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穏やかな日々を

総選挙後の医療政策はどうなるのか◆Vol.2

2012年12月20日 00時39分47秒 | 
総選挙後の医療政策はどうなるのか◆Vol.2

財政難と高齢化を克服するための私見

2012年12月20日 小松秀樹(亀田総合病院副院長)


 人材の養成

 日本の医療サービス提供量は地域によって大きく異なる。首都圏、特に、埼玉県、千葉県では医療・介護サービスの提供量が不足している。急速な高齢化によりさらにサービス不足が顕著になる。需要が大きいので、上手に利用すれば、雇用を大幅に増やせる。巨大な人口が一斉に高齢化するので、手をこまねいていると、孤独死が日常化する。

 問題は人材不足である。千葉県は2012年春、医療計画に基づいて一般・療養病床3122床を配分した。さらに、10月、603床の病床配分の公募予定を発表した。しかし、人口当たりの看護師数、看護師養成数が全国最低レベルである。病床当たりの看護師の数は診療報酬で細かに決められている。看護師の養成が不足したまま、病床を配分すると、実働しない許可病床を増やす。これが既得権になって、逆に増床を妨げる(参考文献1、2)。

 旭中央病院は、千葉県北東部、茨城県の南東部の住民約100万人の医療を支える一大拠点である。病床数が989床、2011年度の救急患者数は約6万人で、そのうち約6300人が入院した。この旭中央病院が2012年4月から、救急の受け入れを制限せざるを得なくなった(参考文献3)。

 全体として、筆者の勤務する亀田総合病院と同様の診療規模だが、救急患者に限れば、亀田総合病院よりはるかに多い。しかし、常勤医師数が、亀田総合病院に比べて少なかった。今年度、研修医を含む常勤医師数が253人から239人に減少した。以前より、厳しい状況だと聞いていたが、内科の中堅医師が減少したため、負荷が限界を超え、医師の士気に影響が出始めた。ちなみに、亀田総合病院は2012年4月1日時点で、常勤医師数365人だった。

 千葉県の東部、長大な九十九里浜の中央部は、日本有数の医療過疎地帯である。現在、ここに東金市・九十九里町が設立した地方独立行政法人が東千葉メディカル・センターを建設中である。しかし、医師の供給を千葉大学に頼ろうとしている。日本では80大学に医学部がある。人口約150万人に1校の割合である。千葉県は人口約620万人だが医学部は千葉大学のみである。千葉大学の医局は常に医師不足状態にある。東千葉メディカル・センターに医師を派遣するためには、他から引き剥がさなければならない。引き剥がせば、その病院が崩壊しかねない(参考文献3)。

 人材不足に対応するためには、医師や看護師に限定された業務を、他の職種が実施できるようにすべきであるが、千葉、埼玉など一部地域ではあまりに人が足りない。人材、とりわけ、医師、看護師、リハビリ職員の養成が喫緊の課題である。

 医療費給付の平等化

 医療法に基づく医療計画制度は、医療サービスの提供を平等にするのではなく、逆に地域差を固定した(参考部文献4)。現状の中国、四国、九州の人口当たりの一般病床数は、埼玉、千葉の2倍近い。首都圏の高齢化によってこの差がさらに大きくなる。厚労省の2010年度医療費の地域差分析によれば、国民健康保険と後期高齢者医療制度では、福岡県は千葉県の1.39倍の医療費を、高知県は静岡県の1.72倍の入院医療費を使っている。国民健康保険、後期高齢者医療制度の給付全体の中で、被保険者の保険料はそれぞれ、25%、10%を占めるにすぎない。残りは公費、健保組合からの拠出金で賄われている。住んでいる地域によって、国民に不平等がある。5年ほどかけて、不平等を解消してみてはどうか。国民への医療給付を平等にすれば、中国、四国、九州の医療機関や医療従事者を、医療サービス供給不足が拡大する首都圏、東海、東北に移動させることができるかもしれない。

 メディカル・スクール

 現在、人材育成の主体は文部科学省‐大学である。文科省‐大学は、教育のために存在する。医療のように社会で機能している分野の教育を、教育を主目的とするシステムが担うと問題が生じる。

 千葉県では、看護師不足にもかかわらず、看護師養成数が少なかった。千葉県の人口当たりの看護学生数は、2009年段階で全国45位だった。高齢化により、看護師不足が深刻になることは、人口推計から容易に想像できた。それにもかかわらず、千葉県の教育関係者は、教育側の都合で、千葉県立教育機関による看護師養成数を1学年240人から80人に減らした。

 教育システムは自らの存在を大きく見せするため、教育期間を長くし、位階を設ける。これが、コストを押し上げる。医学部の大学院生の中には、研究だけに従事している者もいるが、多くは医師として働いている。これで良いのである。医師は医療現場に留まることで、医師としての質と現実感を保つことができる。

 教職を目指す看護師は、長く苦しい博士課程に進学する。現場を離れると、看護師としての質を保つのが難しくなり、現実感が失われる。看護研究の計画書を多く読んできたが、しばしば、目的が明確でなく、方法があいまいだった。解釈可能な結果が出るとは思えないものが目立った。看護研究の少なからざる部分が、位階のための意味のない苦行になっているのではないかと危惧する。位階のための苦行は、看護師教育を歪めかねない。医療従事者の教育は、教育システムではなく、医療システムで担う方が質を高くし、学生に現実を伝えられる。 

 アメリカでは、4年制大学の卒業生を対象に4年間で医師を養成するメディカル・スクーが主流である。病院主体でメディカル・スクールを設置、運営すれば、従来の医学部より費用が格安になる。埼玉県では、埼玉県立大学に従来の6年制医学部を設置することを検討している。上田知事の県議会での答弁によると、医師300人をはじめ、1300人程度の医療スタッフを確保しなければならず、建設費として700億円程度の初期投資と、運営費として最大で年間65億円程度の補填が必要である。

 人材と資金の確保が難しい。既存の病院にメディカル・スクールを設置するとすれば、講義棟の建設費に20億円もかければ十分である。基礎医学の教育は、必ずしも常勤の教員が担当する必要はない。外部の研究者に委託すればよい。医師不足と財政難の中で、医師を養成するには、既存の施設とそこで働く医療従事者を活用するしかない。メディカル・スクールが実現すれば、従来の医学部もその地位に安住できなくなり、努力せざるを得なくなる。

 生老病死

 医療の効率化のためには、国民に、医療に莫大な費用がかかることに加えて、医療に限界があること、生老病死が避けられないことを理解してもらう必要がある。

 有史以来、人間の力では病気を治せなかった。治癒は生体の回復力と偶然の結果だった。第二次世界大戦後、抗生剤の普及で病気の治療が可能になった。以後、次々と治療可能な病気が増えていった。麻酔学の発達、工学系の技術の進歩が加わり、治療のために、病院が巨大化し、かつ、複雑になった。

 高齢者に対する胃ろうや経管栄養の普及は、日本人の寿命が限界に近いことを示している。社会の高齢化に伴い、病気の概念が広がり、老人性痴呆までが病気になった。加齢に伴う身体の衰えは、治癒しない。しばしば、介護を必要とする。治療を主たる業務とする病院だけでは高齢化社会に対応できなくなった。

 現在、健康に大きな影響を与えているのは、医療提供の濃淡より、貧困と社会的包摂である。医療提供に大きな地域差があるにもかかわらず、日本の市町村ごとの平均寿命は、近似している。市町村ごとの男女別平均寿命の上位30位に男女とも入っているのは、横浜市青葉区、川崎市麻生区、横浜市緑区の3カ所のみである。共通するのは、富裕層の第一代目が住んでいるか、あるいは、最近まで住んでいたこと。下位30位で目立つのは、男性の最下位の大阪市西成区。下から2番目との間に2.1歳という他では見られない圧倒的な差がある。私は、日本人の寿命が延びたのは、食事、水、生活環境の改善によるのであって、医療の貢献は大きくないと思っている。

 大病院は介護を担えない。穏やかな雰囲気での看取りは不可能である。しかも、フル装備の先進的病院は、多額の投資をしている。急性期医療に特化して活動しないと経済的に病院を維持できない。予想されている死を看取るのに、大病院を利用するのは適切でない。医療費を押し上げるのみならず、本気で救わないといけない患者が入院できなくなる。
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政治への不信感として私にもあります。日本を救う者は自民党ではないのでは?と感じます。

2012年12月20日 00時33分22秒 | 
総選挙後の医療政策はどうなるのか◆Vol.1

財政難と高齢化を克服するための私見

2012年12月19日 小松秀樹(亀田総合病院副院長)


  民主党政権の稚拙

 2012年12月16日の衆議院総選挙で自民党が大勝し、3年4カ月ぶりに政権を奪還することが決まった。私は、前回の2009年の総選挙直後、m3.comに「民主党には現実認識に立脚した医療政策を期待」と題する文章を投稿し、以下のようなメッセージを発信した(『民主党には現実認識に立脚した医療政策を期待』を参照)。

 「新政権に望むのは安定。政治家は、合意形成を演じて認知させることのプロであって、信念のプロではない。数に任せて自民党を粗末にすることがあってはならない。成り行き任せの結果の見えない叩き合いなどするべきではない。自民党が壊れると、必然的に民主党が分裂し、混乱が拡大する。保守政治家がどの政党に所属しているかは偶発的な出来事の結果である。均質な国民から成る日本で、長持ちする対立軸は形成できない。2009年の総選挙では民主党は勝ち過ぎた。日本国民の性癖から見て、次の2010年の参議院選挙で民主党は必ず敗れる。安定のためには、成り立ちの異なる政党、具体的には公明党の協力を求めるしかない」

 予想通り、2010年7月の参議院選挙で民主党は大敗し、参議院で与野党が逆転した。

 政権政党としての民主党は、当初、中医協から日本医師会の代表を外すなど、明確な方向性のある政策を打ち出した。病院の診療報酬を増やして、赤字に苦しむ病院を救い、多数の雇用をもたらした。しかし、その後の民主党は稚拙だった。事業仕分けはメディア向けのパフォーマンスだった。八ツ場ダムについての大臣の発言は、政権党内部で合意がなかった。無駄削減で子ども手当の費用を捻出するとしていた。無駄削減は血を流すこと。その覚悟がなかった。結局、無駄削減を捨てて、ばらまきになった。

 特に復興予算には規律がなかった。政府は、復興予算を増税で賄おうとした。国民が自らを犠牲にして、被災者を助けようとするものであり、とりわけ「公共心と自制心」が求められてしかるべきだった。ところが、官僚は復興予算に群がり、復興と関係のないところにまで予算をばらまいた。民主党政権は官僚の暴走に同調した。

 私は数年来、消費税を上げるべきだと主張してきた。しかし、復興予算をめぐる官僚の行動を見て、消費税を上げる前にやるべきことがあるという、かつての民主党の主張に一理あったと思わざるを得なかった。

 私の考える脱官僚とは、官僚を排除して政治家があらゆる決定権を持つことではなく、行政的中央集権がもたらしている社会のすべてを覆う事細かな規制を取り払い、個性的でエネルギッシュな個人が未来を切り開く活動を邪魔しないようにすることである。民主党は、官僚の権限を政治家が奪うことだけしかイメージしていなかった。行政的中央集権はそのままだった。東日本大震災では、菅総理が官邸中央集権に挑んだ。あらゆることを官邸で決めようとしたが、情報が集まり過ぎて処理できずシステムダウンした。結果として、民主党政権はこれまで以上の官僚主導になった。

  自民党に対する不安

 自民党は、民主党が自滅したため、政権に復帰できることになったが、自民党が大きな改革で生まれ変わったわけではない。2009年の総選挙後、知人の自民党の元幹部は、私に、「自民党は危ない。敗因が分かっていない。敗因を、メディアを含む外部に求めている。自分たちが被害者だと思っている」と語った。

 2007年7月の参議院選挙で、自民党は惨敗を喫した。当時の安倍首相は、内閣改造を行い、政権担当継続の意思を示した。しかし、所信表明演説の2日後、唐突辞職を表明した。

 安倍総裁がかつて主張していたように、再チャレンジできる社会は重要だが、あくまで人生の落後者を出さないための議論である。中規模以上の会社で、責任を放棄した社長が復活することはあり得ない。ましてや、GDP世界三位の大国の指導者である。自民党にも人材がいないわけではない。有力政治家の子弟は社会の注目度が高く、明らかに特別扱いされている。その分、他の議員にはチャンスが与えられない。門閥議員は、責任の問われ方も軽い。平安時代、摂関家は特別な存在だった。生まれたときから、高位高官が約束されていた。武士は死罪になっても、貴族に死罪はなかった。公家政治が現代日本で通用し続けるはずがない。自民党が社会の常識から大きく乖離していることを、自民党議員が自覚していない。

 政治とは「われわれ」と「やつら」を区別することから始まり、「われわれ」と「やつら」の間のやりとりで動いていく。勇ましい理念は、「われわれ」だけの問題でしかない。異なる理念、行動原理を持つ相手、特に強大な力を持つ相手を議論の場に誘導し、隘路を見出し、交渉し、合意を形成することこそ、政治家の力量である。苛烈な状況で万策尽きれば、被害を最小にするために、忍従を選択して時間の経過を待たねばならない。自民党には、結果を良くするために、何のためらいもなく理念を退ける冷徹さを求めたい。

  高齢化、財政赤字、貿易赤字

 日本社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(出生中位死亡中位)によれば、2010年から2030年までの20年間で、20歳から64歳までの生産年齢人口は7564万人から6278万人に減少する(マイナス1290万人)。一方で75歳以上の高齢者が1419万人から2278万人に増加する(プラス860万人)。3分の1が首都圏の増加である。75歳以上の人口の7%強が要支援、22%が要介護になる。

 総選挙後、高齢化による医療・介護需要の増加(2) と、財源不足への対応が待ったなしになる。首都圏のベッドタウンでは、戦後の高度成長期に地方から出てきた団塊の世代が一斉に高齢化しつつある。急増する医療・介護需要をどう支えるのかが問題になる。問題が大きすぎるため、政党ごとの独自性はかすんでしまう。

 加えて、原発停止による化石燃料輸入の急増、尖閣問題による対中国貿易の落ち込みで、日本の貿易収支は大幅な赤字になった。日本の貿易収支が黒字になることは当面ない。経常収支の動向によっては円安になる。入超が前提なので、円安になると貿易赤字がさらに大きくなる。インフレターゲットで円安に誘導すると、さらに貿易赤字が膨らむ。

 国債を大量に発行して公共工事を増やしても、消費人口の減少、消費意欲の縮小から、GDPを押し上げる波及効果は期待しにくい。景気が回復することなく、国債が値下がりして金融が混乱する可能性すらある。

 以下、財政難と高齢化を克服するための私見であるが、今後、似たような方向の議論は避けられない。


とても良く理解できます。私のような老婆でも・・・・
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政界と財界の癒着そして医療界との癒着(驚)

2012年12月20日 00時15分26秒 | 
集金力は政界5位 資産1億5千万円
共同通信社 12月18日(火) 配信


 次期首相就任が確実になった安倍晋三氏の2011年分政治資金は1億8355万円で、当時の国会議員中5位の集金力を誇る。首相を辞任した07年以降も毎年1億円以上をコンスタントに集めている。10年2月に公開された国会議員資産報告書によると、総資産は1億5035万円だった。

 【政治資金】11年分の政治資金は、安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」と党支部「自民党山口県第4選挙区総支部」の合計。内訳は政治資金パーティーが67%と3分の2を占め、企業・団体献金が18%、政治団体献金が5%、個人献金が4%だった。

 パーティーは東京、名古屋、大阪、広島、福岡でそれぞれ開催。3479人から1億2323万円を集めた。製薬産業政治連盟や日本医師連盟などが1回20万円超の大口購入者に名を連ね、かつて自民党社会部会長だった「厚労族」の顔をのぞかせる。

 企業・団体献金は3363万円で首都圏や関西、地元の山口県などの企業が並ぶ。政治団体の献金は997万円。日本薬業政治連盟、日本保険薬局政治連盟など医療関係団体が目立つ。個人献金は799万円。作曲家や評論家ら5人が100万円ずつ献金。中国電力の役員3人も3万円ずつ献金していた。

 【資産】山口県下関市や同県長門市などの不動産が計9285万円。預貯金などの金融資産が5750万円。昭恵夫人の父が社長を務めた森永製菓4万9千株や10カ所のゴルフ会員権などを保有していた。

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