決の要旨=====
令和5年前橋検察審査会審査事件(申立)第4号
申立書記載罪名 政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 同上
議 決 年 月 日 令和5年9月20日
議決書作成年月日 令和5年9月20日
議 決 の 要 旨
審査申立人
(氏名) 鈴 木 庸
被疑者
(氏名) 内 田 康 雄
被疑者
(氏名) 吉 野 貴 幸
被疑者
(氏名) 狩 野 浩 志
不起訴処分をした検察官
(官職氏名) 前橋地方検察庁 検察官検事 土 屋 大 気
上記被疑者らに対する政治資金規正法違反被疑事件(前橋地検令和4年検第430号、同第431号、同第432号)につき、それぞれ令和5年1月27日、上記検察官がした不起訴処分の当否に関し、当検察審査会は、上記申立人の申立てにより審査を行い、次のとおり議決する。
議 決 の 趣 旨
本件不起訴処分は、いずれも相当である。
議 決 の 理 由
本件不起訴処分記録及び審査申立書等を慎重に審査検討した結果、本件各被疑事実のうち平成29年分の収支報告書にかかる被疑事実については公訴時効が完成しており、その余の被疑事実についても、検察官がした各不起訴処分の裁定を不相当として再考を求めるべき諸般の事情が発見できないので、上記趣旨のとおり議決する。
前橋検察審査会
**********
■また、公職選挙法違反不起訴処分審査申立に対する検察審査会からの議決は以下のとおりです。
*****9/22議決通知書(公選法違反不起訴)*****
令和5年9月22日
審査申立人 鈴 木 庸 殿
前橋検察審査会
議 決 通 知 書
当検察審査会は、あなたが申し立てた審査事件(令和5年(申立)第5号)について議決しましたから、別添のとおり、その要旨を通知します。
=====9/20議決の要旨=====
令和5年前橋検察審査会審査事件(申立)第5号
申立書記載罪名 政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 同上
議 決 年 月 日 令和5年9月20日
議決書作成年月日 令和5年9月20日
議 決 の 要 旨
審査申立人
(氏名) 鈴 木 庸
被疑者
(氏名) 狩 野 浩 志
不起訴処分をした検察官
(官職氏名) 前橋地方検察庁 検察官検事 土 屋 大 気
上記被疑者らに対する公職選挙法違反被疑事件(前橋地検令和4年検第429号)につき、令和5年2月28日、上記検察官がした不起訴処分の当否に関し、当検察審査会は、上記申立人の申立てにより審査を行い、次のとおり議決する。
議 決 の 趣 旨
本件不起訴処分は、相当である。
議 決 の 理 由
本件不起訴処分記録及び審査申立書等を慎重に審査検討した結果、検察官がした各不起訴処分の裁定を覆すに足りる証拠がないので、上記趣旨のとおり議決する。
前橋検察審査会
**********
また、時期を同じくして、9月28日付で地元紙が次の報道をしました。
**********上毛新聞2023年9月28日
狩野県議の現金配布は不起訴相当と判断 21年前橋市議選で「陣中見舞い」
2021年2月の前橋市議選に立候補した複数の陣営に、同市区選出の狩野浩志県議が「陣中見舞い」として現金入りの封筒を渡したことを巡り、前橋検察審査会は27日までに、前橋地検が不起訴とした狩野氏に対する公選法違反(寄付の禁止)と政治資金規正法違反の両容疑について、不起訴相当と議決した。いずれも20日付。
**********
■以上のとおり、検察審査会からの議決通知書は極めて残念な内容でした。
狩野浩志県議らの政治資金規正法違反については、政治献金をした方たちから帳簿の写しなどの提供を受けて、前橋地検に証拠として提出していましたが、地検は「起訴猶予」として不起訴にしていました。
また、狩野浩志県議が、前橋市議選で候補者らに現金5万円から10万円の入った封筒を陣中見舞いとして配布した件は、それらの現金の入った封筒と現金を撮影した写真を証拠として添付しましたが、地検は「嫌疑不十分」としていました。
このため当会は、前橋検察審査会に対して、両方の事案について、審査申立てをしたのですが、今回、前橋検察審査会は、狩野県議や会計責任者らすべての被疑者について、「不起訴処分相当」、つまり不起訴処分で良い、という議決を下したのです。
このほか、今回検察審査会に審査請求をしませんでしたが、自民党群馬県支部連合会前橋支部青年部幹事長による飲食供応による公選法違反事件についても、令和2年2月9日執行の前橋市長選に際し、令和2年1月4日正午ごろ、前橋市上泉町地内の洋麺亭で友人らにスパゲッティやビザ等の供応接待をしたことと、同日午後6時ごろ、前橋市日吉町地内の朝鮮飯店で、やはり友人ら2名にビール、酒、食事など総額3万円相当の酒食の供応接待をしたことについて、前橋地検は、嫌疑不十分で不起訴処分としていました。また、令和3年2月執行の前橋市議選に際し、令和3年1月31日正午ごろ、前橋市大友町地内のかつ友で、合計7名に対して、とんかつ等の供応接待をしたことについて、前橋地検は嫌疑なしで不起訴処分としていました。
この結果、よその都道府県と異なり、群馬県の場合、選挙に際して、陣中見舞いと称して、10万円程度であれば、県議が地元選挙区の市議候補を味方につけるためにカネをどんどん配ってよいし、選挙運動に際して、運動員が有権者の清き一票をお願いするために、飲食供応の接待もガンガン行い、おごってもよい、という行為が「合法的に堂々とできることになった」と言っても過言でない状態となりました。
同様に、群馬県の政治家や政治家を志す皆さんが、多額の政治献金を受けても、政治資金収支報告書に記載しなくても、あるいは適当にでたらめな記載をしても、群馬県に限って言えば、「バレでも全くお咎めを受けずにすむ」という異常な事態が許されるという状況にあると言っても過言ではありません。
このようなひどい議決をした前橋検察審査会とは、いったいどのような存在なのでしょうか。。
■そのため、早速当会では、令和5年9月29日に次のメッセージを群馬県庁5階の記者クラブ「刀水クラブ」でメディアに配布しました。
*****9/29記者発表用メッセージ文*****
2023年9月29日
関係各位
市民オンブズマン群馬
代 表 小川 賢
事務局長 鈴木 庸
狩野浩志らの公選法及び政治資金規正法違反不起訴処分に係る審査申立に対する
前橋検察審査会からの9月22日付議決通知(不起訴相当)について
当会は一昨年2021年2月7日に投開票された前橋市議選を巡って取りざたされた公選法違反やそれに関連する政治資金規正法違反について、寄せられた情報や証拠に加え当会の独自調査をもとに3件の告発状を前橋地検に提出しておりました。すると1年余り経過した昨年2022年3月24日の報道で、これら3件の告発状が受理されたことを知り、同3月25日にここで記者会見を開かせていただきました。
その後、同4月に担当検事が八王子地検に異動し、後任の検事が警察と合同捜査を続けていたようですが、昨年12月12日に突然、1件目の公職選挙法違反事件の被疑者小島大輔に関する不起訴処分が下され、12月14日に通知書が郵送されてきました。
そして、今年に入り、1月27日に、2件目の政治資金規正法違反事件の被疑者内田康雄、吉野貴幸、狩野浩志に関する不起訴処分が下され、1月30日に通知書が当会事務局に郵送されました。このことは1月31日の記者会見でご報告したとおりです。
その後、地検に不起訴理由を確認したところ、「起訴猶予」であることがわかりました。
そして、3月3日、当会事務局に、最後に残った狩野浩志の公職選挙法違反容疑に係る当会の告発に対して、前橋地検から2月28日付で「不起訴処分通知書」が郵送で届けられました。
この処分結果に納得できないため、当会では3月22日付で前橋検察審査会に2件の審査申立てをしました。その後、何の動きもありませんでしたが、昨日、当会事務局に令和5年9月22日付で議決通知書が郵送されてきました。2件とも、「本件不起訴処分は、いずれも相当である」とする議決の趣旨でした。
これでは、河井夫妻による類似の事件が発生した広島県と異なり、群馬県では、検察はもとより検察審査会ですら、陣中見舞いとして現金をどんどん配りまくり、飲食の供応もがんがん行ってよいということを追認したことにより、公選法と政治資金規正法の無法特区に指定されたも同然です。
ここに、群馬県民として、関係者ならびに関係諸機関に対して、厳しく抗議するものであります。
以上
配布資料:
1 令和5年3月22日付検察審査会への審査申立書(政治資金規正法違反不起訴処分)
2 令和5年3月22日付検察審査会への審査申立書(公選法違反不起訴処分)
3 令和5月9月22日付議決通知書 2通
**********
■こうして、群馬県は、法治国家であるはずのわが国において、「無法選挙特区」として位置付けられることになってしまいました。
県都前橋市では、来年2月27日任期満了の市長選挙が令和6年(2024年)2月4日に投開票される予定です。そしてその翌年の令和7年2月22日任期満了の市議会議員選挙が、その30日以前以内に執行されます。
どのような無法選挙が行われるのか予断を許しませんが、「なんでもあり」という状況も予想されます。
群馬県では今年も9月上旬まで、公益財団法人明るい選挙推進協会と都道府県選挙管理委員会連合会が毎年実施している「明るい選挙ポスターコンクール」を実施しました。これは、これからの時代を担う若い世代の皆さんが、選挙や政治について関心を持ち、政治が私たちの生活や社会にどのように関わっているのかを考えるきっかけとなるようにするのが目的のようです。
しかし、実際には群馬県に限って言えば、「政治とカネ」がキーワードであり、買収、現金バラマキ、飲食供応接待など、わかりやすく言えば「やったもの勝ち」も同然なのです。このことを、強く認識して、「違法選挙特区」にふさわしい選挙運動が展開されていくことを、当会は危機感をもって注視するほかはありません。
■とはいえ、今回の深刻な検察審査会の議決を踏まえて、9月30日の当会の定例会議で、いったい前橋検察審査会ではどのような審査を経て、このような非常識な議決が出せたのか、その経緯について情報開示の申し出をすべきであるとの動議が参加者全員一致で出され、その場で承認されました。
調べてみると、検察審査会は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律や個人情報の保護に関する法律の対象になっていません。しかし、次のURLによれば、各法律の趣旨を踏まえ、全検察審査会の申合せにより、検察審査会の保有する検察審査会行政文書の開示並びに検察審査会が検察審査会行政事務に関して保有する個人情報(保有個人情報)の開示、訂正及び利用停止の運用を行っているとあります。
〇検察審査会行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いについて(平成30年12月25日付け全検察審査会申合せ)↓
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file1/03kaijikihon.pdf
ですので、近日中に前橋検察審査会を訪れて、情報開示申出書の提出について相談するつもりです。
〇検察審査会行政文書開示申出書(様式)↓
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file1/04-3-2kaijijissimousidesho.pdf
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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