「けいぶほさんへ」性犯罪被害の女児、容疑者逮捕に感謝の手紙
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記者の質問に答える博多署刑事1課の山田英津子警部補=福岡市博多区で2022年2月18日、平川義之撮影
「つかまえて(くれて)ありがとうござえ(い)ました」。当時7歳だった女児から贈られた手紙を、博多署刑事1課強行犯係長の山田英津子警部補(58)は大切に保管している。女児は、福岡市博多区で起きた強制わいせつ事件の被害者だった。性犯罪は捜査協力への負担を懸念し、泣き寝入りする例が多いとされるが、女児は山田警部補を信頼し被害を打ち明け、容疑者の逮捕につながった。 「変なおっちゃんがおって嫌やったね」。2021年11月、博多署の取調室。女児が担当刑事から聴取を受ける間、山田警部補はやさしく声を掛けた。「のどは渇いていないかな?」「トイレは大丈夫?」。緊張を和らげるように気を配り続けた。 女児は数時間前、公園で遊んでいたところ、見知らぬ男性から体を突然触られた。周りには他の子供や保護者もいて、発生直後に110番が入った。 無線を聞いた山田警部補は、捜査員に「現場で(捜査に対する)両親の許可を得てください」と指示した。性犯罪の捜査では被害者の記憶が鮮明なうちに証言を得ることが重要だ。だが被害者が子供の場合、保護者が心配し取り乱すようなケースもあるからだ。 初動から女児と両親の信頼を得た山田警部補の捜査チームは、被害証言や防犯カメラ映像を基に地道な裏付け捜査を展開。事件から約1週間後、強制わいせつ容疑で無職男性の逮捕にこぎ着けた。 逮捕後の同年12月、女児は母親と博多署で山田警部補に手紙を贈った。「やまだけいぶほさんへ。だいすき」「かわいいね。しせい(姿勢)がじょうずだねってゆってくれてありがとう」。手紙の裏には、山田警部補の似顔絵も描かれていた。 20年以上の刑事経験の大半を性犯罪捜査に費やしてきた山田警部補だが「被害者からの手紙は初めて」だという。過去には被害を親告したのに、聴取の調整に時間がかかり、耐えかねて告訴を取り下げた被害者もいた。取り下げ書類のミミズがはったような崩れた字が痛々しく、今も頭から離れない。 自身が受けた性被害を警察に説明することは「治りかけたかさぶたをはがすようなもの」と山田警部補は表現する。性暴力について尋ねたアンケートでは、警察に相談した被害者は1割未満との結果もある。今回の事件では、女児の両親にも「子供の気持ちを第一に考えて寄り添ってくれた」と山田警部補は深く感謝する。その上で「あの子はきっと前を向ける。大丈夫」と願うように続けた。 博多署管内には西日本有数の歓楽街・中洲があり、性犯罪の認知件数は県内で最も多い。「容疑者を検挙することが、被害者の心の平穏につながる」。女児の手紙が改めて教えてくれ、山田警部補は今後も被害者に寄り添う捜査を続けることを誓った。【佐藤緑平】
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