市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

安中市大谷の廃棄物処分場設置問題にかんする岩野谷区長会主催の意見交換会

2012-05-27 17:26:00 | 全国のサンパイ業者が注目!
■岩野谷地区で㈱環境資源が進めている大規模な廃棄物最終処分場設置計画について、これを阻止すべく、岩野谷区長会主催による「新山地区産業廃棄物処分場建設計画についての意見交換会」が5月26日(土)午後7時から、岩野谷公民館で開催されました。地区内の団体、個人など合計50名ほどの代表者や住民が集まり、2時間に亘り熱心なトークが交わされました。

熱心な討議を重ねた意見交換会。通常は平日でも週末でも午後7時からの会合がある場合には公民館長や職員は不在なのが通常だが、なぜか今回は市長への忠誠心が人一倍の公民館長が事務室の明かりを灯けて公民館の事務所にたむろしていた。岡田市長に会合の出席者の情報を伝達して、ゴマスリをするつもりらしい。

 地元市議の司会・進行で開催された意見交換会には、各地区の区長ら8名をはじめ、市議、県議、大谷地区の処分場反対有志、水利組合幹部、自然保護団体関係者、子ども会関係者、民生委員、その他多くの住民が意見を述べました。

 冒頭に地元区長会の代表区長から挨拶がありました。依田代表区長からは、「3月10日の出前講座以降、区長会としていろいろ活動をしてきた。一昨日、岡田市長に面談し、この件で、意見書を出した。市長から文書をもらい、その返事もした。その後、出前講座に出ていただいた、県議や市議らにも本件に関して回答要請をだした。その回答はまだ来ていないので、5月8日に再度参集をお願いした。岩井県議は都合で来られなかったが、12名の議員がある真理約2時間討議した。その結果、共通の認識が一致したということで、市長に意見を具申した。その結果は、さびしいことに、市長は過去の細かいことについての言及しかなく、最後に市長に“では今後どうすればよいのか”と聞いたところ“見識のある区長さんたちだから、よく考えて行動してください。ただし足元をよく見てね”と言われた。“では、今後どうすべきか”ときくと、市長は“県の庭で大会を開くくらいの気持ちだ”と言われた。約1時間弱、市長室で話した。その時感じたのは、富岡のアスベスト処分場計画では環境庁まで大量の署名を提出するというし、富岡市長は“皆さんが投票してくれたので私は皆さんと一緒です”という温かい気持ちを示している。ところが安中市長は“見識のある区長さんだから”という発言だった。20年5月2日付で安中市長は反対意見書を出しているが、たった一行だけ。市長に関係資料を持参したが、見もせず、置いていけとも言わず、本当に地元出身の市長なのかと、非常にさびしい気持がした。しかし、これとは別に、この処分場計画にはきちんと対処したい。今日、大澤知事が“水は大切だ”と新聞で主張している。これからは水問題だ。利根川流域でも会社がちょっと汚染物質を出しただけで、あのとおり。ここでも要らぬ業者が来て、水を止めてしまったら大変なことになる。水のことはなんとかしなければならない。この一点で行動している。至らぬところが多々あるかもしれないが、情報もどんどん寄せてもらい、我々のことも聞いてもらいたい。こころは一致なので本日も皆さんの意見を出していただきたい」と挨拶がありました。

 続いて、3月10日の県の出前講座以降の動きについて、茂木県議から報告がありました。同県議からは「100名以上が集まった3月10日の集会が大きなポイント。これをきっかけに大谷地区に9ヘクタールを超える大規模サンパイ計画があることを知った。この計画は平成18年7月に事前虚偽書が県に出された。それから6年が経過したが、事前協議が行われてきた。地元の安中市にも情報が県からきて、県と市と事業者の間で手続が進められた。業者は設置許可申請を県に出す。本来は国が許認可をするが法律により県が許認可をする。それが事前協議。安中市も平成18年7月に連絡を受けているので計画内容は知っている。県と市で意見書のやり取りが何回も行われている。安中市の意見は、本来は地元住民を代表して、地元意見をまとめて出すというのが基本的な意見書だが、安中市の場合は庁内協議で廃棄物処分場は新規を認めないので市は反対、というたった一行の意見書を県に何度も出してきたという経緯がある。地元住民がどのような意見を持っているのか、どういう不安を持っているのかという情報は県の方に伝わっていなかったのが実情。その後合意書の取得手続きがあったが、平成22年6月に、地元の高橋区長の時に反対署名1915名を集め、知事室で副知事が受理した。そのとき、県は初めて地元で反対があるのかと知った。それ以降、県と皆さんの間の情報共有に尽くしてきた。その結果、ようやく県も情報を出すようになって来た。事前協議が終了したら今度は設置許可の本申請に入る。こうなるとトントンと進んで着工に至ってしまう。今年になり事前協議が最終段階にあるということを今年に入って県から言われた。区長に相談してどうしようかと話した。それまでは市長が反対しているし(大丈夫だろう)、ということで情報錯そうもあったが、1月末に県から“事前協議も最終段階ですよ。反対署名があったのでお知らせする”ということだった。なんとか住民の皆さんに知らせる必要があるため、出前講座の開催を3月10日に企画していただいた。私も皆さんの声を聞いて、しっかりと県に対して届けていきたい」と語りました。

 次に3月10日以降、各団体の行動について参加者の共通認識にするため、まず岩野谷区長会の取り組みについて、代表区長から説明がありました。「区長会としては、3月10日は少し早いと思ったが実態を知って、これは大変だと思った。高橋前区長会長のときに署名活動を提案したのも私だったが、市長が反対しているからということで動きが緩んだ。その後、いろいろ動きがありこれは大変だとして、書類上は12月23日で終了し、あとは、いろいろ法律関係で、水利権について白紙で調べるだけという状況だった。おりから郷原のサンパイ中間処理施設問題もあり、その後、出前講座を受けてすぐ市長に意見書を提出した。そこに反対という文章があるのでそれを読んで市長に出した。その後市長から区長会に返事が来た。その後、個人的に市長に意見した。このような県への意見書ではだめですよと。市長は市子連総会時に、私に“あれじゃ、賛成と同じだ”などと発言があり驚いたこともある。県議や市議とも相談し、討議を重ね、いずれにしても今後よい成果を聞かせてもらいたい為に、住民の熱い熱意を背景にいろいろ区長会で話をしつつ現在に至っている。本日は全体の意見交換で要約を聞きつつ区長会としても詰めていきたいと思う」と述べました。

 続いて前区長会長で、岩野谷みんなの命と自然を守る会の会長から挨拶がありました。「私がやった以降はいま依田会長から説明があったが、それ以前について説明したい。平成21年5月19日に県に行って大谷のサンパイ場計画の事情を聞きに行った。その後同年12月9日に高崎市労使会館でみたけ町の元町長の後援会があり、講演後私から岩野谷地区の処分場問題について現況発表をした。その後、署名運動を始めることになり、平成22年2月に着手した。6月7日に締め切りだったが、1915名の反対署名を提出できた。当時の地元の成人人口の実に72.5%に上った。知事が不在だったため、稲山副知事に渡した。新聞社5社、群馬TVが取材に来た。同年6月8日に報道された。同12月21日に学習会を開催し、集まったカンパで建設反対の旗を設置することで決定。平成23年に2回に分けて旗を立て、平成24年1月22日には隣の高崎市吉井町奥平地区の観音山雁行川流域について学習会に参加し、大谷地区のサンパイ問題について現状発表を行った」と説明。

 その後、大谷地区の水利組合の幹部から報告がありました。副会長からは「新山地区に管理型の13品目が捨てられる最終処分場計画を聞いて驚いた。大谷の水利組合としては、事前協議規定の第22条ロとして放流地点の下流概ね500m以内の農業者等の利用者、または当該事業者の団体の長の合意が必要だということが求められている。これを調べたところ、業者は全員から合意をもらっていると言うが、実際にはまだ合意していない人がいることがわかり、業者のいうことは事実誤認。または当該団体の長の印鑑だが、平成21年1月13日に、当時の組合長が環境資源と、組合員の同意を得ずに同意書を作成して、そしてその合意書を既に県に提出していたことが判明。そのため、今年の2月21日、この合意書を無効とする組合員、全会員43名のうち39名の署名捺印入り要請書を県庁で、茂木県議の紹介で今井前組合長から、山口環境森林部長に手渡し、水利組合の合意書の無効化をお願いした。そして3月10日の県の出前講座に至った。その後、今月の5月6日、この水利組合の臨時総会を上組公会堂で開催し、そこで元組合長が環境資源と交わした合意書の撤回を環境資源に申し入れることになった。そして、元組合長も合意撤回を申し入れてくれということで、元組合長が環境資源に出向いたところ、“これまで使った費用、3億5千万円を支払えば撤回してやる”と言われて帰って来た。それで5月中旬、水利権の合意書の撤回を環境資源に申し入れるに当たり、組合員43名中39名の署名捺印をもらい、5月21日(月)、環境資源の処分場の反対陳情書を、高橋市議の紹介で、我々組合長はじめ8名で市役所に出向き、現組合長から奥原市議会議長へ反対陳情書を手渡した。そして、同じ日に、地元岩井の碓氷川の橋のところにある環境資源の事務所に8名が乗り込み、同社の鬼形社長に水利権の合意撤回の文書を手渡そうとしてが受け取りを拒否された。そのため、その内容を口頭で説明してきた。文書は受け取ってもらえなかった。そのような実情で、今後、なんらかの手段を尽くして、撤回文書を渡すことを考えている最中である」と発表。

 司会の市議によれば、6月5日から市議会が始まるのでその中で審議されることになっているとのことです。

 その後、大谷の長坂地区の有志グループとして行動を起こしている代表者から「3月10日の県の出前講座に参加し、岩野谷地区の大勢の人たちがサンパイ建設計画に反対しているという事実を知り、建設予定地に済む我々が行動を起こすべきだということに気付いた。まずは3月10日の出前講座の内容について地元住民に知ってもらうことからスタートした。そこで、住民は“こんなに大規模なものとは知らなかった。最初の説明会とは全く違う。反対するにはどうすればよいか”と多くの意見が出た。これまで地元ではほかにの何か所か計画が出ていて、どの計画に判をおしたか、また親が押したようだが今は世代交代していて反対の立場で、昔の判で押されて今の世代は反対ということ。それで反対するにはどうすればよいか、といろいろ意見が出た。今まで当地区はサンパイに狙われやすいところだった。これからは変えていきたい。そして今までのことは全て白紙にして、これからのことを考えようと言うことになった。まずは賛成か反対かを考えた。協議の結果、反対して同意撤回書を皆に書いてもらった。3月19日に県議、市議が同行して、40名の同意撤回書を県に届けた。地元も行動しているということを皆さんにも知ってもらいたいと思い意見を述べさせていただいた。よろしくお願いしたい」と力強い言葉がありました。

 続いて岩野谷の水と緑を守る会の会長で、県の市民オンブズマンの当会代表から発言があった。「このような場で、サンパイ場の件でコメントさせていただけるということについて感謝申し上げる。岩野谷には既にサイボウ環境の処分場がある。これは平成3年から安定5品目でサンパイ計画だったが、平成5年から一般廃棄物処分場としてスタートした。今日は同志も見えているが、たった3名でこの問題について取り組んできた。10年以上前には地区に何度もチラシを配布したこともあるが、覚えていない人もいるかもしれない。なぜこの問題にとりくんだかというと、隣の上奥平地区の関係者にも聞いたが、“ひとつできると、つるべ式にどんどんできてしまう。だから最初の計画は絶対に阻止する”という気持ちで取り組んできた。平成7年のタゴ事件発生のころに事前協議にはいり、平成11年頃事前協議が終わり、その後、(行政相手に事業の差止めのため)徹底的に裁判を起こし、計15件ほど最高裁までたたかったが、全て敗訴した。それと公文書偽造作成行使についても県警、検察に告発したが、結局司直のゆがんだ判断に阻まれ、これもカラ振りに終わった。そして平成19年4月にサイボウがご存じの通り営業を開始した。こちらは一般廃棄物という触れ込みの処分場だが、しかし入れているものについて誰も知らないのでサンパイでもイッパイでもわけのわからない状態にある。今回、今の話だと、平成18年7月に事前協議が出たという。この時期はサイボウの我々の最後の裁判の決着と符合する。業者はこのサイボウの経緯をみて、事前協議を出した。それから、私のブログにも詳述しているが、今年の4月14日、私は長坂の公民館に行ってどんな連中がこの計画を推進しているのか、顔を出した。見覚えのある顔にびっくりした。サイボウの処分場で暗躍した人物がそこにいたからだ。サイボウの計画で、中核的にありとあらゆる手段を講じて推進した御仁。詳しくは私のブログを見てほしい。結果だけいうと、国も県も市も、処分場を作らせたがっている。この話は、この中の参加者の誰かが当然このあと業者に通報するだろうが、“処分場の手続は前例主義だから、それに則ってやれば県は絶対にノーと言えない”と私の前でその人物は言った。先日、県に行った時、サイボウの残土の件で報告したが、その際、2番目のサンパイ場、これはイッパイとサンパイが一緒になっている。行ってみればサイボウと同じやり方。その時、県の担当者は、私の前でこういった。“行政手続法がある。外形的に書類が整っていれば、決められた期限内に通さざるを得ない”と言っている。我々は3人で平成2年から平成19年まで頑張った。同志もここに居る。しかし、2番目の計画は村中かかってもなかなか止められない。最初止めるにはたった3名で14年要した。手続の時間を伸ばせた。しかし、一旦最初の(処分場)が、できるめどが立てば、業者が全部見ているから、つるべ式に、芋づる式に次から次に出てくるわけだ。今回の皆さまの努力には本当に関心する。これがなぜ最初の計画の時に、このような行動がとれなかったのか、つくづく残念でならない。しかし、“ればたら”の話をしても仕方がない。当会はこれまで培った経験知見を惜しみなく皆さんに伝えるつもりなのでよろしく」と述べた。

 その後、参加団体の紹介として、岩野谷の環自連の会長が「先程大谷の人が言った通り親のときは賛成で、現在の世代が反対というのは事実だ。ある委員がいうには、“もう遅いですよ”と言われたことがある。前もみないろいろ反対したがだめだった。いま、小川さんがやっていた平成7、8年ごろがその時だったかなと思う。それでも、今の子どもがそういう考えなので、変えていければと思うので協力したい」と挨拶した。

 そのあと、岩子連会長が「私もできれば将来の子どもたちのことを考えており、未来を考えればぜひ反対していただきたい。そのためには岩子連としても最大限協力したい」と述べた。

 続いて岩野谷の民生委員会長が「私も反対署名をした。こういう場は初めてだが、乳幼児委託訪問から高齢者までネットワークがある。この経験を生かして、もしお手伝いできるようであれば協力させていただきたい」と挨拶。

 次に、岩野谷の青少推の会長で、岩野谷のみんなの命と自然を守る会の事務局担当から「やはり岩野谷の自然をきちんと守り子どもたちがその中で遊べる環境作りが我々の責任だと思う。頑張ってゆくのでよろしく」と挨拶。

 岩井地区の水利組合の清水代表が参加予定だったが体調不良のため、「処分場計画に反対の立場なので、みなさんによろしく」とのメッセージが紹介されました。

 次に、岩野谷地区の農業委員から「岩井川流域の農業を守るためには、いろいろな負担材料のあるサンパイ場には絶対反対。農業委員会としても反対の立場なので皆さんによろしく」とのメッセージが寄せられました。

 この後、参加者の間で熱心な討議が続けられた。今後、どう行動して、住民の意思を貫いていくかということが重要なので、初めにこの点について協議を行いました。

 区長会長からは、「最も大事なのは水。サイボウの件もあるが、どこまで踏ん張れるか。自分一人ではどうにもならないが、踏ん張れるだけは踏ん張る。大谷の水の源に計画されたサンパイ場から出る汚染水は、大谷をはじめ岩井の田んぼにも影響がでる。なんとしても水を守るため、これを阻止したい。連携し、いいアイデアを出してほしい。意見書などを出したい。それには市議、県議に役所に日参いただくことになろう。まず水の問題。皆さんの智恵を借りたい」と発言がありました。

 区長会長の発言の中の「意見書」について、県議から「事前協議は県と業者と市にも意見を聞きながら進められる。この中に、市が住民の意見をまとめて、生活環境の保全上、どのような不安や疑問や心配があるかということを意見として出せる。市が住民の意見をまとめて出すのが意見書。これまで市が県に出した意見書はたった1行しかない。県に確認したところ、市が“反対”というだけの意見ではなく、生活環境面で住民の意見を市が吸い上げて届けるのが、市が出せる意見書なので、それを出すように県から働きかけをしている。しかし市からは、同じように1行しか意見を出していないという経過がある。3月10日の説明会の後、その時市長から説明会のやり取りのなかで“どういうことなんだ?”という質問が来たということで、その打合せを5月8日に、市長に返事しなければいけないということで、参加した市会議員4名と県議2名(岩井県議は欠席したが事前コメントあり)で打ち合わせたが、最後に住民の意見が出せないだろうかという意見が出た。それを代表区長から県に確認してほしいと言われて、確認したところ、事前協議は最終段階だが、住民の意見を受け入れるので意見があれば出してほしいということを区長に伝えてほしい、という経緯がある。これが、本日の協議の背景にあると思う。これから住民の意見という形で、県は事前協議の中で、これを受けると言っている。ぜひ住民の意見を県に出してもらいたいと思う。同時に、意見書は事前協議の中で出せる。それに何らかの対応を採るということで一つのステップとなるため、この意見への対応ができれば事前協議が終わるということにもなる。岩野谷の住民の意見を出すことは必要。ただし、それにより、手続の過程が進むという可能性もあり、両刃の剣とも言えるため、慎重に対応したい」と補足説明がありました。

 その後、この件で討議が続きましたが、結局、意見書を出すことが参加者の総意として確認されました。意見書を出せる範囲について、参加者から質問が出ました。これについて、生活環境の影響する範囲ということで、地域でいうと、岩野谷地区ということで了解されました。

 また、安中市が群馬県からの要請に対して、出してきた意見の実態について報告がありました。それによると、条例第10条の審査項目として、県の土地利用対策会議(庁内38課で構成)で討議するために必要な次の項目が必要だと言うことです。
 ①災害発生のおそれはないか?
 ②土地の利用状況上、開発は可能か?
 ③公共施設・公益的施設の整備の見直しはあるか?
 ④用水確保の見通しはあるか?
 ⑤公害は防止できるか?
 ⑥地域への貢献度はどうか?
 ⑦開発事業者の資力、信用は担保されているか?
 ⑧保護すべき文化財は存在しないか?

 これらの項目について、本来、安中市は現地を調査し、地元住民の意見をまとめ、県に対して意見を言うことができるわけです。しかし、このような見地からの意見を県は安中市へ求めたが回答がなかったというから呆れてしまいます。

 実際に、安中市の岡田市長が県に上げた意見書は延べ5回に亘りますが、いずれも「市の基本方針から、最終処分場の構想は認めることができない」というたった1行の簡単な内容だけでした。これでは、県も安中市の住民の意見が分からない、と言い張れるわけです。一方、業者側はほくそ笑んでいることでしょう。

■一方、大規模土地開発事業の規制等に関する条例による事前協議では、次の報告が県議からありました。それによると、「事業者が廃棄物処理規定による地検者等の合意を取得したことから、平成21年12月に事前協議を受理して手続が開始された。その後役2年間に亘り、土地利用対策会議(庁内38課で構成)で審査し、計4階の指摘事項の通知とそれに対する事業者からの回答書の提出が行われた。また、安中市長をはじめとする関係市町村に意見照会をしたが、安中市長は当初から一貫して「市の基本方針から最終処分場の構想は認めることができない」という意見を出している。この安中市長の意見は、条例に規定する項目に関しての意見ではないため、平成22年9月、安中市長に対して県から再度意見照会を行ったが、安中市長の意見は“事業そのもの”に反対ということだけで、条例の審査項目に対して回答していなかった。現在、土地量対策会議からの指摘事項もなくなり、大規模土地開発事業審査会に諮問できる段階となっている」ということです。

 この件については、別紙の参考資料にさらに詳しい経緯が示してあります。

 その他、マスコミの活用、新山の溜池及びその周辺に本格的な看板を設置したり、岩井川沿いで自然環境のよさをアピールするイベントの開催、テレビ局への取材申し入れなど、さまざまな提案や提言が出されました。

 また、大人だけではなく、今後影響をずっと受けることにもなりかねない子どもたちからの素直な意見書も出せるのかという意見があり、これも採択されました。

 そして、まずは区長会で意見書を出すと共に、今日の参加者した方々はもとより、参加できなかった住民の意見も区長会がとりまとめて、行政に届けることを確認し、最後に、参加者一同で、一致協力し、団結して、地域に降りかかった未曽有の危機に対して断固として排除してゆくように、区長会を中心に対応してゆくことが決議されました。

【ひらく会・情報部】

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ようやく5月25日に特定された水道汚染の原因物質排出者・・・失われた1週間の意味は何か?

2012-05-26 12:17:00 | 全国のサンパイ業者が注目!
■先週からホルムアルデヒドによる水道水汚染騒動で関東地方の首都圏は大騒動ですが、当会では、この問題の背景には、一般住民には知らされない何かが隠されているのではないかと、直観的に感じていました。そして、それは的中したのでした。

高崎金属工業の液体サンパイ中間処理施設。 ↑
 「私は嘱託なんだから何も知らない。この件のことは全部組合が対応しているので、組合に聞いてほしい」

 設備の点検を終えて、タラップを降りて来た初老の作業服姿の男性は、そう言い残すと、そそくさと事務所の階段を上って行きました。

高崎金属工業の施設内の2階にある事務所。

■今日の東京新聞の一面に次の記事が掲載されました。

**********
ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者 排出か
業者は認識せず 埼玉の会社、処理委託
 首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質のヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが5月25日、埼玉県の調べで分かった。
 埼玉県によると、同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月10日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社に、原因物質を含む廃液の処理を委託した。うち一社が18日までに約60トンを処理し、同社の設備では原因物質が十分に分解できず、河川に排出されたとみられる。
 ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれたはず」とした。
 一方、同社から廃液処理を委託され、原因物質を流出された高崎金属工業(高崎市)の赤穂好男社長は5月25日、高崎市内で会見し、「廃液が原因物質を含むとは全く認識していなかった」と責任を否定した。
 高崎金属工業はハイテック社から受け取った「試験報告書」のコピーを報道関係者に配布。原因物質の記載はなく、社長は「これを見ても原因物質の混入は想像できない。当社では原因物質の処理自体ができず知っていたら引き受けない。大変迷惑で、ぬれぎぬだ」と話した。契約書などハイテック社と交わした他の書類にも、原因物質の記載はないという。
<以下は社会面>
ホルムアルデヒド問題 産廃業者 違法性問えず?
規制対象外 処理委託会社に告知義務
 利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。現行法では、原因物質を河川に排出する際の規制がなく、埼玉県からは「産業廃棄物処理業者の法的責任を問うのは困難」との声が出ている。
 厚生労働省などは原因物質を、ゴムや合成樹脂加工に使われる「ヘキサメチレンテトラミン」と特定。浄水場で使われる塩素と反応すると、ホルムアルデヒドがつくられる。
 水道法に基づく水質基準は、ホルムアルデヒドの基準値を1リットル中0.08ミリリットルと規定。一方、工場排水の基準を定める水質汚濁防止法で、ヘキサメチレンテトラミンは「環境への影響がない」(環境省水環境課)と規制の対象外としている。
 埼玉県によると、この物質の流出元とされる高崎金属工業(群馬県高崎市)は今月10日、埼玉県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」から産業廃棄物として、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液約60トンの処理を請け負った。
 同工業は、自社の設備で廃液を処理して河川に流したとみられるが、19日に立入検査した埼玉県は「同社の設備では十分に分解できなかった可能性が高い」としている。
 埼玉県によると、廃棄物処理法施行令は「生活環境の保全上、支障を生ずるおそれがないような措置」を業者に求めている。だが同県は「ヘキサメチレンテトラミン自体が直接、生活への支障を生じさせていない。業者の違法性は問えないだとう」と指摘する。
 再発防止のため、埼玉県などはヘキサメチレンテトラミンの排出規制を国に求めているが、埼玉県内で同様の問題があった9年前には、規制の必要性は見過ごされた。
 埼玉県によると、利根川から取水する行田浄水場(行田市)で2003年、高濃度のホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。
 埼玉県は「当時は特異な問題と考えていた。会社が排出対策を行ったため、国などに規制を求める必要性は無いと判断した」という。
 一方、埼玉県は「同社が高崎金属工業に廃液処理を委託したことについては、廃棄物処理法に抵触する可能性もあるとみている。
 同法施行規則では、廃棄物の「適正な処理に必要な情報」を委託先に提供するよう義務づけているが、業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明。
 埼玉県は「ハイテック社は9年前の問題で、未処理ではホルムアルデヒドになることを知り得ていたはずだ」と指摘している。
**********

■今回、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液を川に排出したとされている業者の名前が、5月25日にようやく明らかになりました。群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」の赤穂好男社長が5月25日、高崎市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明したからです。

 当会では、さっそく5月26日の朝8時すぎに、現地を訪ねてみました。高崎金属工業という会社がわからずネットで調べると「高崎市」のHPで「産業廃棄物処分業許可業者一覧」
sypxgh240301syobun.pdfの一番最後に「許可番号11620-159705 許可年月日平成23.4.22 高崎金属工業株式会社 赤穂好男 群馬県高崎市倉賀野町2663番地1 郵便番号370-1201 027-346-1324」というのが見つかりました。

 グーグル地図で「群馬県高崎市倉賀野町2663番地1」を検索したところ、倉賀野町の中町交差点付近にマークがついたため、その界隈をチェックしましたが、民家や商店だけだったので、たまたま向かい側にあった高崎警察署倉賀野交番で、2名の警察官に番地と会社名を告げて所在地を聞いたところ「この道路をまっすぐ行って、国道17号線に出る交差点を左折したところにあるよ」と教えてもらいました。

■国道17号線と交わる交差点に差し掛かると、左手に工業団地が見えました。さっそく、高崎金属工業という看板を探しましたが、見当たりません。そこで、高崎金属工業社長の「赤穂好男」の名前で検索したところ、「ヘイワテクノ 倉賀野町2660」がヒットしました。この会社であれば、国道から直ぐ見えます。メッキ工場のようですが、60トンの廃液を処理する施設のようなものは国道からは見られません。

国道沿いのヘイワテクノ。国道17号線沿いの高崎金属工業団地。高崎金属工業の赤穂社長はヘイワテクノ社の社長でもある。

 そこで、工業団地の中に入ってみました。通りに「群馬県鍍金工業組合」の看板が見えました。


 土曜日にもかかわらず操業をしている会社がいくつもありました。倉賀野町2660番地のヘイワテクノ社の正門に辿り着き、2663番地は直ぐ近くだと思い、あたりを見渡すと、おなじみのサンパイ施設の看板がすぐ目の前に見えました。近づいてよく見ると、フェンスの網の陰に確かに「高崎金属工業」と書いてあります。サンパイ施設の表示板には次の記載がありました。
産業廃棄物の中間処理施設
産業廃棄物の種類:廃酸・腐食性、廃アルカリ・腐食性
 処理方法・能力;中和・廃酸20㎥/日、廃アルカリ20㎥/日
 管理者名:伊藤嘉彦 連絡先:027-346-1324
 技術管理者名:児島 剛 連絡先:027-346-3761
 設置者名:高崎金属工業株式会社
 設置者住所:高崎市倉賀野町2663番地1
 許可:平成23年4月22日 第11620159705号
               第11670159705号



高崎金属工業のサンパイ中間処理施設表示看板。

 屋外にタンクがいくつも設置されてあり、それらをパイプが結んでありました。確かにプラント施設のようですが、正門の脇にある郵便受けには「高崎金属工業団地協同組合 水質管理センター 場長 管理責任者」と書いてあり、名前のところが擦られて消されていました。

高崎金属工業の正面入口脇の郵便受けの表示。

■ここが原因物質を含んだ液体サンパイを処理した場所であることは確かなようです。施設の周りをぐるっと一周してみましたが、「高崎金属工業団地 水質管理センター」の名前の入った容器があったりしていて、どうやら金属加工、それも主としてメッキ処理に使った廃溶液の処理を行う施設のようです。

高崎金属工業の正門と施設。

 斜め向かい側で土曜日に操業していた会社の関係者にヒヤリングをしたところ、「今週は月曜日に、水質管理センターに立入調査が入り、操業出来なかったので、今日は振替えで土曜出勤して操業している」という説明がありました。そこで、当会から「そこにかけてある看板には、先日下流で水道水汚染問題を起こした会社名が書いてありますが、一方で高崎金属工業団地水質管理センターと書いたステッカーの貼られた容器もあり、郵便受けにもそう書いてあります。ということは、この施設は高崎金属工業という会社のものなのでしょうか?それとも、高崎金属工業団地協同組合で共有施設として運用しているものなのでしょうか?」と質問してみました。

廃棄物の容器に張ってあるステッカー。

 すると、会社関係者のかたは、「その件は、組合で聞いてほしい。この通りをまっすぐ行くと突き当たりの右手にある」と返事をしました。どうもそれ以上の話をしたくない様子でした。

 お礼を言って、教えられた方向に歩きだすと、交差点で、また女性従業員らしい方とすれ違いました。「土曜日なのに出勤ですか?」と尋ねると「月曜日に水質センターに立入検査があり、そのため団地の工場が全部操業できなかったので、今日、土曜日にその分働くためです」と教えてくれました。やはり、5月21日に水質管理センターに群馬県や高崎市の立入検査があったのは事実のようです。

 それも、事前に通達があったらしく、だから工業団地の関係会社は休業について従業員にあらかじめ通知しており、その振替労働日として5月26日(土曜日)を出勤扱いにしたようです。

■さて、数分歩くと、信号機のない交差点の右奥のかどに、茶色の3階建てのビルが見えました。入口のアコーディオンフェンスが閉まっていて施設の敷地内には入れませんが、たしかに玄関の上に「高崎金属工業団地協同組合会館」と描いてあります。


 誰も居ないのかな、と思っていたら、玄関の右手の事務所のガラス越しに女性職員がなにやらお茶の準備をしていました。大きく手を振るとこちらに気付いた様子で、「きょうは開いているのですか?中に入れますか?」と仕草で合図を送ったところ、女性職員は、両腕を交差させて「×」印のサインを送り返し、首を横に振りました。

 しかし、確かに水質センターで装置を監理していた初老の嘱託の男性は「きょうも組合で話し合っているはずだ」と当会に言いました。駐車場には車こそありませんでしたが、所属会社からは徒歩で来られる距離にあります。今回の水道水汚染事件でなにやら関係者が協議をしているのは確かなようです。

1階の玄関脇の窓以外はすべてカーテンが閉められた高崎金属工業団地協同組合ビル。

■こうした一連の現地調査を踏まえ、25日から本日にかけての報道をもとに、当会として次の疑問点が浮上しました。
(1)高崎金属工業の中間処理施設は高崎金属工業㈱の所有・運営なのか、それとも、高崎金属工業団地協同組合の水質管理センターとして所有・運営されているのか?
(2)5月19日(土)に埼玉県が高崎金属工業㈱の中間処理施設もしくは協同組合水質センターの立入検査を行ったのに、再度5月21日(月)に再度立入検査を行ったのか?
(3)5月21日(月)の立入検査はどこがおこなったのか?埼玉県は19日に実施したのだから、群馬県と高崎市が行ったのか?
(4)しかし、5月19日の立入検査は埼玉県が単独で行うはずはなく、群馬県や高崎市も当然一緒に検査しているはずだが、なぜ5月21日の立入検査については、事実関係が公表されないのか?
(5)高崎金属工業によると、DOWAハイテック社から処理を請負った廃液は60トン弱で、JFE運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話したが、少なくとも施設にはサンパイ中間処理施設の表示板以外には同社の名前を掲げた看板も社長室も事務管理棟も見当たらない。高崎金属工業の商業登記はいつどのようになされたのか?同社の実態はどうなっているのか?
(6)なぜDOWAハイテック社は5月初めに廃液60トン弱の処理について、従来の委託先に断られたのか?
(7)なぜ、DOWAハイテック社は、5月に初めて高崎金属工業に委託を決めたのか?
(8)なぜ、DOWAハイテック社は、JFEグループ関連の液体廃棄物収集運搬会社を連れて、事前に高崎金属工業の施設を見分して60トンの廃液の処理の委託を決断したのか?
(9)なぜ、DOWAハイテック社、JFEグループの液体廃棄物収集運搬会社、高崎金属工業は、得体の知れない廃液の処理を行うことについて、それぞれ疑義を持たずに実行したのか?
(10)DOWAハイテック社とJFE系収集運搬社は、5月10日(木)を含め、その後5月18日(金)までに計6回にわたり60トン弱の水道水汚染原因物質を含む廃液を高崎金属工業に持ち込んだと言うが、高崎金属工業では、自分の組合のメンバー会社から毎日排出される日量最大20㎥の廃酸・廃アルカリの処理で手一杯のはずなのに、あらたに、毎日10トン(ほぼ10㎥に等しい?)もの廃液を積んだタンクローリーを受け入れたのか?
(11)DOWA社もJFE系会社も、そのことを知りつつなぜ廃液を出荷したのか?
(12)サンパイの取扱いには必ずマニフェストが必要だが、それは行政も含めどのような監理がなされていなのか?
(13)下流の千葉県や埼玉県で水道水のホルムアルデヒド濃度が高まって来たという5月15日(火)には、既に毎日10トン近くの廃液処理水を、側溝を介して烏川に排出していたことになるが、JFE系社が10トン近くの廃液を搬入した日は、5月10日から土日を休んで17日まで毎日だったのか?
(14)群馬県と高崎市は、埼玉県から通報や要請を受けて、高崎金属工業に対してどのような対応をとったのか?
(15)群馬県の水道事業を担当する企業局トップの関勤企業管理者や水道課長らが、5月17日午前、埼玉県から「利根川水系の浄水場で通常より高いホルムアルデヒドの数値が出た」とホルムアルデヒド検出の連絡を受けた後、17日(木)午後6時ごろからから前橋市内で開かれた内部の懇親会に出席していたが、少なくとも群馬県と高崎市は、埼玉県から、排出元のDOWAハイテック社のことを5月17日(木)には連絡を受けていた可能性がある。その場合、サンパイの廃液の搬入先のひとつが高崎金属工業㈱だったことも連絡があったはず。しかし、群馬県も高崎市も、そして埼玉県も、既にそのことを知っていたにもかかわらず、なぜ具体的な業者の氏名や所在地を公表しなかったのか?また高崎金属工業に調査に踏み込まなかったのか?
(16)事実、5月19日(土)に埼玉県は高崎金属工業の中間処理施設を立入検査しており、この時、群馬県や高崎市も一緒に居た可能性があるのに、なぜ5月21日(月)に、再度立入検査を行ったのか?この場合、平日の18日(金)には、19日(土)と21日(月)の両日にわたり立入検査を行う旨、工業団地の関係会社に事前に通知していたと思われる。にもかかわらず、なぜ、水道水汚染の原因物質の排出元が特定できないとして25日(金)まで言い続けたのか?
(17)行政は、このように、真相を迅速に公表せず、敢えて業者に証拠隠滅や、言いわけを考えさせるための時間の猶予を与えたのではなかったか?
(18)報道では、DOWAハイテック社がJFE系収集運搬社に、原因物質を含む廃液の処理を委託したのは、烏川沿いにあるサンパイ業者2社だというが、もう1社はどこなのか?マスコミや行政はもう1社の名前や所在地等をなぜ公表しないのか?
(19)高崎金属工業は、金属工業団地の協同組合員の会社以外の、外部からの液体サンパイを受け入れるビジネスを昨年4月から始めているが、その理由と経緯は何か?

■このように、群馬県の場合、とくにサンパイにかかる県行政の業者寄りの姿勢と、県民への情報非公開の姿勢は、一貫して徹底しています。利根川の上流の水質に重大な影響を与えるサンパイ処分場施設の運営を業者まかせにして、すこしも身にしみて立入検査をしたがらない群馬県の体質がこのザマですから、下流の埼玉県、千葉県、茨城県、東京都の利根川水系の浄水場の水を使用している首都圏の住民の生活や生命の安全は風前の灯といえます。

 八ッ場ダム建設にうつつを抜かす国交省や群馬県、そして下流域の知事ら、また、役人の天下り先の業者らは、八ッ場ダム建設により、下流の水道水への影響、とくに草津流域から出るヒ素入りの強酸性水の中和によるヒ素の影響について、今回の事件を契機にどのような見解を持ったのか、ぜひ聞いてみたいところです。


入口から見た高崎金属工業のプラント施設。昨年4月から外部の液体廃棄物を受け入れて処理するビジネスを始めた。中和槽は左手にある。

中和槽にそそぎこむ周辺の土曜日でも稼働中のメッキ工場からのメッキ溶液の廃液。ここで中和処理されて、ポンプアップで外部に放流されるが、施設を管理していた初老の男性に「放流口はどこですか」と聞いても、取り合ってくれなかった。

この排水路をとおって原因物質が大量に烏川へ?↑

【ひらく会・情報部】


※参考資料
≪報道記事≫
**********読売新聞2012年5月25日07時30分
ホルムアルデヒド原因物質、群馬の業者が排出か
 千葉、埼玉県の利根川水系の浄水場で処理済みの水道水から国の基準を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、厚生労働省などが原因物質と断定したヘキサメチレンテトラミンは、群馬県内の産廃業者が、同県内を流れる利根川支流の烏川(かえあすがわ)に排出した可能性が高いことが24日、わかった。
 埼玉県内の化学工場が今月、処理を委託したといい、埼玉県が25日にも発表する。
 この産廃業者は、ヘキサメチレンテトラミンを処理するのに十分な施設をもっておらず、中和処理などをしないままで、排出した可能性が強いという。
 埼玉県などが、この産廃業者と委託元の化学工場に対し、廃棄物処理法に基づき状況の報告を求める。
 埼玉県と群馬県が疑いのある工場の立ち入り検査を行うなどして、排出源を調べていた。利根川水系では、9年前にもヘキサメチレンテトラミンの排出が原因で、ホルムアルデヒドを検出している。
**********日本経済新聞 2012/5/25 12:53
環境相、再発防止の制度検討 利根川水系の有害物質検出
 利根川水系の浄水場で基準値を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、細野豪志環境相は5月25日の記者会見で「同様事案の再発防止について、制度面の手当てでどういった手法があるか検討している」と述べた。
 細野環境相は「地元自治体でも原因究明についてさまざまな取り組みを進めている。環境省もしっかり足並みをそろえた」としている。
**********東京新聞2012年5月25日 13時56分
ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者排出か 埼玉・業者から処理委託
 利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済み水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質とされるヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが二十五日、埼玉県の調べで分かった。
 埼玉県によると同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月十日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社にヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理を委託した。うち一社は十八日までに約六十トンを処理したが、同社の設備ではヘキサメチレンテトラミンを十分に分解することができず、河川に排出されたとみられる。
 埼玉県は十九日に、この産廃業者への立ち入り検査を実施したが、産廃業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明したという。
 一方、ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれていたはずだ。ほかの業者への委託でも、これまで問題はなかった。不正の認識はなく、県の調査に協力していきたい」としている。
 また、もう一つの産廃業者は高崎市の調査に「群馬県外の別の産廃業者に再委託した」と説明したという。
 ヘキサメチレンテトラミンはゴムや合成樹脂の加工などに使われる化学物質で、浄水場で河川水の浄化処理に使う塩素と化学反応を起こし、水道水にホルムアルデヒドが生じたとみられる。ヘキサメチレンテトラミンは工場排水を規制する水質汚濁防止法の対象外となっている。
 利根川から取水する行田浄水場(埼玉県行田市)では二〇〇三年、この物質が原因となり、国の水道水の基準値(一リットル中〇・〇八ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の工場排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。埼玉県によると同社はその後、産廃業者などに廃液処理を委託してきたという。
**********日本経済新聞2012/5/25 20:18
DOWA株が年初来安値 利根川水系の有害物質問題
 関東の利根川水系浄水場で水式基準を超すホルムアルデヒドが検出された問題の影響を受け、5月25日の東京株式市場でDOWAホールディング下部が急落、一時は前日比14%(68円)安の429円まで下げ、年初来安値を更新した。
 DOWAの子会社、DOWAハイテック(埼玉県本庄市)の委託先が原因物質を排出した可能性が高いと埼玉県が発表。DOWAの業績への影響を懸念したが売りが広がった。終値は11%(54円)安の443円で、この日の東証1部銘柄の下落率ランキングで2位。
 DOWAハイテックは太陽光パネルなどの材料である銀粉を生産。工程で出る廃液の処分をグループ内外の廃棄物処理会社に依頼していたが、設備トラブルなどで急きょ依頼した群馬県高崎市の処理会社で問題が起きた。処理会社は廃液に原因物質が含まれているとは知らなかったとしており、廃液中の分析値は示したとするDOWA側と主張が食い違っている。
 再生可能エネルギーの全量買い取り制度が7月に始まると太陽光パネル市場は急成長する見通しで、廃液も増加する。「処理依頼先を増やすことは課題」(DOWAハイテック)としている。
**********NHK 5月25日 21時17分
利根川水系に化学物質 警察捜査へ
利根川水系の浄水場の水道水から国の基準を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、警察は、廃棄物処理法に違反していた可能性があるとして、近く関係者から話を聞くなど捜査に乗り出す方針を固めました。
この問題では、原因とみられる化学物質を川に排出した群馬県の産業廃棄物処理業者が、処理を委託された埼玉県本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」から「問題の化学物質とは知らされていなかった」と話しています。
 廃棄物処理法では、廃棄物を出した事業者は委託先の業者に対して廃棄物の性質などを知らせるように定めており、群馬県警察本部は廃棄物処理法に違反していた可能性もあるとみて捜査に乗り出す方針を固めました。
 埼玉県によりますと、「DOWAハイテック」は、今月10日から原因とみられるヘキサメチレンテトラミンを含むおよそ60トンの廃液の処理を群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者に委託していたということで、警察は、近く関係者から話を聞くなど当時のいきさつを詳しく調べることにしています。
 「DOWAハイテック」はNHKの取材に対し、廃棄物処理業者に渡した廃液の成分表にヘキサメチレンテトラミンを記載していなかった事実を認めたうえで、「その後、口頭で伝えたかどうか社内調査を進めている」としています。
**********時事通信2012/05/25-22:06
産廃会社「知らなかった」=JFE関連が廃液運搬-利根川水系汚染・群馬
利根川水系の浄水場から基準値を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質のヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流したとされる産廃処理会社「高崎金属工業」(群馬県高崎市)の赤穂好男社長は25日、同社で記者会見し、「(廃液処理の委託元から)HMTが入っていたとは聞いていない。知っていれば処理を断った」と語った。
同社の説明では、金属加工会社「DOWAハイテック」(埼玉県本庄市)から受け入れた廃液は計60トン弱。10日以降、JFEグループ関連の廃棄物収集運搬会社によって6回に分けてタンクに運び込まれ、処理後、利根川支流の烏川に流した。
DOWA社とは今回初めて取引。赤穂社長らによると、高崎金属工業の設備ではHMTの処理はできないが、廃液受け入れ前に、運搬会社とDOWA社は設備を確認したという。
**********日本経済新聞2012/5/25 23:47
「廃液に原因物質含むと知らず」浄水場問題で業者
 利根川水系の浄水場で高濃度のホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質を川に流したとみられる群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」が5月25日、同市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明した。
 ただ委託した埼玉県本庄市の化学品製造業「DOWAハイテック」は取材に対し「廃液の中身を分析した結果を資料で示した」と説明したが、原因物質が含まれていると口頭で説明したかどうかは調査中としている。
 高崎金属工業によると、請け負った廃液は60トン弱で、運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話した。
 高崎市は25日、廃液処理に問題がなかったか、同社に文書で報告を求めた。埼玉県や群馬県と連携して委託の経緯などを調査する。
 これまでの取材にDOWAハイテックは、従来の委託先に断られ、5月に初めて高崎金属工業に委託したと説明。この廃液にホルムアルデヒドの発生原因となるヘキサメチレンテトラミンが含まれていた。〔共同〕
**********産経新聞2012.5.26 02:09
複数の業者捜査へ 有害物質不法投棄の疑い 群馬
 関東の浄水場から国の水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、県警は25日、利根川水系に原因物質ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流した可能性のある県内外の複数の産廃業者に対し廃棄物処理法違反容疑で捜査する方針を決めた。容疑が固まれば工場などの捜索を行う。
 廃棄物処理法では、みだりに廃棄物を投棄することを禁じ、国内での適正な処理を義務づけている。県警では、業者の廃液の処理状況などを調べている。
 一方、県と高崎市の担当者は25日、HMTを流したとみられる2業者を訪問。委託元の埼玉県本庄市の金属加工業「DOWAハイテック」との契約書や管理書類の提出を29日の期限付きで求めた。
 このうち、同社から廃液約60トンの処理を受託した「高崎金属工業」(赤穂好男社長)によると、D社側から廃液内のHMTの有無や処理方法については契約書に記載がなく、指示もなかったという。赤穂社長は同日の記者会見で「(D社側から)説明はいっさいなかった」と戸惑った様子で語った。
**********



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15年ぶりの長く厳しい冬から解放され若草が芽ぐむロシア沿海州の2カ月遅れの春(その4)

2012-05-22 23:50:00 | 国内外からのトピックス
■ナホトカは1961年から京都府の舞鶴市と姉妹都市の関係にあります。これは戦後日露(当時はソ連)間で初の姉妹都市提携でした。その後、北海道小樽市と1966年に、敦賀市と1982年に姉妹都市関係を結んでいます。第二次世界大戦後のシベリア抑留では、多くの日本軍元将兵がナホトカ港から帰国しました。帰還者らが最初に日本の土を踏んだ舞鶴が、この帰還事業で縁の深い関係にあるからです。

ピラミッドホテルの壁にある姉妹都市のシンボルを石で造った壁画。


■第二次世界大戦の終戦直前にソ連の参戦により捕虜になった多くの日本人が極東や奥地のシベリアに抑留されて、過酷な作業環境条件などにより多数の方々が亡くなりました。

 異郷で亡くなった日本人抑留将兵の墓地がナホトカにもありました。ナホトカ湾のかなり奥まった西側の山の斜面にあり、ナホトカ港や対岸がよく見渡せる場所です。

日本人墓地は見晴らしのいい高台にある。ただし海岸通りから、かなり急な坂を上って来ることになる。

 この日本人の抑留者の埋葬地は、戦後まもなくナホトカのセニャビン通りに設けられました。関東軍の573名の将兵の遺体がここに50年以上埋葬されていました。そこで2005年に日露両政府により、遺骨が収集され日本に帰還されました。

その後、ここに日本人墓地の石碑が建てられましたが、あまり訪れる人も無く荒れ放題になっていました。

■ところが最近になって、ナホトカ市役所の手で、第二次世界大戦の際に、ソ連軍の捕虜になりナホトカで亡くなった日本人抑留者の埋葬場所に、あらためて記念モニュメントが建立されることになったのです。

 たまたま、4月22日に当会の取材班が久しぶりに日本人墓地を尋ねたところ、忽然と日本人墓地と書かれた石碑が姿を消していました。

忽然と消えたナホトカの日本人墓地。4月22日撮影。

 「これは一大事だ!」と思って、周りを見渡すと、同じ空き地の一角で何やら工事をやっていました。


 現場監督をしていた中国系らしい人物に、中国語で話しかけると、完璧な中国語で返事がありました。

日本人墓地の移転先の造成工事中。左が施工業者の中国系ロシア人。完璧に中国語を喋る。

 現場監督か、はたまた社長なのか、その中国系ロシア人は、ロシア系作業者らに指示を出していましたが、その人物の話によると、ナホトカ市役所から発注を受けて、日本人墓地の石碑を新しい場所に移設し、道路から容易に参拝できるようにアプローチ用の歩道も作って、5月初めには完成させるのだそうです。

 その後、現場を訪れる機会がありませんでしたが、5月12日に完成したと報じられました。記事の写真を見ると、記念モニュメントは、天然石で囲われた円形の台座の上に石碑が載せられたもので、入口には石で造った鳥居と、その両側に燈篭が設けられています。
http://www.nakhodka-city.ru/news.aspx?id=19618&lang=eng

■この記念モニュメントは、ナホトカ市民に日本人抑留者のことを記憶してもらうためにナホトカ市役所が作ったものですが、ナホトカ市民に聞くと、ウラジボストクスカヤ通りやレーニン通り、ルナファルスキ通り、シビルスカイ通り、ポレバヤ通り、コムソモルスカヤ通りにある集合住宅は、日本人の元将兵らによって建設されたものであることを知っている人がたくさんいます。日本人が作ったこうした住宅はしっかりした作りなので、半世紀以上経過した今でも、人気があるとか。日本人抑留者らは鉄道の建設にも積極的役割を果たしました。

 統計データによると、1947年春には、約4万人の抑留者がナホトカに集められていたとあります。主要な収容キャンプ地は、バルハトナヤ鉄道駅周辺にあり、もうひとつはリブニイ港にありました。病院は極東海事学校の場所にありました。重病の抑留者らが収容されていたバラックは、現在のルス映画館のある場所にありました。最後の日本人将兵らがナホトカを後にして日本に帰国したのは1950年5月でした。

■現在、ロシア国民にとって、自動車をはじめとする日本製品への品質評価は、目を見張るものがありますが、この原点として、こうした日本人抑留者らの真面目な働きぶりと現存するかれら成果物の存在が、今でもロシア国民の意識の奥に刷り込まれているのかもしれません。

 4月7日に再度大統領職に就いたプーチン大統領は、今日、極東発展相という閣僚ポストを新設しました。現在、韓国製や中国製の商品に席巻されている沿海地方の市場ですが、品質にこだわるロシア極東の消費者に応えるためにも、日本企業も極東市場に注目して進出をはかり、クールジャパンの真髄を広めてもらいたいものです。

ナホトカ市と舞鶴市の友好の石。

舞鶴の友好の石の裏に落書きが・・。

友好の石の裏手にある日本海をイメージした斜面の表面には剥がれが見られる。地元の人によるとこの上にバイクのライダーが乗り上げたりして破損したのだという。早めの補修が望まれる。

こちらはナホトカ市と敦賀市の友好の庭の石碑。

しかしこの石碑の裏にも同様の落書きが・・。まだ最近つけられたようだ。

東屋と石庭が併設されている。以前はゴミだらけだったが最近はよく掃除がされている。裏手の山の木々ももうすぐ芽吹こうとしている。

【ひらく会情報部・海外取材班】

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15年ぶりの長く厳しい冬から解放され若草が芽ぐむロシア沿海州の2カ月遅れの春(その3)

2012-05-21 00:27:00 | 国内外からのトピックス
■ロシア沿海州で2番目に大きなナホトカ市は、ソ連崩壊以前は、閉鎖都市だったウラジオストクに代わり、ソ連極東地域最大の貿易港として栄えていました。今でも、商業貿易港として重要な港ですが、ウラジオストクに相当量の貨物が移っており、経済面での地盤沈下は否めません。その代わり、密集して坂だらけのウラジオストクに比べると、長閑でゆったりとした気がします。

 そのナホトカの港を見下ろす丘の上に立つロシア正教のフラム・カザイスカヤ・ボージャ・マーチ(カザンの聖母教会)については、以前当会のブログでも紹介済みですが、今回は、ナホトカの宗教施設をご紹介します。


今年8月の完工を目指して内外装工事中のカザンの聖母教会。一番右の金色のタマネギのところが鐘楼。
■ロシアではクリスマスは12月25日ではなく、1月7日ですが、復活祭も今年は西側の教会(西方教会)が4月8日の日曜日だったのに対して、ロシア正教では4月15日の日曜日でした。

聖母教会の前にある礼拝堂。教会が工事中の為、復活祭もっぱらミサはここで行っていた。

礼拝堂の脇にある鐘撞き堂。

屋根上のタマネギも屋根瓦も木製のブロックを組み合わせて作ってある。

牧師助手の好意で、工事中にも関わらず中に入れてもらった。鐘楼からみたロシア正教の特徴ある十字架。

こうやって片手に二本ずつ紐を持って4つの小鐘を操りながら鳴らす。ナホトカの春の空に冴え渡ったカネの音がこだまして行った。

鐘楼の真ん中にぶら下がっている主鐘。

鐘楼から見た風景(西側)。

鐘楼から見た風景(南側)。

鐘楼から見た風景(南側地上)。

 復活祭というのは、十字架にかけられ死んだキリストが3日後に復活したことを祝う日で、ロシア語でパスハと言います。ちなみにスペイン語でパスクアと言います。ラテン語と共通性のあるのがロシア語の特徴です。

カザンの聖母教会の牧師助手から記念にいただいたイコン。日本のニコライ堂の由来もよくご存じだった。

 復活祭は毎年同じ日ではなく、春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日に行われます。因みに、来年は今年よりも20日ほど遅い5月5日です。ロシア正教にとって復活祭は数ある祭の中でも最も重要かつ特別な祭とのことです。とくに、復活の象徴として美しく彩色されたイースターエッグと呼ばれる卵が飾りとして使われます。また、ロシアでは長く寒い冬の後、春の訪れと共に祝われる復活祭は、とりわけ重要な祭りとなっています。

 残念ながら今回は4月15日にナホトカを訪問できず、1週間後の4月22日となりましたが、訪問した各教会の日曜日のミサでは沢山の老若男女が集っていました。

ナホトカの古い教会でもらったイコンの裏のカレンダー。宗教行事予定がよくわかる。今年のパスハ(復活祭)が4月15日であることがわかる。

■ロシア正教では、パスハ(復活大祭)の前の7週間はヴェリーキー・ポストと呼ばれる精進の期間にあたっており、ことしは2月26日からでした。この精進期間中は、肉や卵、乳製品を一切口にできません。そのうち復活祭までの1週間は聖週間とよばれ、毎日いろいろな儀式が教会で行われます。中南米のカトリック教国でもセマナ・サンタ(聖週間)といい、この期間は絶対に畜肉は食さず、もっぱら塩干をして保存しておいた魚を食べる習慣がありました。

 このポストのもう1つ前の一週間がマースレニツァとよばれ、もともと、春を迎えるお祭りとして古くから祝われていたものが、後にキリスト教と融合して宗教的な意味を持つようになりました。西側では謝肉祭と言われる風習と同じです。これは、長い精進期間中、食事の種類が制限されるため、それに先立つマースレニツァで、盛大に飲み食いして陽気に歌い踊り、様々な遊戯を楽しむのがしきたりでした。現在では、精進期間中の制限を厳格に守る人はあまり多くはありませんが、マースレニツァの方は春を迎えるお祭りとして祝う風習が残っています。

ナホトカ港のU字型の半島の先端部にあるナホトカでも古い教会。

美しい装飾に彩られた教会の内部。

礼拝所を参拝したら牧師から記念に貰ったイコンのカレンダー。

■ロシアの教会を訪れてみて感じたことは、信心深い人たちが多数いたことです。統計によると、1991 年のソ連崩壊時に人口のわずか3 割だったロシア正教の信者の数は、1997 年には5割、2005年には6 割を超えました。法律上もロシア正教は特別な地位にあり、政権とは密接な関係にあります。プーチン大統領も信者ということで、若者が多いのも特徴です。つまり、ソ連ができる前の帝政時代に戻ったということになります。

 ロシア人にインタビューをすると、自分のルーツについて非常に関心を持っていることがわかります。日本人にはそれぞれ戸籍があり、ふるさとがあり、先祖代々の墓や、仏壇や神棚に先祖を祭るという風習があり、先祖から受け継いだ古民家に住み続ける人も数多くいます。

 ところが、ロシアではソ連時代にイデオロギー優先社会となり、政府の思惑や都合で、大半の国民が広い国内を強制的に移動させられました。したがって、先祖代々の墓だとか家だとか、自分のルーツを探し求める手掛かりがなく、そうしたことのできる日本人社会を羨む気持ちがあるのは事実です。

 それだけに、ソ連崩壊後、自分のアイデンティティーを求めたいという欲求の一つのはけ口が宗教への回帰という現象になっているのではないでしょうか。

■ロシアでは、ロシア正教ばかりでなくいろいろな宗教があります。もともと多民族国家であり、旧ソ連邦だった中央アジアのイスラム教の地域からも極東に多数移住させられています。ナホトカにも幾つかのモスク(回教寺院)があります。そのなかでも、中心的なのが、ナホトカの入り口にある丘陵地の山腹にあるピカピカのモスクです。

ナホトカで一番大きいモスク全景。

 まだ、毎朝昼晩コーランは流していませんが、一応1日5回の礼拝をおこなっているそうです。また、敬虔な信者向けに、ハラル(ハラールともいう)とよばれるイスラム教の教えに則って一定の作業で加工や調理された食品もその際に配布するのだそうです。驚くことに信者はここナホトカだけで1万2千人もおり、ナホトカの人口の約10人に1人はイスラム教徒ということになります。従って、モスクもあちこちにあるのだそうです。


ミナレット(尖塔)とモスク本堂の上には回教のシンボルのムーンスターの飾り。

■また、古めかしいロシア正教ではなく、新興宗教としてのキリスト教徒も増えています。若い人が多く集っていましたが、話を聞くと韓国から導入されたキリスト教だということです。ナホトカの中央広場へ登ってゆく坂の手前にあったモダンな教会はまさか統一教会ではないのでしょうが、こうしてアジアの国の新興宗教がロシアに根を張っている様子を見ると、複雑な気持ちがします。

新興キリスト教(韓国系か)。

ミサの様子。

暖房は韓国製の大型ファンヒーターで。

 こうした傾向は、保守的なロシア正教にたいするリベラルな人心の動きを示すものと言えるでしょう。

 いずれにしても、ロシアがソ連崩壊後、帝政時代に逆戻りするのか、それとも欧米化するのか、イデオロギー的思想が支配していた壮大な社会主義実験国家だったソ連から決別しつつあるのは事実です。

【ひらく会情報部・海外取材班】

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ホルマリン入り水道水問題で下流から指摘され慌てて調査し取水を中止した群馬県の恒常的体質

2012-05-20 17:58:00 | 国内外からのトピックス
■新聞などマスコミ報道で、5月18日に、利根川水系から流域の浄水場が取水している水道が有害物質のホルムアルデヒド(この35%溶液はホルマリンと呼ばれている)で汚染されていることがわかり、流域の自治体で断水など、広域的な問題が発生しています。この問題を検証してみると、背景に何か一般市民には知らされていない、得体のしれない理由があるようです。

 次に示す東京新聞の5月19日付記事によると、発端は5月15日に埼玉県の春日部市の庄和浄水場でホルムアルデヒドが浄水場で採取した水から基準値の半分程度検出されたのが発端となっていることを伺わせます。しかし、この記事によれば、浄水過程後の採取水のようですが、読み方によっては浄水前の原水、つまり河川から採取した水のようでもあります。

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行田・春日部 2浄水場で有害物質 埼玉県「健康に影響ない」
 埼玉県は5月18日、利根川水系から取水する県営の行田浄水場(行田市)と庄和浄水場(春日部市)で、浄水処理した水から水質基準値を上回る有害物質のホルムアルデヒドが検出された、と発表した。
 備蓄水などで基準値未満に希釈して家庭に供給しており、健康に影響はない。ただ備蓄水がなくなれば、一部で断水する可能性があるという。
 埼玉県は、上流にある化学薬品などの製造工場の排水が原因の可能性があるとみているが、流出場所は不明。同水系の下流の三郷市内にある東京都の浄水場や、同水系の千葉、茨城県内でも基準値を下回るホルムアルデヒドが検出され、千葉県では念のため取水を中止した。
 ホルムアルデヒドは接着剤や塗料に含まれ、発がん性がある。
 埼玉県によると、江戸川から取水する庄和浄水場で5月15日、基準値(1リットル中0.08ミリグラム)の約半分のホルムアルデヒドを検出。利根川から取水する行田浄水場で、5月17日の採取水から0.168ミリグラム)を検出した。庄和では5月18日の採取水から0.1ミリグラムを検出した。
 今後も基準値超えが続き、備蓄水が少なくなれば、埼玉県は両浄水場での取水を停止する可能性がある。埼玉県内28市町村の過程で水道水の出が悪くなったり、一部で断水する可能性もあるという。
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■そして、翌5月20日の東京新聞の一面の記事では、さらに広域にわたって、浄水場の水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出され、埼玉県、千葉県の自治体では34万世帯が断水の影響を受けたとされています。

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ホルムアルデヒド 34万世帯が一時断水 柏など5市 利根川支流 汚染源か
 利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で5月19日、千葉県では柏、野田、流山の3市の全域と八千代、我孫子市両市の一部で断水し、計約34万4千世帯に影響が出た。
 北千葉浄水場(流山市)と栗山浄水場(松戸市)で取水を再開しており、千葉県は断水地域は今後縮小するとみている。
 森田健作知事は同日午後、自衛隊に災害派遣を要請。野田、八千代両市に自衛隊の給水車が出動した。
 5月18日夜から断続的に取水を停止していた北千葉浄水場と栗山浄水場は、ホルムアルデヒドの濃度が国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)以下に下がったため、5月19日夕から夜にかけ取水を再開した。
 上花輪浄水場(野田市)は、濃度は基準以下に下がったが、取水停止が続いている。
 断水した地域では、柏市が16か所の防災井戸から応急給水に当たるなど、井戸水や給水車による水の提供が行われた。
 北千葉浄水場の取水再開を受け、柏市の断水は5月19日午後11時ごろには解除となる見通し。
 埼玉県によると、群馬県内を流れる利根川の支流の烏川(からすがわ)で比較的高い値が検出された。埼玉県は同日、埼玉県北部の利根川支流で追加調査を実施。
 担当者は「これまでの調査では、埼玉県内に汚染源があるとは考えられない」とし、群馬県内の烏川流域が汚染源との見方を強めている。
 一時停止した行田浄水場(行田市)では、ホルムアルデヒド濃度は低下を続けており、5月19日午前1時~午後3時の検査で基準値以下の0.029ミリグラム~不検出だった。
 庄和浄水場(春日部市)では5月19日午前に0.154~0.81ミリグラムと基準値を超えたが、午後3時には0.028ミリグラムに。埼玉県は「時間の経過とともに下がっており、今のところは取水・給水停止は考えていない」とした。
<ホルムアルデヒドが検出された主な浄水場>
浄水場名/給水人口/給水地域
■東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)/約21万人/太田市、館林市など2市5町
■行田浄水場(埼玉県行田市)/約180万人/熊谷市、上尾市、久喜市など24市町
■庄和浄水場(埼玉県春日部市)/約110万人/さいたま市岩槻区、春日部市など8市町
■上花輪浄水場(千葉県野田市)/約15万人/野田市
■北千葉浄水場(千葉県流山市)/約100万人/鎌ヶ谷市、白井市など9市
■栗山浄水場(千葉県松戸市)/約44万人/松戸市、市川市、鎌ヶ谷市
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■また同日の東京新聞の社会面には次のような市民の不安や不満の記事が掲載されています。

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週末の断水「情報遅い」 汚染広がる不満と不安
 「情報が遅い」「水が使えないと商売にならない」。浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された影響で、断水した千葉県柏市や野田市では5月19日午後、応急の給水所が設けられ、水を求める人々で長蛇の列ができた。影響は家庭や商店など広範囲に及び、週末の生活が脅かされた市民からは不満と不安の声が漏れた。
★千葉 給水、1時間待ちも
 柏市では昼すぎに始まった断水が午後2時には市内全域に広がった。井戸水を使って給水所の一つ市立柏第三小学校には、大きなポリタンクやペットボトルを手にした人が列に加わり、給水を待った。
 一時間近く並んだという男性会社員(58)は「昨夜から心配していたが、断水になるとは・・・。昼間に給水の情報を知ったが、情報伝達が遅いのでは」と不満を漏らした。
 近くに住む主婦(48)は「お店では水を汲むバケツなどの容器が売り切れていた。飲料は確保してあるが、トイレが心配」と不安な表情を見せた。
 柏市のスーパーマーケットでは2リットル入りペットボトルの水が午前中で売り切れた。「ペットボトル6本入りのケースを2、3箱まとめて買って行くお客さんが多かった」と店の担当者。調理の必要がない冷凍食品を買う客も多かったという。
 昼前から断水が始まった野田市。この日三回目の給水という栗田絵美さん(48)は「トイレや洗い物、炊飯などに使うので、水が浴槽いっぱいになるようにしたい」。
 野田市内の利用船の女性経営者(57)は「水が使えないので、お客さんにシャンプーができない。パーマの予約も1件入っていたが、こちらからキャンセルさせてもらった」と困り顔だ。
 営業時間を大幅に短縮して、午後3時過ぎに店じまいする料亭もあった。店の関係者は「土日は書き入れ時なのに。明日も断水が続くとしたら、本当に困る」と憤っていた。
★検出濃度の水道水なら「健康への影響ない」
 ホルムアルデヒドは住宅やビルに使われる建材の接着剤や、合成樹脂に含まれている化学物質。一定の濃度の水溶液はホルマリンと呼ばれる。蒸発しやく、吸い込み続けると呼吸困難や頭痛、喉や目の炎症が起こる場合があり、シックハウス症候群の原因物質とされている。
 世界保健機関(WHO)は、長期間、吸い込み続けた場合には発がん性があるとしている。水などに溶けたものを飲み続けた場合、明らかに発がん性があることを示す知見は得られていない。
 厚生労働省によると、WHOは昨年まで水道水の基準を1リットル当たり0.9ミリグラムとしていた。しかし、かなりの高濃度でないと、健康への影響が考えられる濃度とはならず、河川や海など環境中のホルムアルデヒドは相当少ないことから、現在は水道水の基準をなくしている、という。
 国の水質基準は0.08ミリグラム。基準以下なら、体重50キログラムの人が一日2リットルを毎日飲んでも影響がない。基準は、気化したものを吸い込むことも考慮しており、基準内なら毎日、風呂の水として使っても問題ない。
 ホルムアルデヒドはさまざまな有機物と塩素が反応すると発生し、浄水場で使う塩素と反応して発生する場合もあるという。
 慶応大学理工学部の田中茂教授(環境化学)は「国の基準はもともと国際的な基準より厳しい。今回の程度の濃度の水道水を短期間に飲んだとしても、健康への影響はないだろう」と話している。
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■そして、この問題について、原因場所の群馬県の地方版で東京新聞は5月20日に初めて記事を掲載しました。

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ホルムアルデヒド 汚染源特定は水採取 烏川流域 県、きょう調査結果
 利根川水系から取水する浄水場で国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、烏川流域に汚染源がある可能性が強いとみて、5月18日に0.032ミリグラムが検出された高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取した。検査結果は5月20日朝に公表される予定で、群馬県では原因物質と汚染源の特定を急いでいる。(川口晋介、中山岳)
 群馬県企業局などによると、同じ利根川から取水をしている埼玉県から5月17日午前、「ホルムアルデヒドが高い数値を示している」との連絡を受け、東部地域水道浄水場(千代田町)で同日と翌18日に採水し検査。
 国の基準値を下回ったため、送水を続けていたが、同日(17日?それとも18日?)午前に採水した処理前の原水の検査結果が、同日午後10時50分、基準超の0.098ミリグラムと判明し、同11時45分に取水を停止した。
 群馬県は同浄水場から送水する太田、館林市、大泉、板倉、明和、千代田、邑楽町の2市5町(給水人口約21万人)に連絡を取り、翌19日未明から太田市と大泉、明和、千代田各町には送水停止、館林市には30%減の送水制限を行った。このうち板倉町(同約1万5千人)とは連絡が取れず、断水できなかったという。
 群馬県は同浄水場で、19日午前4時過ぎに取水口など2か所で採水した結果は基準を下回る0.01~0.04ミリグラムだったため、同10時14分に取水を再開。各自治体に順次送水を再開した。
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■こうしてみると、群馬県は、5月17日に下流自治体から通報を受けて、県内の河川の水質を5月18日に測定し、その結果、0.032mgを検出した烏川流域がホルムアルデヒドの汚染源ではないかということで、5月19日に高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取したということになっています。このことについて、5月19日23:04の産経新聞ネット版は次のように報じています。

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一体何が起きたのか」 利根川支流が汚染源?
 利根川水系の浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。5月19日、関東3県で取水停止措置が相次ぎ、千葉県では断水になる地域も出るなど生活への影響が広がった。原因となる化学物質を扱う事業所が群馬県の利根川支流にあることも判明したが、これだけ広範囲で検出されるのは珍しく、関係自治体は汚染源の特定を急いでいる。
 「一体何が起きたのか」。群馬県では県水道課の職員が原因特定に追われた。
 同県では、数日前から東部地域水道浄水場(千代田町)でホルムアルデヒドが検出されており、5月19日に利根川をはじめ、支流の烏(からす)川(高崎市)、鏑(かぶら)川(同)、鮎川(藤岡市)など計8地点で採水し検査会社に調査を依頼した。検査結果は5月20日早朝に出るという。
 烏川周辺には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数あるという。
 群馬県水道課では「浄水場で水道水を作る際に消毒のために混ぜる塩素が、上流から流れてきた何かの物質と化学反応を起こしてホルムアルデヒドになったのではないか」と推測する。
 一方、埼玉県では行田浄水場(行田市)で取水制限を行ったが、川の水質改善が確認されたため、5月19日午前5時には解除。結果的に生活時間帯にはほとんど影響がなかった。その要因について県は、国土交通省が5月18日夜から利根川上流の2カ所のダムを放流し、利根川の流量が通常のほぼ倍になったことによる影響が大きいと分析している。
 埼玉県では平成15年11月、行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出されたことがある。このときは利根川支流にある埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていることが判明した。
 こうした経験に基づき、埼玉県は当初から、今回も化学系の工場からヘキサメチレンテトラミンが流出していると推測。5月19日には利根川水系での水質調査で群馬県内を流れる烏川沿いを割り出した。
 厚生労働省によると、ホルムアルデヒドは、草や藻などの有機物(アミン類)が含まれた水を塩素消毒すれば発生するため、浄水場で検出されること自体はめずらしくない。しかし、同省は「基準値を超えるホルムアルデヒドが広域で長期間検出されるのは初めてではないか」と話している。
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 また、東京新聞の5月19日13:53のネット版でも次のように報じています。

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ホルムアルデヒド 利根川支流域 汚染源か
2012年5月19日 13時53分
 利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、千代田町の東部地域水道浄水場で国の水質基準(一リットル中0.08ミリグラム)を超える0.098ミリグラムを検出し、取水を一時停止したと発表した。取水停止は、再開済みも含め千葉、埼玉、群馬の三県に拡大。埼玉県は水質調査から、群馬県高崎市付近の烏川流域に汚染源がある可能性を指摘した。 
 東部地域水道浄水場は5月19日朝に取水を再開した。千葉県では北千葉浄水場(流山市)の上流約15キロ地点で同日早朝、国基準の三倍に当たる0.246ミリグラムを検出。このため同浄水場は5月18日夜の取水停止後、19日未明にいったん再開したが、再び止めている。
 この影響で野田市では5月19日午前9時ごろから、市南部のほぼ全域で一般家庭の断水が発生。影響は少なくとも約10万人に上るとみられる。柏市でも正午ごろから一部地域で断水している。
 埼玉県によると、群馬県と合同の調査で、高崎市と同県玉村町の市町境の烏川で5月18日に採取した水から、0.032ミリグラムを検出。埼玉県は「少なくとも烏川流域に汚染源があることは確実」としている。
 烏川とは別の利根川の支流で同県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた。
 埼玉県の担当者は「ホルムアルデヒドを含む物質が原液に近い状態で、工場などから流出していると考えられる」と話している。
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■この記事の内容によると、群馬県水道課は、5月17日に、平成17年11月に行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出された経験を持つ埼玉県から指摘を受けて、さらに埼玉県から「平成17年の時は、上流にある利根川支流の埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていた」という情報を5月17日に受けても、まだどこが汚染源か特定できなかった様子が伺えます。

そこで、群馬県の対応に業を煮やした埼玉県が「烏川周辺に塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数ある」と独自に調査し、“烏川流域に汚染源があるのではないか”と、埼玉県に促されて、ようやく群馬県は重い腰を上げて、5月18日に埼玉県と合同で烏川流域の水質を計測し、埼玉県の指導で汚染原因場所を割り出してもらったという経緯が垣間見えます。

これでは、下流の首都圏民の健康を守るという自覚に欠けていると見られても仕方がなく、下流の自治体や住民にとっては、上流の群馬県がこのあり様では、安心して利根川水系の表流水を飲めないことになります。

■そして、本日5月20日の午前中に、群馬県はホームページで河川の水式結果を発表しました。これによると、汚染源のひとつとして群栄化学工業を想定していたことになります。さっそく群馬県のHPを見てみましょう。http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1000023.html

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【5月20日】浄水場等からの水質基準値を超えるホルムアルデヒドの検出を受けた河川水の調査結果について(環境保全課)
標記について、測定結果が得られたのでお知らせします。
1.調査方法
 河川水・事業場排出水に塩素を添加して生成したホルムアルデヒドを測定しました。
2.調査結果
 ・河川水(1)~(7)については、水道水質基準以下の値です。
 ・(8)の事業場排出水は0.41mg/Lですが、事業場直下流の地点((4)井野川の下井野川橋)では、水道水質基準以下の値となっています。
 なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です。
   採水地点/採水時刻(5月19日)/測定値(mg/L)/所在市町村/採水機関
(1)烏川(岩倉橋)/12:00/0.030/高崎市/群馬県・高崎市
(2)烏川(柳瀬橋)/11:35/0.017/高崎市・藤岡市/群馬県・高崎市
(3)井野川(宿矢橋)/11:00/0.006/高崎市/群馬県・高崎市
(4)井野川(下井野川橋)/11:15/0.017/高崎市/群馬県・高崎市
(5)烏川(共栄橋)/11:00/0.008未満/高崎市/群馬県
(6)鏑川(鏑川橋)/10:17/0.008未満/高崎市/群馬県
(7)鮎川(鮎川橋)/10:00/0.008未満/藤岡市/群馬県
(8)群栄化学工業(株)排出水/10:10/0.41/高崎市/県・高崎市
 ・(1)~(4)、(8)の定量下限値は、0.005mg/L、(5)~(7)の定量下限値は、0.008mg/Lです。
 ・ホルムアルデヒドの水道水質基準は「0.08mg/L以下」です。
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■このように群馬県は発生原因を群馬県高崎市宿大類町700にある群栄化学工業㈱http://www.gunei-chemical.co.jp/ではないかとみていたことを示唆しています。

 群栄化学のHPによれば、同社の製品としては、次のものが挙げられています。
 ◇化学品部門
 ・アルミ鋳造用高性能重視
 ・真珠状樹脂(マリリン)
 ・射出成型用試作型
 ・溶剤可溶型多官能ポリイミド(フェノール性水酸基を有する溶剤可溶型ポリイミド)
◇食品部門
 ・天然旨味シロップシリーズ
 ・保水性糖質素材(ピュアトース)
 ・低甘味液状デキストリン(LS-20)
 ・天然植物活力剤(発酵オリゴ酢)

 したがって、同社からホルムアルデヒドの生成原因物質が排出している可能性は高いのは事実です。ところが実際にどれくらい使用して排出しているのか、群馬県は把握していないようです。本当のところは同社しかわからないということのようです。群馬県は、「なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です」と、排出基準を非常に高く設定していた事を認めています。他方、群栄化学がホルムアルデヒドの生成原因物質を排出した時期は5月15日以前と考えられるため、その当時の排水記録や状況をチェックしたうえで、上記のコメントを発したのであればともかく、当時の排水状況を同社にヒヤリングしていないのであれば、問題のある記載です。

■であれば、なぜ下流の数10万の住民に迷惑を掛けるような事態が発生したのでしょうか。

 心配なのは、群栄化学が排水先としている井野川が烏川に合流する上流にあたる烏川にかかる柳瀬橋で、0.017mg/Lが検出されていることです。この橋は、高崎線の上り線の鉄橋から見える橋ですが、ここでもホルムアルデヒドの原因物質が検出されているということは、群栄化学以外にも原因者がいることになります。

 また、群馬県は柳瀬橋からさらに上流?の(5)烏川(共栄橋)、(6)鏑川(鏑川橋)、(7)鮎川(鮎川橋)での測定に、なぜか定量下限値が0.008mg/Lと、性能の劣る測定機材を使っていることが気になります。

■当会では、ホルムアルデヒドの原因物質とされているヘキサメチレンテトラミンの排出源は群栄化学だけではないと考えています。その中で、烏川流域及びその支流の河川の一つである碓氷川や雁行川など、流域にサンパイ処分場を有する河川からの流出の可能性もあると考えています。

 実際に、上記の東京新聞の記事にもある通り、埼玉県は「利根川の支流で埼玉県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた」ということです。

 群馬県は5月18日に烏川(柳瀬橋)で採取した河川水から0.017ミリグラムを検出したのですから、当然、群栄化学の排水が流れ込んだ井野川との合流よりさらに上流の烏川流域及びその支流についてもきちんと継続的に測定すべきです。

■ホルムアルデヒドの原因とされるヘキサメチレンテトラミンは、樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる物質です。サンパイ処分場にはプラスチック屑やゴム屑などは安定型処分場にそのまま埋め立ててよいとされています。

 また自動車の解体等で発生するプラスチック類を多く含むシュレッダーダストなども、処分場に埋め立てられますが、こうした物質を土中に埋め立てた場所では非常な高温となり、得体の知れないガスが発生することは常識です。そのため、埋め立てた化学物質が分解し、製造過程で加えられたいろいろな添加物質が浸出して浸透した雨水に溶け込み、排水として下流に滲み出てくるのです。

 群馬県西南部や西部には、沢山のサンパイ場や不法投棄場所が点在しています。烏川はこれらの中を流れており、当然、そうした処分場や不法投棄場所から滲み出た原因物質が河川水に何らかの影響を与えているはずです。

■現在、高崎市吉井町上奥平地区や、安中市岩野谷地区では稼働中のサンパイ場或はサンパイ場計画が目白押しです。そうした処分場ひとつひとつでは、たとえ排水基準を下回っていても、総量として下流の河川に加わる負荷は無視できなくなってきます。今回のホルムアルデヒドによる水質汚染もそうした背景が考えられます。

 さらに、初期の報道では有機物に塩素を加えたため、ホルムアルデヒドが生成されたという見方もされていました。本当はホルムアルデヒドではなくさらに危険な発言物質のトリハロメタンが生成されている危険性にも目を向ける必要があると思います。

■下流の首都圏住民の健康と安心な暮らしを守るため、上流の水源地に住む我々住民としては、地元に計画されているサンパイ処分場計画を食い止める責務があります。

 しかし、群馬県は上記に述べたような体質ですから、サンパイ場業者の側に立ち、既に承認した案件を前例として、どんどん許認可を出しているのが実態なのです。

【ひらく会情報部】

※参考資料
【ヘキサメチレンテトラミン】(出典:ウィキペディア)
 ヘキサメチレンテトラミン (hexamethylenetetramine) は4個の窒素原子がメチレンによってつながれた構造を持つ複素環化合物である。ヘキサミン (hexamine) あるいは1,3,5,7-テトラアザアダマンタンとも呼ばれる。無色で光沢のある結晶もしくは白色結晶性の粉末である。
 産業面では化学工業において樹脂や合成ゴムなどを製造する際の硬化剤として用いられる。
 医療においては、膀胱炎、尿路感染症、腎盂腎炎の治療に用いられ、日新製薬からヘキサミン注「ニッシン」として販売されている。これは、ヘキサミンが尿内でホルムアルデヒドに分解し、尿が防腐性を持つことを利用したものである。
 また、生物学の分類学や生態学の研究現場では、石灰質(リン酸カルシウムや炭酸カルシウム)によって硬化した硬組織を持つ、脊椎動物や甲殻類の標本をホルマリン固定で保存するときに用いることがある。ホルムアルデヒドは水溶液であるホルマリンの中で酸化して徐々にギ酸に変化するが、ヘキサメチレンテトラミンは水中でアンモニアとホルムアルデヒドに分解し、このアンモニアがギ酸を中和して標本の脱灰を防止する。通常ホルマリンの原液にヘキサメチレンテトラミンを飽和させ、これを3~5%に希釈して使用する。
 食品の保存料としての使用法もあり、海外ではチーズに添加される場合があるが、日本では食品への添加は法律で禁止されている。RDX爆薬を製造する際の原料となる。
 1,3,5-トリオキサンと合わせて棒状に固めたものは、野外で使う固形燃料として用いられる(en:hexamine fuel tablet)。
【新聞記事】
**********(時事通信2012/05/19-13:49)
群馬県内の支流に発生元か=千葉県内21万世帯で断水-ホルムアルデヒド取水停止
 利根川水系の埼玉、千葉両県の浄水場から国の水質基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)を上回る化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県内を流れる支流の烏川で比較的高い値が検出されたことが5月19日、調査で分かった。同県などは、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性もあるとみて詳しく調査している。
 同日昼現在、北千葉浄水場(千葉県流山市)と上花輪浄水場(同県野田市)、栗山浄水場(同県松戸市)の3カ所で取水を停止しており、同県野田市では同日午前から全体の3分の2に当たる約4万6000世帯で、同県柏市でも正午からほぼ全域の約16万4900世帯で断水している。
 群馬、埼玉両県は、塩素を混ぜるとホルムアルデヒドに変化する物質が、川に流出しているのが原因とみて調査。約5キロ下流で利根川に合流する群馬県高崎市付近の烏川で比較的高い数値を検出したことから、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性が高いとみて詳しく調査する一方、利根川に流れ込む埼玉県内の複数の河川も調べている。
 行田浄水場(埼玉県行田市)と東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)は一時取水を停止したが、数値が下がったことなどから既に再開した。
**********(スポニチ 2012年5月19日 21:40)
千葉で断水、影響34万世帯 周辺から流出疑いも
 関東地方の浄水場の水道水から水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県と千葉県は5月19日までに、新たに計2カ所の浄水場で取水を停止した。
 千葉県内では、柏市や流山市など5市で計34万世帯以上が断水。給水所には水を求める長蛇の列ができた。
 千葉県知事は5月19日、自衛隊の災害派遣を要請。自衛隊は断水地域に給水車などを出動させた。政府は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。
 埼玉県によると、群馬県高崎市の利根川支流の烏川で5月18日、濃度が比較的高いホルムアルデヒドを検出。両県は烏川上流で採水し汚染源を絞り込むとともに、事業所への聞き取りも進めた。
 烏川上流には塩素と結び付くとホルムアルデヒドになる「ヘキサメチレンテトラミン」という物質を扱う事業所が複数ある。樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる。
 千葉県は5月18日に上花輪(野田市)北千葉(流山市)の2浄水場で取水を停止。5月19日未明、栗山浄水場(松戸市)も基準を超える恐れがあるとして取水を止めた。うち1カ所で取水停止が継続。
 埼玉、群馬県では19日までに取水が再開。埼玉県は行田浄水場(行田市)の取水堰で5月18日午前に採取した水から基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)の2.5倍のホルムアルデヒドを検出。5月19日早朝、基準を安定的に下回ったとして取水と給水を再開した。
 群馬県は5月18日夜、千代田町の東部地域水道浄水場で取水を停止。18日に採取した利根川の水を塩素処理した結果、基準を超える0.098ミリグラムを検出した。浄水処理後は0.04ミリグラムで基準を下回ったが、通常より高いため安全性を考慮した。
 東京都水道局も江戸川、荒川両水系の浄水場3カ所で水質検査。基準を超える数値は出ておらず取水制限はしていない。
**********(毎日新聞 2012年5月19日(土)18:00)
<利根川・化学物質検出>千葉・柏、野田で断水 3県一部、取水停止
 利根川・江戸川水系の浄水場の水道水から水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉、群馬、千葉の3県の一部で取水が停止され、5月19日午前、野田、柏両市など千葉県で断水する地域が出始めた
 影響が広がり、国土交通省関東地方整備局や各県は水質調査など対応に追われている。一方、ダム放水により数値が下がった取水地もあり、一部で取水が復活した。今回確認されている数値について各県は「短期的には摂取しても人体に影響はない」としている。
 千葉県北西部に給水している北千葉浄水場(流山市)では、5月19日午前5時、上流10キロから取水した水から基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)の約3倍に当たる同0.246ミリグラムのホルムアルデヒドを検出。北側の上花輪浄水場(野田市)なども含め複数の浄水場で取水停止措置を随時取っている。
 5月19日正午時点の同県のまとめによると、野田市が午前9時半過ぎから、柏市は正午過ぎから断水が始まった。野田市では約13万人が影響を受ける見込み。夕方にかけて我孫子市や八千代市でも断水の恐れがあるという。
 関東地整は、水質回復のため、5月18日夜から、上流部の下久保(群馬、埼玉県)、薗原(群馬県)両ダムと渡良瀬遊水池(栃木、群馬、埼玉、茨城県)から緊急放流している。
 上流の群馬県では5月18日、東部地域水道浄水場(千代田町)の水道水から最大で同0.04ミリグラムを検出。埼玉、群馬両県が調べたところ、上流で利根川に注ぐ烏川で同0.032ミリグラムを検出。
 同川の流域には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを大量に使う事業所がある。【林奈緒美、山縣章子、塩田彩、樋岡徹也】
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