■2021年4月の群馬県太田市長選の直前に授受された現金300万円を巡り、再選された清水聖義市長が、現金を選挙運動費用収支報告書に記載していなかったことを、現金を寄付した市民らが今年1月に知り、4月26日付で公選法違反の疑いで清水市長を群馬県警太田署に告発していました。
この事件について、当会はこれまで以下のブログ記事で報じていますので、参照ください。
〇2023年4月27日:【速報】太田市長の政治資金規正法違反?・・・300万円の献金を巡る疑惑で市民らが清水聖義市長を告発!↓
〇2022年12月30日:太田市長に政治資金規正法違反の疑惑?・・・寄付金の記載の有無に関する質問状に答えを濁す市長↓
報道によると、清水市長は、現金の授受を認めた上で、「直後に返金の意思を示したが、拒否されたため供託した」としています。つまり、いったん受け取ったが、その後、何らかの都合や事情が生じたことを口実にして、受け取ったことをもみ消すために、供託という方法を取ったとも受け取れます。
公選法は、立候補の届け出前に選挙運動のための寄付を受けた場合、候補者は届け出後、速やかに出納責任者に明細書を提出しなければならないと定めています。また、寄付する側について政治資金規正法は、個人による特定の候補者への金銭の寄付を、選挙運動に関するものに限り年間150万円まで認めています。
■その後、警察で捜査が為されていたと見えて、本日、太田署から前橋地検あてに捜査書類が送付されたことが報じられました。
**********読売新聞2023年10月26日
清水・太田市長 公選法違反疑い 捜査書類送付
現金300万円の寄付を受けたのに明細書を出納責任者に提出しなかったとして、太田署が清水聖義・太田市長(81)を今月20日に公職選挙法違反(明細書の提出)容疑で前橋地検太田支部に捜査書類を送付したことがわかった。
男性会社社長(83)(同市)と男性会社役員(80)(同)の2人が4月26日に同署に告発状を提出し、同署が捜査していた。捜査関係者によると、同署は起訴を求める意見は付けなかった。
複数の関係者によると、清水市長は前回の市長選で、告示前日の2021年4月3日、会社社長が用意した現金300万円を会社役員を介して受け取ったが、立候補届け出後に寄付の明細書を出納責任者に提出しなかった疑いが持たれている。市長側は300万円を前橋地方法務局太田支局に供託した。
2人は清水市長の選挙運動費用趣旨報告書に寄付の記載がなかったとして、告発状を提出していた。
清水市長は25日、読売新聞の取材に対し「寄付を受け取ったという認識は全くなかったので、選挙運動費用・・・・・・・・・・・・った。秘書に任せていた。(会社役員に)返そうとしたが受け取ろうとしないので、仕方なく供託した。検察の捜査には全面的に協力する」と話した。
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■この読売新聞記事を読むと、どうやら太田署は、清水聖義・太田市長を、いわゆる「書類送検」したことになります。
書類送検は、刑事手続において司法警察員が被疑者を逮捕せず、または逮捕後釈放した後に被疑者の身柄を拘束することなく、事件を検察官送致(送検)することを意味しており、もっぱら報道で用いられる用語で、上記の読売新聞記事のように、「書類送付」とか「捜査書類送付」などと表現されることもあります。
具体的には、司法警察員が、逮捕された被疑者、書類および証拠物、事件を検察官に送る手続(検察官送致:刑事訴訟法第246条本文)の一種であり、被疑者の逮捕・勾留の必要がない事件や、被疑者が送致以前に死亡した事件、公訴時効が成立した事件の被疑者が判明した場合などで行われます。
一般に、司法警察員が被疑者を逮捕しない場合の送致を在宅送致、逮捕した場合の送致を身柄付送致(身柄送検)といい、「書類送検」は前者を指しています。
■原則として、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければなりません。ただし、検察官が指定した事件については例外的に送致しなくともよいこともあります。これは刑事訴訟法第246条の但し書、いわゆる微罪処分の場合です。
また、刑事訴訟法第242条では、「告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない」と定めがあり、同第2項は「検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない」とされています。
次に同法第246条に「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない」との定めがあります。
すなわち、告訴または告発の場合には、送検は、警察による捜査の結果を問わず自動的に行われる手続であり、当該告訴または告発の内容が正当であったか否かの判断を示すものではなく、実際に犯罪の嫌疑があったことを示すものでもありません。しかし、現状では、いくら警察や検察に告訴や告発をしても、なぜか受理すらされていないのが実態です。
■今回の読売新聞記事には、「捜査関係者によると、同署は起訴を求める意見は付けなかった」と報じられています。
これは「処分意見」というもので、犯罪捜査規範195条に基づき、送検時には罪状と情状を考慮した処分意見が付されることになっています。そして、この処分意見とは、慣行上次のように区分されています。
①厳重処分 :起訴を求める
②相当処分 :起訴・不起訴どちらでも良い
③寛大処分 :起訴猶予にしてやってほしい
④しかるべき処分:起訴できないと考える
このことから、太田署の捜査関係者が「起訴を求める意見を付けなかった」と言っているとなると、②相当処分(起訴・不起訴どっちでもいい)、③寛大処分(起訴猶予、つまり不起訴にしてやってくれ)、④しかるべき処分(起訴できないと考えている)のどれか、ということになります。そうすると、地検における清水聖義・太田市長に対する処分の判断がおのずと見えてくる気もします。
■ちなみに、警察の司法警察員から、送致を受けた地検の検察官は、裁判所に起訴するか否かを、刑事訴訟法247条に基き決定することになります。
起訴しない旨決定した場合には不起訴処分となります。不起訴処分とする理由には、犯罪の成立は肯定できるものの、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としない(刑事訴訟法248条)と認められると、「起訴猶予」という判断がなされることになるわけです。このほかにも、構成要件不該当・違法性阻却・責任阻却等の理由をあげて、地検が犯罪の成立を認定しないことが多々あります。
告発や告訴をした一般市民は、もちろん起訴を望んでいるわけで、他県ではもちろん起訴に相当する場合であっても、こと群馬県に関すれば、なにぶんにも選挙無法特区の状態ですので、決して予断が許されないことは、ここで申し上げるまでもありません。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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