自殺未遂者、データを蓄積 救急搬送先で症例登録 傾向分析し予防策強化
厚生労働省は自殺予防対策強化のため、自殺未遂で救急搬送された患者の年齢や経済状況などを匿名でデータベース化する「自殺未遂者レジストリ(症例登録)制度」の構築に本年度から取り組む。蓄積した情報から傾向などを分析して対策に反映させ、自殺リスクがある人の精神的ケアや生活支援の効果を高めていく狙いがある。
厚労省によると、世界保健機関(WHO)は自殺未遂者の実態把握に努めるよう各国に求めており、同制度は既にアイルランドやコスタリカのほか、ベルギーの一部などで導入済み。日本での制度内容は、国の調査研究などを担う「いのち支える自殺対策推進センター」が検討している。
昨年9月から今年3月までは全国約10カ所の救命救急センターで、制度運用の課題を調べる予備研究を実施。救急搬送された自殺未遂者に対し、医療スタッフが職業や居住地、自殺未遂の手段などを聞き取ったほか、退院時にどんな福祉サービスを手当てしたか、といった情報を集めた。
研究責任者で帝京大病院(東京)の高度救命救急センター長の三宅康史(みやけ・やすふみ)教授は、自殺未遂者は再び自殺を図るケースが多く蓄積データを防止に生かす必要があると説明。「現場の医療スタッフが患者を適切な支援機関につなぐケアができるよう、意識向上にも役立てたい」と話す。
警察庁の統計では、2021年の自殺者数は2万1007人に上り、新型コロナウイルス流行前と比べ高止まりとなっている。厚労省担当者は「将来的には全国の救命救急センターに制度を導入したい」と話している。
※政府の自殺予防対策
2006年施行の自殺対策基本法に基づき、翌07年に初めて国の指針となる自殺総合対策大綱を策定した。おおむね5年ごとに見直し、今夏に閣議決定される新たな大綱には新型コロナウイルスの影響を踏まえた生活支援の拡充や、子どもや女性への対策推進などを明記する方針。悩みの背景にある孤独・孤立対策にも力を入れ、21年末に初めて決定した重点計画には、地域での見守りのほか、交流サイト(SNS)や電話による24時間相談対応などを盛り込んだ。
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