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ご近所のお医者さん:/493 肺炎は老人の友=櫃田豊さん /鳥取

2018年07月26日 12時41分40秒 | 地域
ご近所のお医者さん:/493 肺炎は老人の友=櫃田豊さん /鳥取
2018年7月24日 (火)配信毎日新聞社

 ◇博愛病院(米子市) 櫃田(ひつだ)豊さん
 「肺炎は老人の友」とは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した偉大な臨床家ウィリアム・オスラー先生の言葉です。肺炎は免疫力が低下した高齢者に多発し、それ程大きな苦痛なしに死へと導いてくれるという意味を含んでいます。当時から100年以上たった今、この言葉はより現実味を増しています。
 近年、肺炎死亡率が急激に上昇していることは周知の事実です。平成23(2011)年には人口10万人・年当たり100人にまで達し、死亡率のランキングでは脳血管疾患を抜いて3位に躍り出ました。肺炎で亡くなる方の90%以上が65歳以上の高齢者であるという現状からみて、この肺炎死亡率の急激な上昇は高齢化の進行によるということは間違いありません。
 高齢化に加え、医療の進歩、医療福祉制度の変化などを背景に、最近「医療・介護関連肺炎」という概念が登場しました。(1)療養病床あるいは介護施設に入所している人(2)90日以内に病院を退院した人(3)介護を必要とする高齢者、身障者(4)通院して継続的に血管内治療(透析、化学療法など)を受けている人――に生じた肺炎と定義されます。要するに、元々抵抗力が弱く、誤嚥(ごえん)を来しやすかったり、耐性菌を保有している可能性が高かったりする人に起こった肺炎ということです。
 博愛病院には多くの患者さんが肺炎で入院されますが、その大部分は医療・介護関連肺炎に分類されます。医療・介護関連肺炎は市中肺炎、院内肺炎のように重症度を基本に治療するという訳にはいきません。というのは、医療・介護関連肺炎にはさまざまな疾患の末期に起こる肺炎が数多く含まれているからです。このような肺炎を重症度に従って積極的に治療したとしても、患者さんにとっては苦痛でしかない場合もあり得るのです。
 今年3月、厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスのガイドライン」の改訂版を公表し、人生の最終段階における医療のあり方について新たな提言を行っています。その中で、本人と家族等や医療・ケアチームが人生の最終段階の医療・ケアについて事前に繰り返し話し合うプロセス(アドバンス・ケア・プランニング)の重要性を指摘しています。肺炎についても、治療しない選択肢を含め、患者、家族、医療関係者で治療方針を決定しなければならない時代になっているのです。

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