(脱・働きすぎ:1)過重労働、違法とすべきだ 濱口桂一郎さん
朝日新聞 2014年10月24日(金) 配信
――日本の労働時間の実態をどう見ますか。
「働きすぎです。ここ20年ほどで、過労死につながりかねない働き方が普通に見られるようになってきました。命や健康を守ることが喫緊の課題です」
――長時間労働はなぜ定着したのでしょう。
「1970年代の石油ショックがきっかけです。景気が冷え込んだ際に、国が助成金を出して雇用を守り、企業は社員を解雇するのではなく、残業を減らして対応したのです。その代わりに景気が回復しても正社員は増やさず、少ない人数で長い時間働くことにしました。政労使ともに、解雇を避けることを最も優先した結果、終身雇用と長時間労働がいわばセットになった『日本型雇用システム』が確立したのです」
――長時間労働は、企業社会の成り立ちに深く関わっているのですね。
「日本社会は、ある意味で長時間労働を合理的に選択したのです。ただ90年代以降、企業は景気変動に応じていつでも調整できる非正規雇用を増やし、正社員をさらに少数に絞り込みました。昔に比べ正社員の負荷は高まり、働きすぎはより深刻になっています」
――日本の労働時間の規制の仕方に問題はないのでしょうか。
「労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせてはならないと決められています。罰則もあります。例外として、労基法36条に基づく労使協定(36協定)を結べば、1日8時間を超えても労働者を働かせることができます」
「しかし、『ノー残業デー』という言葉がよく使われていることをみても、日本企業では残業が当たり前で、『残業なし』は珍しいのです。そして日本の法律では、これ以上働かせたら違法になるという労働時間の上限は存在しません」
――どうすればいいのですか。
「脳・心臓疾患の労災認定では、発症前の1カ月間に100時間または2~6カ月平均で月80時間を超える時間外労働は明らかに過重と基準が示されています。少なくとも、労災認定されるほどの長時間労働は違法とするべきです」
「欧州連合(EU)では勤務を終えた後、次の勤務が始まるまでに最低11時間の『休息時間』を労働者に保障することを義務づけています。この制度を採り入れるのも一案でしょう。ただし、11時間では最低限の睡眠や食事、通勤などを確保するのが精いっぱいで、家事や育児、余暇などはまったくできません。それでも日本では、規制を嫌う企業から『そんなのできるわけがない』と反発を受けているのが現状です」
――政府は「残業代ゼロ」の新しい制度を検討しています。
「法定労働時間以内なら今でも労働時間と賃金は切り離せます。新しい制度の本質は、残業や休日出勤しても残業代を払わなくて済むというものです。給料が高いホワイトカラーの労働者には、残業代割り増しの適用を外すという話は合理的です」
「問題は、こうした本質を隠し、仕事と家庭の両立を図るワークライフバランスの実現のためなどという議論がなされていることです。労働基準法は8時間より短く働くことを禁じていません。いまも自由な働き方はできます。長時間労働が問題だというならば、まず労働時間を減らすアプローチを考えるべきです」(聞き手・岡林佐和)
*
はまぐち・けいいちろう 労働政策研究・研修機構主席統括研究員 旧労働省(現厚生労働省)、東京大客員教授などを経て、現職。56歳。
◇政府が検討している「残業代ゼロ」とする働き方をめぐり、「働きすぎを助長する」「柔軟な働き方ができる」と賛否が分かれている。背景にある日本の長時間労働をどうなくすのか、改めて考える。
◆キーワード
<「残業代ゼロ」の働き方> 年収1千万円以上の専門的なホワイトカラーを対象に、残業代の割り増し規制を外す新しい制度。安倍政権が成長戦略の一環として導入を決めた。厚生労働省の審議会で、年末にかけて詳しい制度設計を議論している。
一日、15時間、働いて、働いて、もう慣れちゃって、平気って方が、基準になったら、
婆なんか、ぶっ倒れて、失業しちゃうね。
でも、この世に、1000万以上の年収のある方って、どっかに、県別人数出ているかしら?
朝日新聞 2014年10月24日(金) 配信
――日本の労働時間の実態をどう見ますか。
「働きすぎです。ここ20年ほどで、過労死につながりかねない働き方が普通に見られるようになってきました。命や健康を守ることが喫緊の課題です」
――長時間労働はなぜ定着したのでしょう。
「1970年代の石油ショックがきっかけです。景気が冷え込んだ際に、国が助成金を出して雇用を守り、企業は社員を解雇するのではなく、残業を減らして対応したのです。その代わりに景気が回復しても正社員は増やさず、少ない人数で長い時間働くことにしました。政労使ともに、解雇を避けることを最も優先した結果、終身雇用と長時間労働がいわばセットになった『日本型雇用システム』が確立したのです」
――長時間労働は、企業社会の成り立ちに深く関わっているのですね。
「日本社会は、ある意味で長時間労働を合理的に選択したのです。ただ90年代以降、企業は景気変動に応じていつでも調整できる非正規雇用を増やし、正社員をさらに少数に絞り込みました。昔に比べ正社員の負荷は高まり、働きすぎはより深刻になっています」
――日本の労働時間の規制の仕方に問題はないのでしょうか。
「労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働者を働かせてはならないと決められています。罰則もあります。例外として、労基法36条に基づく労使協定(36協定)を結べば、1日8時間を超えても労働者を働かせることができます」
「しかし、『ノー残業デー』という言葉がよく使われていることをみても、日本企業では残業が当たり前で、『残業なし』は珍しいのです。そして日本の法律では、これ以上働かせたら違法になるという労働時間の上限は存在しません」
――どうすればいいのですか。
「脳・心臓疾患の労災認定では、発症前の1カ月間に100時間または2~6カ月平均で月80時間を超える時間外労働は明らかに過重と基準が示されています。少なくとも、労災認定されるほどの長時間労働は違法とするべきです」
「欧州連合(EU)では勤務を終えた後、次の勤務が始まるまでに最低11時間の『休息時間』を労働者に保障することを義務づけています。この制度を採り入れるのも一案でしょう。ただし、11時間では最低限の睡眠や食事、通勤などを確保するのが精いっぱいで、家事や育児、余暇などはまったくできません。それでも日本では、規制を嫌う企業から『そんなのできるわけがない』と反発を受けているのが現状です」
――政府は「残業代ゼロ」の新しい制度を検討しています。
「法定労働時間以内なら今でも労働時間と賃金は切り離せます。新しい制度の本質は、残業や休日出勤しても残業代を払わなくて済むというものです。給料が高いホワイトカラーの労働者には、残業代割り増しの適用を外すという話は合理的です」
「問題は、こうした本質を隠し、仕事と家庭の両立を図るワークライフバランスの実現のためなどという議論がなされていることです。労働基準法は8時間より短く働くことを禁じていません。いまも自由な働き方はできます。長時間労働が問題だというならば、まず労働時間を減らすアプローチを考えるべきです」(聞き手・岡林佐和)
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はまぐち・けいいちろう 労働政策研究・研修機構主席統括研究員 旧労働省(現厚生労働省)、東京大客員教授などを経て、現職。56歳。
◇政府が検討している「残業代ゼロ」とする働き方をめぐり、「働きすぎを助長する」「柔軟な働き方ができる」と賛否が分かれている。背景にある日本の長時間労働をどうなくすのか、改めて考える。
◆キーワード
<「残業代ゼロ」の働き方> 年収1千万円以上の専門的なホワイトカラーを対象に、残業代の割り増し規制を外す新しい制度。安倍政権が成長戦略の一環として導入を決めた。厚生労働省の審議会で、年末にかけて詳しい制度設計を議論している。
一日、15時間、働いて、働いて、もう慣れちゃって、平気って方が、基準になったら、
婆なんか、ぶっ倒れて、失業しちゃうね。
でも、この世に、1000万以上の年収のある方って、どっかに、県別人数出ているかしら?
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